第五十八話 大西洋脱出 前編
皇紀2603年8月31日
大日本帝国
帝都:東京
海軍軍令部(通称:赤レンガ) 第一会議室
士官1
「堀井中将、大西洋派遣艦隊より電文!二五二以上です!」
弘明
「分かりました、そろそろですかね、単冠湾で待機している、砕氷船に連絡してください」
士官1
「了解!」
弘明
「さて、もう一石投じますか・・・参謀本部に行きます、車の用意を」
皇紀2603年9月6日
北大西洋
北大西洋の荒れる海・・・
その荒れる海を突き進む2隻の軍艦の姿があった。
先頭を進む艦は巡洋戦艦武尊、その後方1200mに巡洋戦艦磐城がいる、この2隻は満州での戦闘を有利にするため、大西洋で通商破壊戦を行っていた。だが、大西洋に派遣された艦隊の中でも目立つこの2隻は大西洋での長期戦を行うには目立ちすぎると考えられており、軍令部の指示で北極海航路が使えるギリギリの時期に日本へ帰還することになっていた。武尊、磐城の帰還後、指揮権は磐城の北条信也海軍少将から千里の岩塚楓海軍少将に移譲されることになっていた。つまり武尊、磐城両艦の帰還後も通商破壊戦は続けられることになっていた、作戦続行が不可能と考えられた場合、現地の最高指揮官つまり岩塚楓海軍少佐が作戦終了を宣言し派遣艦、各艦が大西洋から離脱する事となっていた。この場合、洋上艦は喜望峰回りインド洋に出る航路が有力であった。潜水艦は北極海を潜航し太平洋に出る航路であった。
大西洋派遣艦隊
巡洋戦艦磐城 戦闘艦橋
水兵1
「電探室より報告!4時方向より不明機接近中、高度2000速度180ノット!敵味方識別反応なし、敵と思われる」
信哉
「どうやら簡単には逃がしてくれそうにないな、対空戦闘用意!砲術長、対空誘導弾の残弾を報告せよ」
磐城砲術長
「ッハ!対空誘導弾、残弾4発です」
信哉
「大規模空襲だと防ぎきれんな、副長、武尊はどうだ」
瑞姫
「武尊に確認します」
瑞姫が発行信号で先行艦、武尊と確認を取る。ではここで軽く巡洋戦艦武尊の性能表を記しておく
巡洋戦艦 蔵王
全長
・240m
全幅
・32m
平均喫水
・9.25m(基準排水量)
排水量
・基準:36.000t
・満載:39.000t
主機関
・ハ号改E型艦本式ディーゼルエンジン 6基
・300.000馬力 3軸推進
最大速力
・39.52ノット(主機関)
航続距離
・25ノットで22.000海里(主機関)
乗員
・士官、兵員:1200人
・航空要兵:30人
艦載機
・特殊攻撃機 晴嵐 4機
最大搭載機数 4機
武装
主砲
・九五式60口径310mm砲 3連装3基
両用砲
・OTOメララ127mm速射砲 連装 8基
魚雷
・二式61cm魚雷発射管 4連装 4基
機関砲
・高性能25mm機関砲 連装4基
・40mm対空機銃 4連装20基
機銃
・25mm対空機銃 3連装20基
ミサイル
・Mk57VLS80セル 1基
・一式艦対空誘導弾
・八式艦対艦誘導弾
対潜兵装
・九九式対潜迫撃砲 4連装 2基
・九八式対潜弾投射機 24連装 2基
電子系統
各種レーダー
・零式対水上電波探知機
・一式対空電波探知機
ソナー
・九九式対潜音波探知機
射撃管制装置
・零式主砲射撃管制電波探知装置
・三式対空砲射撃管制電波探知装置
・二式両用砲射撃管制電波探知装置
・一式対空誘導弾管制電波探知装置
電子戦・対抗手段
・九八式チャフ・フレア発射機 4基
同型艦
蔵王 秩父 白神 筑紫 笠置 武尊
通商破壊又は、輸送船団旗艦を務めるために整備された、巡洋戦艦。
巡洋戦艦磐城の活躍が認められて建造予算が下りた、設計図は磐城改装時の物に手を加え、旗艦に求められる通信性能、単艦での活動時の求められる、機動性、防御能力を充実させた、機関には燃費向上型のハ号改D型艦本式ディーゼルエンジンを6基搭載し速力、航続距離長大を図っている。
巡洋戦艦蔵王級の六番艦武尊は建造初期から極地、主に千島列島アリューシャン列島での哨戒任務を前提に設計された艦である、そのため厚さ1.5mの氷の中を3ノットで航行可能な能力を保持する。
瑞姫
「武尊も残弾僅かとのことです」
信哉
「砲術長!一式対空誘導弾発射用意!」
