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十六話

「あぁ……いっちまったかぁ。」

ツヴァイは霧に飲まれていったアルマの背中から視線をそらす。

革靴にしみこもうとする血溜りを踏みつけ、隊長だったものに近づいていく。


「多少大人びててもまだまだ子供だよなぁ……箱入りっぽいし、気をつけないと。」

死体を軽く足で転がし、仰向けになるように姿勢をかえる。

血走った目が開かれ表情は苦渋に歪んだ状態で固まったその死体。


「…………ここは、夢だと言っただろうに。

 夢のすべてが現実で、夢のすべてが幻なわけがないだろう?」

そのまま、視線を足へと逸らせば血溜りが消えていた。

目の前にあったはずの死体も

壁に飛び散っていた血液も

まるで、世界が切り替わるように。


「多重に重なった一つの世界。一言で言うならレイヤーとでも言えばいいのかぁ?なんか違うけど。

 他人の頭に無い概念を説明するのは俺の説明力じゃむりだっつぅの。」



「なぁ。」


死体と血が消えたかわりに現れた人影達を振り返る。

ツヴァイに見えているとは思わなかったのか、短いナイフを持ってすぐ背後まで迫っていた男がびくりっと震える。



「そう思わないかぁ?」


視線と視線を合わせ、ツヴァイがへらりと笑う。

男の眼はしきりに視線を彷徨わせて、動揺が隠せない。

声にならない息を短く吐くと、そのまま圧力に負けるように二、三歩後ろに下がった。


「その服は教会のだったよなぁ……ちょうどいいや、そこの女の分引っぺがすか?」

ツヴァイが視線を後ろに控えている女の一人に向ける。

震えながらも両手に持った箒を手放さない。


「…悪魔め。」

怯えから、涙眼になりながらも搾り出すように女性が呟く。




「……ん?今のところ見かけはまだ人間……って、おい。」

女性の視線が微妙にずれている。

視線の先はツヴァイから伸びる影。

ヤギと蝙蝠と蛇を足したようなそのシルエットは確かに悪魔そのもので。


「……やっぱ、俺にゃ迫力足らんか?」

「この程度の演出でもしない限りは、斬りかかられていたと思いますよ?」

ツヴァイが影へと話しかければ、影がわずかに波打ち水紋を描くたび声が反響して聞こえる。


「何でついてきたし。てか、縄は?」

「抜けましたよ。十分ほどかかったので上々ではないでしょうか?」

「…自信作だったんだけどなぁ。」

今一、締らないのは良い所取りするこいつのせいじゃないかと思いながら。

視線を教会の人間へ向ける。

三人か。


「さくさく畳んでアルマ追うぞ。怪我させんなよ。」

「無茶なこと言わないでくださいよ。人間は軟くて軟くて手加減大変なんですから。」

「人間の腹から生まれたくせに何言ってんだ。」


ほら、ちんたら話してるから立て直されてるし。

あぁー…………めんどくさい。

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