二十四話
不愉快な床の揺れでツヴァイは、目をさました。
いつもの癖で頭をかこうと手を伸ばし、毛の先端が傷を撫でた痛みで顔をしかめる。
「……ひるかぁ。」
窓の外は明るい。
枕元に置いておいた手袋を両手にはめて、ベットから立ち上がる。
じんわりと、熱を帯びた痛みが下からせり上がってくるがまぁ、我慢できない程ではない。
それよりも、床下が煩い。
玄関のほうか?
木の扉を開くと言い争うような声が聞こえる。
「だから!!この地図はただの偽物だといってるでしょう?!どこですか、日本って!!
嘘の経歴を言うならもう少し練るくらい、してきなさい!」
「嘘じゃないっていってんだろ!!
これは、あいうえお表でこっちは世界地図、空白だらけだけどこれ、周期表!原子記号とか名前ぐらいしってんだろ!」
「げんしきごう?何ですかそれ……。」
……ベットに帰りたい気持ちをぐっと、飲み込んで階段を降りていく。
木が軋む音で気づいたのか、アルマがこちらを見てつられて少年もこちらを見る。
アルマの顔が、赤い。
……あんだけ怒鳴れば呼吸もきつくなるか。
「師匠!」
「…………フレディーさんがいってた?てか、それよりあんたこの地図って!」
「仮にも、仮にも年上に向かってあんたって、なんですか!!」
個人的には仮を二回繰り返されたことの方がぐさっと、来る。
「この地図ってどこで?!いやもしかしてあんたは転生者なのか?!」
「……少し落ち着け。
今、茶をいれっから…アルマもあんま警戒してやんな。」
へらりっと、笑えばアルマが物言いたげにこちらを睨み付ける。
それにしても、懐かしい名前を聞いたなぁ。
キッチンに向かえば後ろからついてくる気配が二つ。
さて、あの茶葉まだ湿気てないといいけど。