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第2話 謎の荷物の贈り主は

 放課後の生徒玄関には、帰宅を急ぐ生徒、部活へ向かう生徒、会話を楽しむ生徒と1日の授業に解放された生徒で溢れている。

 大和はも家へ帰る為に、上履きから黒のスニーカーに履き替える。このスニーカーは、かつて千尋が履いていたスニーカーで、今は大和が大切に履いている。大和は千尋と足のサイズがあまり変わらないので、大和自身は履けてラッキーだと思っている。

「なーるーみー君!」

 子供の様な明るい声。

 後ろを振り返るとクラスメイトの九条虎徹だった。端正ながら子供のあどけなさが残るその顔は、男子にも女子にも見える。それどころか、高校生というよりも小学生の方が彼にはお似合いだ。

 常に猫耳を型どった黒の帽子を被っているが、今まで教師たちに一度も怒られていないのが大和の九条に対する一番の疑問である。

「また一人で帰っちゃうのー?ボクがいるのに寂しいなー」

「……」

 大和は九条の事を鬱陶しく思っていた。九条の発言には自分のペースを乱される。九条とは、中学の同級生でなければ幼い頃からの友人でもない。なのに九条は、大和に馴れ馴れしく接してくる。

「ねえねえ、一緒に帰ろうよ。あれ、新谷君はー?」

「……じゃあな」

 九条を突き放す様に別れを告げ、大和は生徒玄関を出た。




「おかえりなさい、大和」

 リビングのソファで音楽雑誌『ロックオンマガジン』を読みながら、母親の麻美がくつろいでいる。

「うん。……あ、また人の部屋から雑誌持ち出しやがって!」

「いいじゃない、別に。それより、煎餅あるから食べなさい」

「……」

 麻美は、テーブルに置いてあった器を大和に差し出す。大和の大好きなミカミ本舗の醤油煎餅が、隙間なく敷き詰められている。

「早見さん、何時に来るって?」

「それが、まだ連絡が無いから何時に来るか分からないの」

 早見は、大和の家に連絡を入れから、家にやって来る。今まで、早見が連絡を怠った事は一度も無かった。

「連絡はまだ無いけど、荷物なら来てるわよ」

「荷物?」

「そう。ロクマガ借りるついでに、大和の部屋に置いておいたから」

「誰からの荷物だよ」

「……」

 大和の何気ない問に、麻美は突然黙る。ロクマガのページをめくる手が止まり、無気力にそのページをじっと見つめる。


 階段を駆け上がり、廊下を直進する。大和の部屋は2階の一番奥の6畳の部屋。

 扉を開け、部屋に入る。部屋の壁には、大好きなバンドのポスターが飾られている。

 目の前にある学習机の上に、両腕で抱えられるくらいのダンボール箱が置いてある。

 ダンボール箱に貼り付けられた伝票には、大和の名前、家の住所は書いてあるが、送り主の住所や品物の名前は書いていない。

 しかし、1カ所にだけ、それは書いてあった。

「…………マジかよ」




『鳴海千尋』




 宛名の欄に、兄の名前が書いてあった。予想もしない名前に、大和の顔は凍りつく。

 大和は、ダンボール箱のフタを閉めていたガムテープをゆっくり剥がしていく。そして、静かにフタを開けた。



 






 

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