第4章 賈龔、婚礼の儀をあげる
涼州に入った初日に出会った運命の人ともいえる白英と、正式に婚儀を挙げることになった。時に西暦百四十五年(永憙元年)の一月、初春である。
婚儀は白理の邸宅で盛大に行われた。近隣の住民たちも無礼講で参加させたため、城中の者が集合したかの様な賑わいであった。
本来、賈龔はこういった「派手」な祝い事などは苦手としているが、白理に異民族と隣接している場所で生活を送り、危険と隣り合わせともいえる涼州の人民は、祝い事には特に力を入れて執り行うのが常なので、その風習に合わせてほしい、と頼まれたので、受け入れた。
妻となる白英は、賈龔と違い、こういった賑やかな催しを好む質であるので、とても楽しそうにしており、賈龔はそれを見ているだけで幸せな気持ちになれた。
この婚儀の宴は、実に十日連続、休むことなく行われた。
賈龔の部隊に所属する兵士たちも日替わりで祝いに来た。
副将の王武の取り計らいである。
王武自身は、将軍不在時の万が一に備えて常に前線の警備に出ていたという。こういう気質が、部下に厳しく接しながらも、尊敬されている所以であろう。
さて、十日連続の婚儀の祝宴もようやく終わりを告げた。
賈龔は白英に非番の日以外は、隊の軍営で過ごすことを伝えた。白英は当然の様に受け入れた。
軍営に戻った賈龔は、当たり前ではあるが、浮かれた様子もなく、いつも通りにふるまった。
王武に言う。
「王武よ。長々と留守にして済まなかった。流石に疲れただろう。二、三日はゆっくり休むとよい。」
「将軍こそお疲れじゃないのか?俺は、普段通りに過ごしていただけさ。」
「ふふふ。まあ、そう言うな。副将に休みを取らせるのも、将たる私の大切な役目。王武、命令だ。三日間、軍営への立ち入りを禁ずる。」
「えっ!ここにいることもだめなのかい。しょうがない、将軍様の命令だ。久方ぶりに家に戻って酒浸りにでもなろう。」
「うむ、そうするとよい。ゆっくり休め。」
王武は軍営を後にした。