第三十一話 作戦準備期間
2月2日
大日本帝國海軍 呉海軍工廠
第六船渠
呉海軍工廠は、日本最大の海軍工廠であり、現在、修理用のドックを含めて十の船渠を持つ巨大工廠だ、もちろん周辺は対空高射砲陣地、局地戦闘機用滑走路等の防衛設備も充実している
今日此処、呉海軍工廠で二隻の艦船の改造が終了し、凡そ五か月ぶりに、その船体を海に浮かべようとしていた
巨大な船体を持ち、中央に巨大な砲塔と城郭を思わせる黒鉄の艦橋、そして、それら構造物を挟むようにして、設置されたV字飛行甲板、基準排水量12万トン、全長390m、全幅68m、最大搭載機数90機、零式60口径510mm砲3連装を3基搭載する、世界最強の航空戦艦、関ヶ原、桶狭間・・・元米海軍航空母艦レキシントンとサラトガの姿であった
航空戦艦 関ヶ原 艦橋
翔平
「どうだ、関ヶ原、桶狭間、気分は」
関ヶ原
「気分はいいけど、気持ちが複雑ね、」
桶狭間
「そうね」
翔平
「祖国と戦うことがか?」
関ヶ原
「いえ、私はもう大日本帝国海軍の航空戦艦関ヶ原よ、そんな抵抗はないわ、複雑なのは、自分の多忙な艦歴よ」
桶狭間
「あたしもまさか、航空戦艦に改造されるなんて思ってもみなかったわ」
翔平
「あぁ、なるほど」
翔平は納得した
レキシントンとサラトガは元は巡洋戦艦として建造されていたが、条約により航空母艦に改造、さらに、拿捕されて、機関室等の全面修理交換が必要なため、艦体全体を改造し航空戦艦に生まれ変わったのだ
関ヶ原
「生まれた時はこんな多忙な人生?になるなんて思わなかったもの」
翔平
「まぁ、俺も歴史を変えるなんて思っていなかったけどな・・・まぁ、桶狭間共々頑張ってくれ」
関ヶ原
「任せてください」
桶狭間
「言われなくても分かっているわ」
翔平
「頼んだぞ」
翔平はそう言って艦橋から出て行った
関ヶ原、桶狭間の両艦は主力艦と言う事で第一連合艦隊、第六戦隊に配備されるがその前に、完熟訓練のため、2ヶ月間日本海で新型重巡洋艦、霊仙型の五番、六番艦、九重と斜里と駆逐艦松型6隻と共に艦隊運動訓練等が行われる予定だ
翔平は関ヶ原から内火艇に移り、関ヶ原と入れ違いに船渠に入渠する、世界最強最大級の戦艦に目を向けた
翔平
「親父め、さっそく改装する気か・・・」
そう、昨日の話し合いの後、武はすぐ艦政本部に戻り設計図を提出、その足で工作艦宗谷に戻り、資材を発注し、さらに各戦艦の図面を引き直し作業にかかった
第六船渠には大和が入渠し、その隣の第七船渠には武蔵が入渠、さらに信濃、三河は九州大分の大神海軍工廠に移動し明日の2月3日に入渠の予定が立てられている
翔平は大和の入渠する船渠を見る、すぐその隣には第五船渠がある、第五船渠では米空母ホーネットの改装中、資材加工工場、小組立工場を挟んで、第四船渠ではエンタープライズ、その隣第三船渠ではヨークタウンの改装作業中を行っている真っ最中であった
大和
「翔平さん、お久しぶりです」
翔平
「おぉ、大和か久々だな」
大和
「えぇ、私達はずっとトラックでしたから」
翔平
「そうか、山本長官はお見えになるか?」
大和
「はい、今は旗艦を扶桑に移して指揮をとっています」
翔平
「そうか分かった有難う」
大和
「どういたしまして、出はこの辺で」
翔平
「あぁ」
こうして翔平は旗艦である播磨に戻った
第二連合艦隊
旗艦 イージス戦艦 播磨 長官執務室
翔平
「やはりこの部屋が一番落ち着くな」
翔平が執務室でくつろいでいると
啓太
「入るで、翔ちゃん」
翔平
「おぉ、啓太か、入れ」
啓太が入ってきた
啓太
