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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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これからの事 第1部[完]

 ユキヒロを置いて、逃げていたアリサ達。

 そんなアリサ達の背後からは、大地を世界を揺るがすほどの轟音が轟いていた。

 アイラ、アリサ、セシルス、ジン、勇者パーティーの誰もが、背後からの強大な魔力に冷や汗をかいた。

 一方のジンに担がれていた広は、心配したような顔でその光景を目にしていた。


「ユキヒロ……」


 広が呟いた時、ユキヒロがいた戦場から巨大な余波が飛んできた。

 その場にいた勇者パーティの面々でさえも、膝を着くほどの余波。

 広はとっさにユキヒロのいる戦場へ走り出す。


 ※


 建物も魔力も何もかもが消失した更地。

 ユキヒロの目の前にはザルヴァトールの亡骸。

 そして、彼の周りには日本の軍が取り囲んでいた。


「しまったな……この状況明らかに俺の立ち位置がおかしくなってる」


銃を構えた自衛隊員たちが、警戒した表情でユキヒロを取り囲んでいる。

 ヘリコプターが上空を旋回し、サーチライトが彼を照らし出す。

 

「動くな! 武器を捨てて、両手を上げろ!」

 

 拡声器越しに、鋭い命令が飛ぶ。

 

「あー……これは、まずいな……」

 

 ユキヒロは疲労困憊の体で、ゆっくりとエルドリスを地面に置いた。

 だが、両手を上げる気力すら残っていない。

 

「繰り返す! 両手を上げろ! 従わない場合、発砲する!」

 

「ちょっと待ってくれ……話せばわかる……」

 

 そう言いかけた瞬間――。

 

「ユキヒロ!」

 

 遠くから、広の声が聞こえた。

 振り返ると、彼女が必死の形相で走ってくる。

 

「広!? 来るな、危ない!」

 

「繰り返す! そこの女性も止まれ!」

 

 だが、広は止まらなかった。

 自衛隊員たちの制止を振り切り、ユキヒロの元へと駆け寄る。

 

「貴方、怪我は!? 大丈夫!?」

 

「ああ……なんとか……」

 

 広がユキヒロの体を支える。

 その温もりに、ユキヒロは少しだけ安心した。

 

「そこの二人! 今すぐ離れろ! でなければ――」

 

 その時だった。

 空から、眩い光が降り注いだ。

 

「はいはい、そこまでよ」

 

 現れたのは、銀髪の女神――ルシエル。

 彼女は面倒臭そうに手を振ると、周囲の自衛隊員たちが次々と動きを止めた。

 

「な……体が……動かない……!」

 

「何だ、これは……!」

 

「時間停止……じゃなくて、認識操作ね」

 

 ルシエルが得意げに言う。

 

「あなたたちには、ここで何も起きていないように見える。ただの空き地で、何の異常もない――そう認識するわ」

 

 自衛隊員たちの目から、焦点が消えていく。

 彼らは、まるで何も見えていないかのように、その場を離れ始めた。

 

「助かった……」

 

 ユキヒロが安堵のため息をつく。

 

「まったく、派手にやってくれたわね」

 

 ルシエルが呆れた表情でユキヒロを見る。

 

「街一つ分、更地にするなんて」 


「仕方ないだろ、ああでもしないと。街1つどころじゃなかった」


「それにしてもあのザルヴァトールをこうもあっさり倒すなんて……アンタ、何者」


「ただのしがない人間だ」


「そう、まぁいいわ。まずはこの更地をどうにかしなきゃね」


 ルシエルはそう言うと、手を天へと掲げた。

 更地だった場所に、元通りの建物が現れていく。

 

「幻影……じゃないわね。これ、本当に復元してるの?」

 

 広が驚きの表情を浮かべる。

 

「ええ。時間を巻き戻してるのよ。この範囲だけね」

 

「そんなこと、できるの……?」

 

「女神だもの。これくらい朝飯前よ」

 

