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十話

出された食後の紅茶を一口含む。

ダージリンの香りが口に広がるのを楽しんでから飲み込む。


私が一息ついたのを確認してから、師匠が口を開いた。


「で、体調は大丈夫かぁ?」

「問題はないです。……長い間寝ていたようなので、体力は落ちているかもですが。」

「その辺はなぁ…まぁ、月単位じゃ無いんだし緊急事態に巻き込まれなきゃ問題ないだろ。……たぶん。」

あの同色持ちの貴族が居る以上、師匠があの牢屋でのことを知らないはずがない。

少なくとも、私が捕まったことは知っているはず。


だけど、師匠の間延びした声もやる気のない目も最初にあった頃と全く変わらず。

それが不思議で少しだけ不気味だ。

気味の悪さが不信感に繋がり、師匠もあの貴族とぐるで私を犯人に仕立てあげようとしているのかもしれない。


けれど私は、さっきの言葉が嘘でないと思いたい。

だから――――。


「……師匠。」

「なんだぁ?」

「説明、してもらっても良いですか?」

「どっから、どこまでをだぁ?」

師匠の眠たげな…けれどどこか澄んだ目が私を射抜く。


「なぁ、アルマ。

この件でお前は殆ど巻き込まれた不幸な一般人だぞ?

実行犯は、まだわかんないけど誘き出すのは簡単だし。

黒幕にも心当たりがあるし、俺一人で解決できる。

まぁ、ほっといてももう犠牲者は出なさそうだけどな。

だから、全部忘れて普通に薬師の修行やんないか?」

「……ねぇ、師匠。それは、師匠の優しさですか?」

「俺が説明めんどくさいってのもある。」

そういって、師匠は欠伸を噛み殺す。

確かに目を反らして、聞こえなかったことにして普通に薬師の修行をするのも良いのかもしれない。


私の過去が、それによって形作られた今の私が

それを許すはずはないのだけど。


「師匠、全部教えてください。

何故、私は部屋で眠ったのに牢屋にいたのでしょうか?

何故、悪魔付きと呼ばれたのでしょうか。

牢屋で飲まされた薬は何だったのか。

どうして、私は牢屋ではなくここにいるのか。

あの貴族は、私に何をしたのでしょうか?

そもそも、貴族と師匠の関係は?

それと…それらの疑問に必ずと言って良いほど付きまとう、あるはずのない林檎の香りについて。」

「……本当に聞くのかぁ?

割りと世界が二三転する程度にビックリすると思うぞ?」

「構いません。」

「若いねぇ、若さゆえの柔軟性か。

それとも若さゆえの無謀か。

まぁ、知りたいなら教えるさ。」



何せ俺はお師匠様だからなぁ。

と、彼はどこか嬉しそうに悲しそうに笑った。

誤字脱字などございましたらお知らせいただければ幸いです

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