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第3章 賈龔、一騎打ちをする

 白英との運命的な出会いを果たした賈龔は、翌日、自分の率いる部隊の宿営に向かった。

 白理が言うには、兵を司る人間たちに問題はあるが、兵士一人一人の強さに関しては、涼州兵の名は中国全土に轟いており、問題ないであろう、とのことだった。


 実際、精悍な目つき、身なりの者ばかりだ。

 賈龔が新しい上官になることをわかってはいるのであろうが、誰一人、自ら挨拶をしてくるようなことはなかった。

 「嘗められているな」

 賈龔はすぐに理解した。

 賈龔のいた兗州は、涼州から見れば「都会」であり、異民族との紛争などが生じる場所ではない。その辺りである程度の武名を轟かせていたくらいでは、厳しい環境で激闘を繰り広げている涼州の兵士からすれば、そう簡単に認めるわけにはいかない。


 こういったことは賈龔にとって、想定の範囲内であった。

 賈龔は、自分の部下となる一五〇名の兵士たちを集めて言った。

 「俺は、兗州からきた賈龔だ。兗州でも、軽騎兵を率いてきた。君たち涼州兵は、中華にその名を轟かす強者。俺は、君たちを率いることに誇りを感じる。」

 兵士たちは無反応である。

 「ただ・・・。」

 ここで賈龔は少し長い間をおいて続ける。

 「俺を将軍として認めたくない、仕えたくない、という者がいたら申し出てくれ。他の部隊に行けるように取り計らう。」


 少し兵士たちがざわつき始めたが、申し出てくるものはいない。賈龔が話し出そうとすると、一人の男が前に出てきた。

 「賈龔将軍。俺は、あんたの副将を任ぜられている王武だ。自分で言うのも何だが、ここで俺より強い者はいない。俺と一騎打ちしてくれないか。」

 「副将自ら将軍の腕を試すと申すか。よかろう。」

 全員が演武場に向かう。王武が言う。

 「将軍の得意の武器は?」

 「一通り何でも使えるつもりだ。王武よ、お前が選ぶと良い。」

 「ほう、さすがは将軍殿。余裕だな。それなら、槍だ。」

 「わかった。」


 王武が棒を構える。流石に本当の槍での勝負で、命を懸けるわけにはいかない。王武が言う。

 「さあ、将軍、構えなよ。」

 賈龔が答える。

 「王武よ。槍の代わりに棒を使うのは、まあ、いい。ただ、我らは軽騎隊。馬に乗っての勝負としたいが。」

 「なるほど。おい、誰か適当に馬を連れてきてくれ。」


 二人の兵士が厩に向かい、それぞれ同等と思われる馬を用意してきた。賈龔が言う。

 「うむ。馬の力は同等と見た。王武よ。もし、自分の愛馬に乗りたければ、俺は一向に構わぬが。」

 「くくく・・・。大した自信だ。しかし、馬の力差で負けた、とか言い訳をされたくはねえ。だから、これでいいぜ。」

 「わかった。では、始めよう。」


 お互いが馬に乗って向かい合った。

 しばしの静寂の時が流れる。

 お互い動こうとはしない。

 すると、賈龔が深呼吸をしてから言う。

 「王武よ。我から参る!」

 「おう、望むところだ!」


 賈龔が先に駆け出す。それに王武が呼応する形となった。

 賈龔の鋭い突きが王武の首元を襲う。王武はひらりとかわし、賈龔の脇腹に向かって一撃を入れようとした。その時である。大きな体躯をもった王武の体が宙に浮いて、地面に落下した。賈龔は王武の一撃をかわして、逆に王武の脇腹に強烈な一撃を叩きこんだのである。この一撃で勝負は決まった。


 王武の額からは結構な血が流れている。しかし、王武は傷口を軽く抑えるだけで、さして気にしていないようだ。そして、言った。

 「賈龔将軍。俺の負けだ。この王武、賈龔将軍に忠誠を誓おう。」

 王武が言うと、全兵士が一斉に忠誠を誓った。

 賈龔が言う。

 「王武よ。傷の手当てをするがよい。そして、これからもこの隊の中心として、皆をまとめてくれ。」

 「もちろんだ、将軍、任せてくれ。」

 

 こうして、賈龔は一日にして自分の隊の兵士たちを心服させることに成功した。後に、この王武を中心とした第一次賈龔隊が中心となり、涼州を大きな災難から守ることになるのである。


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