 ルシエルが得意げに胸を張る。

 そして、ルシエルはふと視線をユキヒロに向けた。


「貴方、さっきまでの姿……勇者だと思えなかったわ」


 その言葉に彼は顔を暗くする。


「まぁ街1個分が消えるだけで収まったの幸運ね。あなたのユニークスキルは特別強力なのだから気をつけて使う事ね」


 修復された街中で、俺はボロボロになった手を眺める。


「分かった。次こそは」


「ねぇ、ユキヒロ……もう戦うのやめない?」


「なんでそうなるんだよ、俺は売られた喧嘩は買う派だ」


「でもそれ以上戦ったら……きっ貴方は壊れる! ――だから!」


 その時、広の行方を追ってアリサ達が現れる。


「ユキヒロ、さっきのは……」


「俺のスキルだ。お前らにも見せたことなかったな……」


 アリサの問いかけにそう返すと、ユキヒロは悠然と歩く。


「なぁ、お前ら」


 ユキヒロは背を彼らに向けたまま言葉を放つ。

 エルドリスを虚空へ収納する。


「俺を異世界に帰してくれないか?」


「ユキヒロ、貴方何言って……」


 その場の誰もがその発言に耳を疑った。

 しかし、決意を固めたユキヒロの目には何かが宿っていた。


「分かった、私が連れていきましょうか」


 セシルスは彼の意図を察して、ユキヒロの隣に立つ。


「広……ごめん、俺はこの世界に戻ってくるべきじゃなかった。異世界からの異物となった俺はもうこの世界に順応できないらしい」


「ユキヒロ……」


「俺がいるから魔獣もゲートも生まれるんだ。だったら、俺は異世界に帰る。その方がこの世界にとっても幸せな事だ」


「ユキヒロ……そんな……」


 広の声が震える。

 涙が、頬を伝って落ちた。


「待って……待ってよ……!」


「広、俺はもう――」


「嫌! 行かないで!」


 広がユキヒロの腕を掴む。

 その手には、必死さが滲んでいた。


「八年間……八年間も待ってたの! やっと帰ってきてくれたのに……また、行っちゃうの……?」


「ごめん……でも、これが一番いい方法なんだ」


 ユキヒロは、広の目を見ることができなかった。


「一番いい方法……?」


 広の声が、怒りを含み始める。


「そんなの……そんなの、ユキヒロの勝手な思い込みよ!」


「広――」


「違う! 貴方は逃げてるだけ!」


 その言葉に、ユキヒロが動きを止める。


「この世界で戦うのが怖いから……大切な人を失うのが怖いから……だから、逃げようとしてるだけ!」


「……それは」


「違うって言えるの!?」


 広の叫びに、ユキヒロは何も言えなくなった。


 確かに――広の言う通りかもしれない。

 この世界で戦い続ければ、いつか誰かを失うかもしれない。

 広を、仲間を――大切な人たちを。


 それが怖かった。


「ユキヒロ……」


 アリサが静かに口を開く。


「私たちは、貴方の決断を尊重する。でも――」


「でも……?」


「本当にそれでいいの? 後悔しない?」


 アリサの問いかけに、ユキヒロは答えられなかった。


「ユキヒロ」


 今度はジンが前に出る。


「お前、八年前にこの世界から異世界に飛ばされた時、何を思った?」


「……帰りたいって、思った」


「そうだろ? お前は、この世界に帰りたかったんだ。家族に会いたかった。広に会いたかった」


 ジンの言葉が、ユキヒロの胸に突き刺さる。


「それを、自分から捨てるのか?」


「……」


「俺は、お前がそんな奴だとは思わない」


 ジンが肩に手を置く。


「お前は、何があっても諦めない。それが、お前の強さだろ?」


「でも……俺がいるから、この世界に魔物が――」


「それは違います」


 セシルスが口を挟む。


「確かに、貴方が異世界から戻ってきたことで、この世界と異世界の繋がりが強くなった。でも――」


 セシルスが真剣な表情になる。


「それは、貴方のせいではありません。これは、もっと大きな力が働いているんです」


「大きな力……?」


「ええ。おそらく、魔界王――いや、それ以上の存在が、この世界を狙っている」


 セシルスの言葉に、全員が息を呑む。


「つまり、ユキヒロがいてもいなくても、この世界は狙われていた。そういうことです」


「じゃあ……」


「貴方が異世界に帰っても、この世界への侵攻は止まらない。むしろ――」


 セシルスが厳しい表情になる。


「貴方という『最強の守護者』がいなくなれば、この世界はより簡単に侵略されるでしょう」


 その言葉に、ユキヒロは言葉を失った。


「ユキヒロ」


 アイラが静かに前に出る。


「貴方は、この世界にとって必要な存在なの。それを忘れないで」


「でも……俺は……」


「怖いのね?」


 アイラの言葉に、ユキヒロは頷いた。


「ああ……怖い。大切な人を失うのが……」


「それは、誰だって同じよ」


 アイラが優しく微笑む。


「私だって、貴方を失いたくない。ジンも、アリサも、セシルスも――みんな、貴方を失うのが怖い」


「……」


「でも、だからって逃げない。一緒に戦う。それが、仲間でしょ?」


 その言葉に、ユキヒロの目に光が戻り始めた。


