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重力が無くなる3日前の午後

ある日、あと3日で重力が無くなるのです。


そんな現実を突きつけられた私の3日間。

色々考えたんだけど、いったい私はどうなるのですか?

「臨時ニュースです。本日宇宙科学省から、”あと3日程で地球の重力は無くなる”との発表がありました。」

「繰り返します。本日宇宙科学・・・。」


私は気持ちの良い秋晴れの午後に、ジャンゴ・ラインハルトのギターを聴きながら手作りのビスケットとハチミツの効いた紅茶を楽しんでいた。


仕方なく他のチャンネルに変えてみても、”あと3日程で地球の重力は無くなる”のニュースしかしていない。

あるチャンネルではどのように地球の重力が無くなるのかを、どこかの大学の教授が説明していたが、素人の私には難しい専門用語の羅列で全くと言っていいほど理解できない内容だった。

なにやら水星と金星から発生する”何か”が、地球の重力に強い影響を与えているらしい。




1日目。

私はしばらく”地球の重力が無くなる”ことについて考えてみた。

当然の事ながら、こんな事は今まで考えてもみなかったことだ。

なぜなら地球の重力は恒久的に存在するもので、消失することはまず無いと思っていたからだ。

これはおそらく一般論でもあるだろう。



それでは地球の重力が無くなったら、一体どんなことが不便になるのか。


それは、部屋中の家具が浮かんでしまい、今までとは比べ物にならない確立で足の小指を家具の角に強打するのかもしれない。

それは、部屋中のホコリが宙に舞い、今までとは比べ物にならないくらいハウスダストに悩まされるのかもしれない。

それは、食事をしようと思っても食べ物が宙を舞ってしまい、ナイフとフォークが無用の長物になってしまうのかもしれない。


そして私の想像力の乏しさに幻滅する。




2日目。

ある人達は宇宙旅客機で宇宙へ脱出し、地球に代わる新たな大地を探しに旅立った。

(これから無重力になるのに、自ら無重力に進んで行ってなんになるのか。)

ある人達は、アルプスの山頂で神に祈りを捧げていた。

(慣れない土地で無重力になってしまったら、ただただ混乱するだけだろうに。)

ある人達は柱に自らをくくりつけ、無重力から身を守ろうとした。

(それでは動けないではないか。本末転倒で全くの無駄な事だ。)

ある人達はいつも通りの生活をしていた。

(わたしの場合はこれに該当する。)


そして意外と人間の想像力は乏しいものだと実感する。






3日目。

ついに無重力になる日が来た。


それは真夜中の3時に起きた。

勿論私はベッドで眠っていた。


夢の中で私は誰かを殴ろうとしていたが、何故か思うように力が入らず夢の中の誰かの頬を拳で撫でていた。

そんな夢の中で、急に「フワリ」という感触が全身を襲った。

私は見ていた夢を諦め、少し目を開けてみる。


私の体はベッドに入ったままだが、ベッドは宙に浮いている。

これが無重力か。


しかし、



まぁ、



あれだ。



ずいぶん寝心地がいいではないか。


(おしまい)

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