第三話
十三日振りの更新です。
10月になりました。
山や森も色付き目の保養となる季節です。
なのに荷車いっぱいの荷物を一人で運んでるこの状況は辛い。
景色を楽しむ余裕があまり無い。
何故こうなってるかと言いますと。
あれから良く何かしらゴブリンに食べ物を持って行っていると、先日少しだけ人間の言葉を話せるやや大きいゴブリンが一緒に付いて来ていた。
「ニンゲン クイモノ ウマカッタ。クスリ ヤル。ヤマイ オオイ。ナッタラ ノメ。」
要するに俺の持って行った食べ物が美味しかったから薬をくれると。
病多いってことは、今年は何か流行病が来ると言う事なのか。
まあ貰えるものは貰っておこう。
そんな感じでく薬を貰ったわけだが、一向に病気になんてならない。
ならないならそれで良いじゃないかと思ってたんだ。
そしてら今朝起きると妙に体が重い痛い熱も凄い、これがゴブリンの言ってた病かと。
そして直ぐ様貰った薬を飲んで一日中寝転がった。
夕方くらいに痛みや気怠さが落ち着いてくると、その日一日中そんな調子だったからそのまま寝てしまった様で気が付いたら朝だった訳だ。
一日で治るとか素晴らしく良く効く薬だなと思い、いつも通り町に出ると妙に町中が静かだった。
殆どの店が開いておらず可怪しいと思い、冒険者ギルドを覗きに行くと、いつもの受付のお姉さんが居ない代わりに今にも倒れそうな顔色で椅子に座っていた。
「ルーゲルスさん、顔色が凄く悪いですけど大丈夫ですか。」
ルーゲルスさんと言うのは、ギルド支部長の名だ。
「お前・・・何で大丈夫なんだ。町中疫病か流行病か分からんが、皆こんな感じだぞ。」
実はですね・・・・とゴブリンに貰った薬の事それを飲んだら治った事を話すと、お願いだからゴブリン達に頼んで薬を貰ってきてくれと言う。
「きっとゴブリン達は無償では、何もしてくれないと思いますよ。美味しいもの持っていけばどうか分かりませんが。」
ならギルドの倉庫に貯めこんである干し肉や日持ちする美味い物あるから、荷車ごと持って行って分けて貰えと言う。
そうしてルーゲルスさんに肩を貸しながら、倉庫を開けてもらい、裏にあった荷車を表に持ってくると結局全部自分でする羽目になった。
「ルーゲルスさん、これ報酬でるんですよね。」
そんな事言ってる場合じゃないだろと言われたが、一応それなりの金額出すから頼むと言われた。
そして俺はと言うと坂道で、唸りながら荷車を引いていると言うわけだ。
そろそろ以前薬を貰った辺りだなと思っていると、予想通りゴブリンが出て来た。
そして来るのが分かってたかの様に、やや大きいゴブリンも一緒に居た。
「前の薬助かりました、ありがとう。」
そう言うとやや大きいゴブリンは、薬足りないだろう。
俺が薬貰いに来るのは分かってたと言う。
「ニンゲン クイモノ タクサン モッテクル ワカッテタ。クスリ ヨウイ デキテル。」
どうやらこの時期、人間が山に入りゴブリンが良く襲われるそうだ。
そして薬を渡す代わりに今後ゴブリン族を見掛けても、攻撃をしないで欲しいと言った。
「オレタチ ニンゲン カテナイ、ニゲテモ コロサレル。ヤクソク タノム。」
見掛けただけでゴブリンを倒す奴が多いということだな。
「ヤマイ シバラク シナナイ。ヤクソク タノム。」
この病は直ぐには死なないらしく、恐らく約束できる人を連れて来いと言うのだな。
「この食べ物は持って行ってくれ、荷車は明日取りに来る。薬を一人分だけ貰っていいか、約束できそうな人を連れてくる。」
「ワカッタ コレ ノマセロ。」