「ほい、これがここ三ヶ月、第二連合艦隊、本隊の活動報告書や」
翔平
「うん、分かった、見せてくれ」
翔平は活動報告書を受け取り目を通す
翔平
「南太平洋の戦局はどうだ」
啓太
「静かなもんや、豪州を中立にさしたことが効いているんやろか」
翔平
「あぁ、第一連合艦隊が去年の暮れに行った作戦だろ、無茶するよな、山本長官も」
第一連合艦隊は去年の暮つまり12月末に豪州シドニーに姿を見せつけ、豪州政府を威嚇し、単独講和に着かせることに成功した、これにより連合軍側は南太平洋における制海権、制空権をほぼ失い、さらに豪州と言う中継基地を失った
翔平
「さて、次は、いよいよ、ハワイか・・・」
山本五十六
「その通りだ、林君」
翔平
「!!山本長官いったいいつから」
山本五十六
「ついさっきだ」
翔平
「こちらから行きましたのに」
山本五十六
「いや、今司令部は仮住まいへの引っ越しに忙しいんだ、来られたらむしろ困る」
武
「おい、翔平、図面ができたぞ」
さらに目の下にクマを作っていた武が入っていた
翔平
「・・・また徹夜しただろう、まったく、母さんがいないといつもこれだ」
武
「大丈夫だ自分の健康管理ぐらいはできている、あっ山本長官、いらしていたんですね」
山本五十六
「あぁ、ところでもう図面が引けたのか」
武
「はい、今いる設計技師を総動員させましたから」
山本五十六
「不備はないだろうな」
武
「もちろんです、つい先ほど、牧野呉海軍工廠造船部設計主任にも話してきたけど大丈夫だ」
翔平
「親父は、性格はこんなのですけど、艦船の事だけに関しては一級品の仕事をします」
武
「なんだその言い草は、一応軍事関連は極めているつもりだぞ」
山本五十六
「ゴホン、まあ、信用できる仕事をしていることは今までの事でわかっている」
翔平
「親父は図面を持ってきたんだろ、見せてくれないか」
武
「あぁ、検討した結果、比較的短期間に改造が可能な戦艦のみ改造することにかまった」
山本五十六
「ほう、何隻あるんだ」
武
「検討した結果ですが、大和型4隻、長門型2隻、日本艦はこれのみです、伊勢、扶桑、金剛型はこれ以上改造するとバランスが悪化し、復元力を大幅に低下させます、次に英戦艦ネルソン型・・・若狭型2隻、元独戦艦ビスマルク・・・丹波型2隻を改装します、計10隻です」
では、性能表をこの機会に書いておく
戦艦長門
全長385m 基準排水量125.500t
全幅55.5m 満載排水量182.800t
速度35,0ノット
主砲 零式60口径510mm砲 3連装 3基
副砲 三式60口径203mm砲 3連装 2基
両用砲 OTOメララ127mm速射砲 連装 8基
OTOメララ 76mm速射砲 単装 4基
機関砲 25mmファランクスCIWS 連装 4基
40mm対空機銃 4連装 34基
機銃 25mm対空機銃 3連装 18基
ミサイル Mk57VLS80セル 1基
一式対空ミサイル、五式対潜ミサイル
八式対艦ミサイル
艦載機
SH-60K 1機
最大搭載機数 3機
同型艦
長門 陸奥
戦艦若狭
全長365m 基準排水量116.500t
全幅51.2m 満載排水量171.200t
速度35,68ノット
主砲 零式60口径510mm砲 3連装 3基
副砲 三式60口径203mm砲 3連装 2基
両用砲 OTOメララ127mm速射砲 連装 8基
OTOメララ 76mm速射砲 単装 4基
機関砲 25mmファランクスCIWS 連装 4基
40mm対空機銃 4連装 34基
機銃 25mm対空機銃 3連装 18基
