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神様の作り方  作者: 水宮
第3章・侵略国家に黒い仔猫は砂をかけたい
33/63

4・Sランクで驚かれても神ですから




跳びながら空中で叫んだら少しだけ気持ちが晴れた。着地してまたジャンプした瞬間、あたしの名を呼ぶ声が聞こえた。


下を見ると、驚きながら見上げている大勢の群衆の中に1人の騎士の姿が見える。

エドウィンさんだ。


着地するとすぐに彼のいる所まで走り寄る。


「エドウィンさん。何ですか?」



「セリカ様、捜しておりました。今、憲兵達が貴女にそっくりな人物を捜索しています。とりあえず、私とご同行願えませんか?」



分かっているけれども一応確認してみる。


「あたしとそっくりな人物?その人はどうして憲兵に追われているのですか?」



「2人の兵士に暴行を加えた容疑です。兵士2人は命に別状はありませんが酷い全身打撲でしばらく動けないほどの大怪我だそうです」



あー。やっぱり、追われているのはあたしだ。



「2人の兵士に大怪我を負わせた者の容姿は通報によると、ネコ科獣人の若くて美しい女性で全身を覆うほどにふくらんだ金色の長い髪に肌は褐色。服装は高貴な身分の人が着るような純白のドレスを身に纏っていたそうです」



「あはは。それはあたしにそっくりですね」



「セリカ様。心当たりは?」



エドウィンさん。貴方、100%あたしだと思って聞いているよね?

一応、抵抗してみよう。


「ないです」




「セリカ様」


あたしの名を呼ぶエドウィンさんの声と表情に圧力がかかった。

ちょっと怖い。



「もう。初めからあたしだって分かっていたくせに意地悪です」



「セリカ様ほどの方にもしも人違いで濡れ衣を着せたとなれば、後で問題になってしまうかもしれませんので。念のためでした」



「それでエドウィンさんはあたしを捕まえるために捜していたんですか」



「いえ、違います。貴女を保護するためです」



「え、あたしを保護?」



「はい。サウス・セリアンスロープ大統領の御令嬢に無礼を働きかねない連中から守るためです」



「それって、どういう事ですか?ちょっと状況が分からないです」



「とりあえず、歩きながら説明します。貴女は普通にしていても目立つのに、とんでもない跳躍をしながら街中を進んでおられましたから。すぐにも憲兵隊に知れるでしょう」



エドウィンさんに連れられてあたしは警備部隊本部のある4階建ての大きな建物の中に匿われた。エドウィンさんの話によると、この街の憲兵隊は尊大で横暴らしい。


上官の命令以外は何でも自分の思い通りになると思っているような困った人達の集団らしいのだ。それならば憲兵隊よりも偉い人がしっかり管理すればいいだけじゃんと思ったら、そうもいかないらしい。


ノルドール総督府の最高責任者・フィリップ将軍はその地位に見合うだけの実力と見識を備えた優れた人物らしいのだけれども、ここにはバルト帝国の国教であり政にも多大な影響力を持つ創造神デミウルゴス教の司教・スタンリーがいた。そして、憲兵隊はスタンリー司教の子飼いのような扱いらしい。


スタンリー司教は創造神デミウルゴス教以外の宗教を邪教、あるいは創造神デミウルゴス教の下位にある下賤の宗教と決めつけている。そして、創造神デミウルゴス教を敬わない無神論者や他宗教の者は神をも恐れぬ罪人、愚か者であると公言しているそうだ。


そうした宗教観や価値観は個人の中だけの問題なら好きにすれば良いと思う。けれども、この人はその考えを周囲に布教と称して強硬に押し付け、その考えに従わない者を矯正と称して拷問にかけるみたいだ。


創造神デミウルゴス教の信者以外は人にあらず。

これはスタンリー司教に限った事ではなく、創造神デミウルゴス教すべての布教者、信者達に多く見受けられる共通した考えだそうだ。



神なんて信じようと信じまいと個人の自由でしょ。

それを押し付けてくる程度なら、うざいけれどもまだ許せる。でもスタンリー司教はそれを口実にして、市民から財産を没収したり虐めや拷問をしていた。


神が本当にいるとして、こんな事をする信者を許している神って、どうなの?

これって本当に敬うような神様なの?


まあ、あたしの元居た世界にもたくさんいたけれども。神の名のもとにやりたい放題している人達。そんな事を自分の信者がしていると知ったら本当の神様なら嘆き悲しむんじゃないのかな。


もしも残虐な行為をする自分の信者達を見て神が喜ぶのなら、それは神じゃなくて本当は悪魔なんじゃないの?