「ユキヒロ……」


 広が、涙を拭いながら言う。


「私、待つのは慣れてる。八年間も待ったんだから」


「広……」


「でも、貴方が自分から離れていくのは――耐えられない」


 広がユキヒロの手を握る。


「だから、お願い。一緒にいて。怖くても、辛くても――一緒に乗り越えよう」


 その温もりが、ユキヒロの凍りついた心を溶かしていく。


「広……みんな……」


 ユキヒロの目から、涙が溢れた。


「ごめん……俺、弱音吐いてた……」


「いいのよ。弱音くらい、吐いたって」


 アリサが笑う。


「それでも、また立ち上がればいいんだから」


「そうだ。お前は勇者だろ?」


 ジンも笑顔を見せる。


「何度倒れても、立ち上がる。それが、お前の強さだ」


「みんな……」


 ユキヒロが、ゆっくりと顔を上げる。


「ありがとう……俺、やっぱりこの世界に残る」


 その言葉に、全員が笑顔になった。


「でも――」


 ユキヒロが真剣な表情になる。


「もう、一人で戦うのはやめる。みんなと一緒に、この世界を守る」


「当然よ」


 アイラが頷く。


「私たちは、最強の勇者パーティーなんだから」


「ああ、そうだな」


 ユキヒロが笑った。


 その時、ルシエルが拍手をした。


「いい話ね。感動したわ」


「お前……いつまでいるんだよ」


「失礼ね。一応、後処理してあげてたのよ?」


 ルシエルが肩をすくめる。


「でも、決まったみたいだから、私はこれで失礼するわ」


「おい、待て」


「何?」


「教えてくれ。セシルスが言ってた『大きな力』って――」


 ユキヒロの問いに、ルシエルは少し考えてから答えた。


「……正直に言うわ。私にも、よくわからないの」


「わからない……?」


「ええ。ただ、一つだけ言えるのは――」


 ルシエルが真剣な表情になる。


「魔界王を超える存在が、この世界を狙っている。それだけは確かよ」


「魔界王を超える……」


「だから、気をつけて。これから先、もっと強大な敵が現れるかもしれない」


 そう言い残して、ルシエルは光とともに消えていった。


「……厄介なことになったな」


 ユキヒロが呟く。


「でも、大丈夫」


 広がユキヒロの手を握る。


「みんながいるから」


「ああ、そうだな」


 ユキヒロが微笑む。


「じゃあ、帰るか。今日は疲れた」


「そうね。ゆっくり休みましょう」


 こうして、ユキヒロは再び――この世界に留まることを決めた。


 戦いは続く。

 だが、一人ではない。


 大切な仲間がいる。

 愛する人がいる。


 それがあれば――どんな困難も乗り越えられる。


 ユキヒロは、そう信じていた。



 その夜。


 広の家で、ユキヒロは一人ベランダに出ていた。

 夜空を見上げると、星が綺麗に輝いている。


「結局、残ることにしたな……」


 独り言のように呟く。


「これで、良かったのかな……」


「良かったに決まってるでしょ」


 背後から、広の声が聞こえた。

 振り返ると、彼女が笑顔で立っていた。


「広……」


「ユキヒロ、ありがとう」


「何が?」


「残ってくれて」


 広がユキヒロの隣に立つ。


「私、本当に嬉しい」


「……俺も、残って良かったと思ってる」


 ユキヒロが広の手を取る。


「お前がいてくれるから、俺は戦える」


「ユキヒロ……」


「これからも、側にいてくれるか?」


「当たり前でしょ」


 広が笑顔で答える。


「私、ずっと側にいるから」


「ありがとう」


 二人が見つめ合う。

 そして――静かに、唇を重ねた。


 優しく、温かいキス。


 戦いの日々は続く。

 だが、この温もりがあれば――。


 どんな困難も、乗り越えられる。


 ユキヒロは、そう確信していた。


 こうして、元勇者ユキヒロの――新しい戦いの日々が始まった。


 だが、それは決して孤独な戦いではない。


 仲間と共に。

 愛する人と共に。


 この世界を守るために――。


 戦い続ける。


 それが、ユキヒロの選んだ道だった。

いつも本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。

このたび、本作は一区切りとして「いったん完結」という形を取らせていただくことにしました。


物語を続けるにあたり、構成や方向性を見直す必要があると判断したため、ここで筆を置きます。最後までお付き合いいただいた読者の皆さまには、心より感謝申し上げます。


いただいた応援やコメントは、すべて次の創作への大きな励みになりました。

今後は別作品の更新に注力しつつ、機会があれば本作の続編や再構築版にも取り組む予定です。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

また別の作品でお会いできれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

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