第23章 賈詡、官を辞して故郷に帰る
西暦百七十五年(熹平四年)。
賈詡が黄門郎の官について、数年が経過した。
筆頭である張讓を含めた十常侍の覚えもよく、賈詡は同期の黄門郎から頭一つ抜けた存在となっていた。賈詡に負けるまいと、学友の段煨がその後に続く。
しかし、賈詡の体調に異変が生じていた。
とにかく体が重苦しい。気怠さが生じ、仕事や勉学への集中力が保てなくなり、時には考えられない様な失敗を犯すこともあった。
原因は不明であるが、どうにも体の自由が利かなくなり、それと共に思考能力も低下しているのがわかった。
このままではまずいと、張讓に正直に体調の事を報告して、しばらくの休養が許可された。しかし、体調は一向に良くならず、快方の道は全く見えなかった。
薬も全く効かず、医者も原因がわからない、ということであった。そこでやむを得ず、賈詡は官を辞することにした。
張譲は、賈詡は本当に便利な存在故に、退官には難色を示したが、全く体調不良が良くならない賈詡を目の当たりにして、渋々であるが、受理をした。
こうして賈詡は、病気を癒すために故郷の涼州に戻ることにした。しかし、涼州への旅は当然、長旅となる。賈詡を案じた段煨が言う。
「文和よ、涼州に戻るのは無理なのではないか?」
「いや、仲華よ。病の原因は都会の風に当たりすぎたのだと思う。涼州の荒涼とした風に吹かれれば、恐らく病も言えるであろうよ。」
「俺も一緒に行くか?」
「馬鹿を言うな。私が辞めたら、私の代わりになれるのは仲華、お前だけだ。皇帝も今年で十九歳。そろそろ親政の準備も始めなければならぬ。今のところ、十常侍の方々にその気はなさそうだが・・・。」
「わかった。お前の代わりというのは中々荷が重いが、できることをやろう。しかし、単身で涼州に本当にたどり着けるのか?」
「実は、母の兄上がこの洛陽で商売をやっている。近々涼州に戻る予定があるとのことで、この隊商の一員として同行させてもらうことにしている。」
「そうか、それなら安心だ。文和よ、お前とはまたいずれ会う様な気がしている。それまで、さらばだ。」
「ああ。私も仲華との縁は長いのではないか、と感じていた。途中で一人去るのは申し訳ないが、将来の再開の時まで、しばしの別れだ。」
こうして、賈詡は病気で故郷の涼州まで帰ることになった。そして、この道中で事件が起きるのである。