「あたしを保護してくれてありがとうございます。でも、あたしなんかよりも心配な人達がいるんです」


来賓用の広い部屋に案内してくれたエドウィンさんに訴えると、エドウィンさんは少し考えてから答えてくれた。



「その2人の兵士に襲われたというエルフの少女は憲兵の捜索対象にはなっていません。ですが、セリカ様の居所がつかめないとなれば、そちらにも手が回るかもしれませんね。分かりました。今すぐその少女と両親の身柄も私が保護しましょう」



「お願いします。あ、でも隠れているかもしれないからエドウィンさんが見つけ出せないかも。ちょっと待ってください。今、捜しだしますから」


そう言ってあたしは千里眼を発動した。


見つけた。まだ隠れていない。

セルマのパパがまだ仕事から帰ってきていないみたい。


「まだ隠れていません。父親がまだ帰ってきていないからでしょう」



あたしがそう言うと、エドウィンさんは驚いた表情であたしを見ていた。



「どうしました?」



「セリカ様。それは特異技能スキルの千里眼ですよね?」



「はい。そうですけれども何か?」



「千里眼は特異技能スキルの中でも上位の特異技能スキルですが、それでもその見え方は凄いですね。それだとこの街全体が全て筒抜けではありませんか。


確かセリカ様の千里眼のレベルは3でしたよね?千里眼とはレベル3で既にそこまでの力を発揮するものなのですか?」




しまった。

つい油断して普通に千里眼を使っちゃった。




「それにセリカ様が街中で跳躍されていた時ですが、あれは一瞬で50~70mくらい上空まで跳んでいましたよね。一回の跳躍で300m以上先まで進んでいましたし。


あれはどう見てもレベル8の跳躍ではありませんよ。15前後のレベルがないとあれほどの跳躍力は出せないはずですが?」




あう。

嫌な汗が出てきました。

これはステータス偽造をエドウィンさんに疑われている。




「セリカ様は分かりやすい人ですね」



「え?」



「お顔を見て、すぐに分かりました。考えている事が表情に現れているので手に取るように分かります」


そう言ってエドウィンさんが微笑した。




駄目だ。

動揺してしまうと、あたしは顔に出てしまう。


「ごめんなさい。あたしは自分のステータスが異常だから本当のステータスを見られたら、驚かれて騒ぎになると思って」




「驚いて騒ぎになるほどですか。セリカ様は獅子王の御令嬢でしたよね。獅子王は英雄級。冒険者のAランク相当の実力です。という事はまさかセリカ様も英雄級?!」




「いえ、違います」




「違うのですか。では準英雄級。冒険者のBランク相当ですか?まあ、そのくらいあると確かに脅威ではありますが騒ぎになるほどの事ではありませんよ」




「いえ、そうではなくてですね。あたしの身体能力は英雄級を軽く超えています。冒険者でいえばSランク相当です」




「Sランク?!Sランクですか?!本当にSランクなのですか?!」




「3回も言わなくてもSランクです」




「ちょっ、ちょっと待ってください!Sランクといったらあの竜王でさえも一撃で倒してしまうと言われているくらいとんでもない強さなのですよ!


その蹴りは大陸全土を揺るがし、その拳は大海を割ると言い伝えられているSランク?40万の軍勢を瞬殺したという伝説まで残るあのSランク?!」




「ほら。そうやって驚かれるから隠したんです」




「信じられませんが、それならば隠す事に意味は見出せますが。いや、しかし信じられない!」




正直に話さないとかえってボロを出すと思って本当の事を教えたけれども、エドウィンさんのこの驚きぶりだとあたしが神だという事まで明かしたら卒倒しそう。


今は神である事は話さない方がいいよね?


だって神だから基礎レベルがたったの2なのに体力、速さ、力の三大身体能力の全てが1万を超えているし。これって、あたしがレベル10くらいになったら多分、身体能力は4万を超えるよ。


Sランクどころの話じゃなくなるんだけれども。




「セリカ様の話が本当かはひとまず置いておくとして。一体どうやってご自分のステータスを誤魔化したのですか?」




本当の事を言ったのにエドウィンさんに疑われた。

ちょっと切なくなったけれども、いきなりそれどころじゃなくなった。

誤魔化した方法を話すという事は神力の事まで言わなきゃいけないじゃん。


鑑定装置に心を持たせるなんて神でもなくちゃできない力だよ。


もう本当の事を話したついでなので、鑑定装置に心を持たせて、あたしのステータスを改変して表示するように頼んだと正直に答えた。エドウィンさんは自分の耳を疑って何度もあたしに聞き返してきた。もう、Sランクとかそういう次元の話じゃないからね。



何度確認してもあたしが同じ答えしか言わないので、さすがに聞き間違いではないと理解したエドウィンさんは頭を押さえながら小さな声で呟いていた。



「あり得ない。物に命を与える事ができるなんて。それはもう・・・・・・」





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