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プロローグ

その医師は苛立っていた。


今日は、とても忙しい日だった。

朝早くに子供の熱で叩き起こされ、それからも喉の痛みを訴える大人達が医師の家の前に列を作った。

儲かったと言えば、儲かったが。

そんなことがどうでもよくなる程度に医者は疲れていた。


また、多くの患者に処方したせいで、解熱剤と咳止めの薬がなくなり深夜にも関わらず町外れの魔女の家に薬を取りに来なければならなくなった。

疲れているのに。


一刻も早く帰り、酒を一杯引っかけベッドへ倒れこみたい。

疲労感に満ちた脳は迷惑など一切気にせず、乱暴に今にも壊れそうな扉を叩く。

「おい、ばーさん。薬取りにきたぞ。

早く、開けてくれ。」

何度か呼び掛けると、扉の鍵が開く音がした。

医師はノックをやめ、扉が開くのを仁王立ちで待った。


扉が開き、中から出てきたのは医師と同じ程の背の高さの青年だった。

青い目を気だるけに細めて、青年は医師を一瞥する。

医師が疑問を青年にぶつける前に青年が口を開く。


「魔女は死んだ。」

「……しん、だ?そうか、とうとう死んだか。…お前が代わりの魔女か?」

「違う。この町に魔女はもうこない。薬はあるだけ渡す、帰れ。」

「ま…まて、魔女が来ないとはどういうことだ?

契約は…どうなった………。」

「町長の娘に理由は聞くが良い、これが薬だ。」

青年が医者へバスケットを押し付ける。

医者が受け取りもせず唖然としていると青年は医者の足元にバスケットを置いた。


そしてそのまま、家に入り後ろ手で扉を閉めようとする青年に漸く自分を取り戻した医師が食い下がった。


「ま、まて。魔女でないなら、お前はなんなんだ?」

青年は動きを止めた。

だがそれも一瞬で、ぽつりと一言呟くと医師の目の前で扉はしまった。


「……錬金術師?」

聞いたことのない単語に再び思考が止まった医師を寒空の下に放置して。

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