磐城砲術長
「電探室!諸元送れ!・・・第一対空誘導弾発射機へ諸元入力、完了」
信哉
「撃っ―――!」
凄まじい、噴射炎と轟音を上げ一式艦対空誘導弾は磐城に搭載されている一式対空誘導弾管制電波探知装置により正確に誘導される
信哉
「何度も見てきたがあの音にはなれんな」
磐城砲術長
「便利なものですけどね・・・命中まで5秒」
水兵2
「・・・命中確認!」
水兵1
「電探室より報告、敵艦隊発見!大型艦7小型艦4!」
信哉
「敵艦隊?」
瑞姫
「規模的に輸送船団ではないでしょうか?」
信哉
「分からんな、第一種戦闘配備!両舷前進強速、燃料残量には注意しろ」
PQ15
輸送部隊:英空母グローリアス
艦橋
磐城が電探で発見した艦隊はアメリカからイギリスへ、航空機を輸送する、輸送船団であった、その中核を担うのは英空母グローリアス。
グローリアスの飛行甲板にはP-51Dマスタング22機とP-47Dサンダーボルト15機が並べられていた。
英水兵1
「レーダーに反応!大型艦2隻!高速で接近中!」
グローリアス艦長
「なんだと、Red Alert発令!回避運動用意!」
英士官1
「艦長?!」
グローリアス艦長
「杞憂で終わればいい、各艦に通達、出せるだけの速度で現海域を離脱せよ」
英水兵2
「不明艦視認!・・・・シャルンホルストクラス!敵艦です!」
英士官3
「艦長、救援要請を!」
グローリアス艦長
「あぁ、急ぎ打電してくれ」
大西洋派遣艦隊
巡洋戦艦磐城 戦闘艦橋
磐城砲術長
「大型輸送船6、駆逐艦4、空母1、艦長どれから行きます」
信哉
「無論空母だ、一撃で仕留めろ」
磐城砲術長
「宜候!第一第二主砲、徹甲弾装填!」
磐城
「グローリアス・・・いやな予感が・・・」
磐城砲術長
「装填完了!用意よし!」
信哉
「撃ち方始め!」
磐城
「えぇい!もうどうにでもなってくださいッ!」
磐城砲術長
「着弾まで、40秒!」
信哉
「第二射用意、急げ!第二射発砲のち戦線を離脱する!」
磐城砲術長
「一斉斉射で行きたいんですが、宜しいでしょうか、艦長」
信哉
「面舵20!これでいいだろう」
磐城砲術長
「有難うございます」
水兵2
「着弾・・・今ッ!夾叉ッ!!」
磐城砲術長
「第二射修正値!三番砲塔、装填急げッ!」
士官1
「全砲塔、零式徹甲弾装填完了!」
磐城砲術長
「第二射!撃―――ッ!!」
イギリス本国
Royal Navy本国艦隊司令部
Royal Navyつまり、イギリス海軍の司令部は数か月前までとは比べ物にならない、喧騒に包まれていた、それほど大日本帝国海軍による通商破壊戦は欧州各国に大きな打撃を与える作戦であった。
イギリス海軍は第一次世界大戦で、ドイツ海軍の通商破壊戦に苦しめられてきたが、今期大戦では、大西洋に敵はなく、欧州は比較的平和であった。だが帝国海軍の大西洋進出により事態は急変したのである。
通商破壊戦により、物価は上昇、イギリスは生活物資を配給に切り替えることを強いられたのである。
そして本日、空母グローリアスを中核とする輸送船団PQ15が襲撃を受けたとの、緊急入電を受け、PQ15の救援の為出撃可能、艦艇の準備が進められていた。
出撃艦船は、ウィンストン・チャーチルの直々の命により直ちに出撃した。
陣容は・・・
戦艦
「デューク・オブ・ヨーク」「ハウ」
重巡洋艦
「クレセント」「アンドロメダ」
以上4隻である、駆逐艦および軽巡洋艦は船団護衛に駆り出される、又は対潜装備の強化の為、入渠を行っていた。そのため今回の出撃には参加できなかったのである。
戦艦:デューク・オブ・ヨーク
艦橋
デューク・オブ・ヨーク艦長
「チャーチル卿も大げさだな、強力な水上部隊と言ってもBattle Cruiser 2隻、本艦だげでも問題ないんだがな」
英士官4
「チャーチル卿は完全な勝利を望んでいるのでしょう、此処の所、敗北が続いていますから」
デューク・オブ・ヨーク艦長
「では、期待に応えるとしますか、副長、会敵ポイントを割り出すぞ。空軍にも支援を要求しろ」
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