そういって一回分の薬を貰った。
「明日また来るから待っててくれないか。」
「ワカッタ。」
そう言って俺は急いで町に戻り、ルーゲルスさんの所へ行った。
「ルーゲルスさん、取り敢えずこの薬を飲んで下さい。」
「一つしか無いのか・・・。」
「ゴブリン族は攻撃しないで欲しいと交渉したい様です。守るなら薬をちゃんと用意してるから渡すと言ってました。ただの町人の俺じゃ権限とかそんな物ないから、約束できそうな人を明日連れて行くと言ったので。」
「俺も明日そこへ行けということだな。」
「そうですよ。だから少しで早くこれを飲んで、明日動ける様になって下さい。」
「お前ゴブリンと親しかったんだな。」
と軽く笑いながら薬を飲んで横にさせ、結局俺が看病する羽目になった。
翌日ルーゲルスさんは完調とは行かないものの、ある程度動ける様になっていた。
「歩いて行くのはきついから馬車を使うぞ。場所とか分からんから任せる。」
「俺・・・馬車動かしたこと無いんで分かりません。」
マジかよと言いつつルーゲルスさんが御者台に座った。
そうして俺とルーゲルスさんは、ゴブリン達が待つ場所へ向かった。
「そろそろこの辺りです。」
そう言っているとやや大きいゴブリンが、馬車に警戒しながら出て来た。
「この人はルーゲルスさんと言って、町の冒険ギルドの支部長さんです。冒険者に関しては町長より権限が有ると思いますよ。」
そう言うといつもの片言に言葉でルーゲルスさんに、どうして欲しいかという要望を伝えていた。
ルーゲルスさんもこのままだと町が全滅するかもしれないと言い、約束するしなんなら定期的に食べ物を持って行っても良いとまで言っていた。
お互いに色々と取り決めをした様で、大量の薬をゴブリン達が馬車の前に置いていった。
そして俺はと言うとやや大きいゴブリンに
「ニンゲン オマエノ オカゲ ウレシイ。コレ ヤル。」
と、言われなんかの指輪を貰った。
「これ何ですか。」
「コレ ゴブリン コトバ ワカル。」
どうやらゴブリンの言葉が分かる様になる、術の掛かった指輪らしい。
「いい物をありがとう。」
「オマエ オンジン。」
そしてルーゲルスさんも同じようなことを言っていた。
「ゴブリン族はヌメシアを助けてくれた。あなた方は我らの恩人だ。そして俺達を引き合わせてくれたお前は町の救世主だ。」
やや大きいゴブリンは、この辺り一帯のゴブリン族を纏めている族長だった。
ルーゲルスさんとゴブリン族族長は簡単な取り決めをした。
町の者はゴブリンを襲わない。
町に来た冒険者にも伝えて襲わせない。
この辺りのゴブリンとホブゴブリンは人間を襲わない。
どちらかが攻撃してこようとした時だけ、お互い攻撃をすると言う事。
今後はヌメシアとゴブリンの村とで交流を持たせる。
それに伴いゴブリン側でも少しずつ人間の言葉を教える。
その後人間側にゴブリンの言葉を教えるものを派遣する。
と、言う内容だった。
そしてお礼を何度も言い、ルーゲルスさんと俺ヌメシアに帰っていった。
帰る道すがらルーゲルスさんは俺に金貨5枚の報酬を約束すると言った。
これだけの事をしたのに、安いかも知れんがそれで勘弁してくれと。
しかし俺の中ではそんなに貰えるなんて思ってなかった。
金貨5枚と言えば銀貨5,000枚となる。
念願の一軒家買ってもお釣りがくる。
そうして数日後には街を救った者として知れ渡るようになり、ゴブリン族に対しても街全体で守ると言う感じになった。
そして俺はというと、予定より少し良い場所の良い家を銀貨4,000枚で購入した。