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十八話


キンッと


金属同士がぶつかったような澄んだ音が霧に響く。


痛みは無い。

なら、成功した…はず。


何せ使うのが久々すぎて、霧のせいか上手く風が読めない。

不可視の盾に守られることほど怖いことは無いです。

視野の確保の点で有益なのは分かりますが……。


考えている間に彼が再度腕を振ります。

再び、響く金属音。


彼が腕を振ると、一瞬彼の周りの霧が薄くなる気がします。

不可視の攻撃の正体が風ならすぐに分かったはずですし。

………さすがにそこまで鈍ってないと思いたいです、


そういえば、私を捕まえた人は水の名を持っていましたか。


「導き手の名において」

ふわりと、懐かしい淡い翠の燐光が私を包みます。

燐光からわずかに聞こえる鈴の音に耳を傾けながら、言葉を紡ぎます。


「神の息吹を請いましょう 惑いし子に 救済を。」

力を請えば。

僅かなズレも置かずに、指向性を持たない突風が狭い通路の中で乱反射しながら吹き荒れます。

舞う砂埃に目を細めながら、彼を見据えまると彼の腕がまた振るわれるのが見えました。



金属音は


ない。




戸惑うように固まる彼に、風の間を縫って進みます。

あわてて距離をとろうにも、吹き荒れる風が邪魔をして思うように動けない様子で。


最後に


背中を押した風に乗って飛ぶように前へ。




すれ違うようにメスを奪い取り、そのまま距離をとってから振り返り立ち止まります。

風は役割を終え、掻き乱されていた霧が落ち着きを取り戻します。


彼はぼんやりと空の手を見つめ。

空ろな目をこちらに向けました。


追いかけてくることもさっきをぶつけてくる様子も無い

その姿は霧に溶け込むように存在感が無く。

幽鬼のようで。




なにはともあれ、これで不可視の攻撃手段は奪いました。

後は、師匠が来るまで逃げ続ければ終わりです。

……結構走ったので距離はありそうですが、一本道ですし問題は無いですよね。


そう、思いながらほっと息を吐いてしまい。

油断しないようにっと四肢に再び力をはると。






唐突に、視界に赤が花びらのように散りました。

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