5 お出かけ
よろしくお願いします
「この後は二人でドレスを作りましょう。叔母様とメゾンが違うから雰囲気の変わった物になるわ」
「これもお義母様に作っていただいたばかりで、私には多すぎるのではないかと思うのですが……」
「違うお店で作るのは嫌?」
「いえ、嫌ではありません。……私には贅沢過ぎる気がして…」
「作ったドレスを着て今度観劇に行かないか?」
「良いわね、お兄様が一緒なら安心だわ」
「三人で観劇に行くのですか?楽しそうです。昔観たことがあります。妖精が出てくる可愛らしいお話でした」
「女性が好きそうな恋愛物を探してみるよ。だからシルビアに付き合ってドレスを作って欲しい」
「では遠慮なく……。ウイルフリード様はお優しいのですね」
「ふふふ褒められたわね、兄様。ローズマリー様もどんどん甘えていいわよ」
「ああ甘えてくれて構わない。もう一人で頑張らなくていいんだ」
それを聞いたローズマリーは胸の奥に込み上げてくる熱いもので涙を零しそうになり必死で堪えた。
淑女は人前では泣かないものだと亡くなった実母に教えられた。辛いときはその言葉が支えだった。だからどんな目にあっても決して泣かなかった。なのに…気が緩んでいるのだろうか。
「兄様お仕事があるのではないの?もう行っていいわよ」
「邪魔者扱いかい?」
「メゾンを待たせているのよ。ローズマリー様さあ行きましょう」
「それなら退散するとしようか。またねローズマリー」
あの日作った薄紫色のドレスを着て待っているとハミルトン公爵家の馬車が迎えに来た。
「藤の花の妖精のようだね。よく似合っている」
近付いて来た人は黒いスーツに身を包んでいた。ポケットチーフが紫だ。
「ありがとうございます。ウイルフリード様も素敵です。…あのシルビア様は馬車でお待ちですか?」
「それが、急な客が来て今日は来られなくなったんだ。楽しみにしていたかと思うけどごめんね」
「それじゃあ観劇は取りやめですか?」
「行くに決まってる。予約してあるから二人で楽しもう。シルビアがいないと嫌かい?」
「嫌だなんて…先に観てしまってもいいのでしょうか?」
演目は王都で人気の恋愛物だった。敵対する家の令息と令嬢が惹かれ合い数多の困難を乗り越えて結ばれるというストーリーだ。演者が一流の上にハラハラドキドキの展開で観客は増える一方だという。
お義母様が少女の様なきらきらした瞳で話してくれた。
「ふ~ん、あれを観るのね。きっと楽しいわ。ウイルフリード君やるわね」
そう言った顔が生温かったのは見間違いだろうか。三人なのだから何もあるはずがないのに。それに貧相な私では釣り合うはずもない…。えっ釣り合うって何を考えているの私。
「観ないとシルビアに叱られるよ。君は私達のお気に入りだからね」
ああ、私はペット枠なのだわ。お気に入りだなんて嬉しい。
それなのに胸がつきんと痛いのは何故だろう。
「さあ行こう。お手をどうぞ、ローズマリー」
王子様のような人は眩し過ぎる笑みを浮かべた。
馬車はゆっくり走り出した。
読んでいただきありがとうございます!すみません、区切りの関係で短くなりました。
楽しんでいただければ嬉しいです。