ミサイル Mk57VLS80セル 1基
一式対空ミサイル、五式対潜ミサイル
八式対艦ミサイル
艦載機
SH-60K 1機
最大搭載機数 3機
同型艦
若狭 伯耆
戦艦丹波
全長372m 基準排水量121.500t
全幅54.5m 満載排水量195.200t
速度38,02ノット
主砲 零式60口径510mm砲 3連装 3基
副砲 三式60口径203mm砲 3連装 2基
両用砲 OTOメララ127mm速射砲 連装 8基
OTOメララ 76mm速射砲 単装 4基
機関砲 25mmファランクスCIWS 連装 4基
40mm対空機銃 4連装 34基
機銃 25mm対空機銃 3連装 18基
ミサイル Mk57VLS80セル 1基
一式対空ミサイル、五式対潜ミサイル
八式対艦ミサイル
艦載機
SH-60K 2機
V-22 電空 2機
最大搭載機数 5機
同型艦
丹波 丹後
翔平
「意外と少ないな、全部改造するかと思った」
武
「資材の発注が間に合わないのと、時間がかかるんだ、大和型の改装終了は3か月後を予定している、長門型、ネルソン型、丹波型は完全機械化がされている、ドック艦呉型、及び神戸型でやっていく、これにより改装期間は約1か月から2か月と言ったところだ、大和も本当はドック艦で改造をしたかったんだが、呉型をもってしても大和は入らないからな」
山本五十六
「分かった」
武
「では、自分はこれで」
武は設計図を丸めて、部屋を出て行った
山本五十六
「それで、この作戦所に目をとしておいてくれないか」
翔平
「いよいよ、ハワイ攻略ですか」
山本五十六
「そうだ、関ヶ原、桶狭間の完熟訓練が終了し次第、作戦準備期間に入る」
翔平
「投入兵力は、どのくらいですか」
山本五十六
「現在ハワイ、真珠湾には碌な艦隊はおらんらしいが、ハワイ諸島は要塞化が進められているらしい、得に航空兵力が中心だそうだ」
啓太
「と言う事は、次は航空兵力が中心で?」
山本五十六
「そうだ、第一機動艦隊、第二機動艦隊は現在訓練に余念がないらしい、小沢と山口が、航空兵に発破をかけているみたいでな」
翔平
「そう言えば、新しく、第三機動艦隊が編成されたとか」
山本五十六
「いま、第一連合艦隊が内地に帰還したからな、その埋め合わせとして、マーシャルに配備されたそうだ」
翔平
「第三機動艦隊の乗員の10%が女性と聞きましたけど・・・軍令部がよく動きましたね」
海軍軍令部では、第二連合艦隊では女性が10%占めている事実に目を向けて、その代表である、参謀の清水葵中将に話を聞き、5年ほど前から女性兵学校を設立した
山本五十六
「最近の軍令部もずいぶん変わってきたからな」
翔平
「時代のせいですよ、時代の」
播磨
「二人とも急に老け込まない!」
翔平
「おぉ、播磨か」
山本五十六
「私はいい歳なんだけどな」
翔平
「なにを言っているんですか、長官にはまだ現役でいてもらわないと」
山本五十六
「はははは、冗談だ、では作戦計画書に目を通してくれ、ではまた」
翔平
「はい、了解しました」
そう言って山本は退室した
啓太
「さて、これからどうするん?」
翔平
「取りあえず、報告書と計画書に目を通す、二人とも取り敢えず静かにするか、出て行ってくれ」
啓太
「じゃぁ、俺は艦内巡検でもしますか」
播磨
「私は、鳳翔の所に行ってくる」
翔平
「おう、分かった」
翔平は執務机に座り、報告書に目を通し始めた。
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