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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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勇者の肩書き

 目の前に立つのは、リーダーと呼ばれている男。

 俺は握っていた剣を、ぎゅっと握り直した。


 ――何だ、この違和感。

 この男、ただの人間のはずなのに……なぜこれほどまでに濃密な魔力を纏っている?


 異世界で数え切れないほどの魔物と戦ってきた俺が、本能で感じ取る。

 こいつは――危険だ。


「おや? どうしたんだい? そんな暗そうな顔して」


 男の声は軽い。まるで散歩でもするような調子だ。

 だが、その目は笑っていない。


 ――いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。

 ここを死守しなければ。広も、アリサも、セシルスたちも――みんな、この場所にいるんだ。


 俺はエルドリスを構え直した。

 リーダーの男も、ゆっくりと構えを取る。


 そして――ニヤリと、口の端を吊り上げた。


「――ケヒッ!」


 瞬間、視界が歪んだ。

 凄まじい速さで放たれた蹴りが、俺の脇腹に突き刺さる。


「ぐっ――!」


 咄嗟に腕で受け止めたが、衝撃が骨を通して全身に響く。

 重い。圧倒的に重い。


 ――こいつ、どこにこんな力が?

 常人離れしたスピードと破壊力。まるで魔力を纏って戦っているようだ。

 いや、纏っている。確実に。


「どうしたどうした! 元勇者様はその程度か!?」


 男は笑いながら、今度は刃を滑らせて俺の腕を狙ってくる。

 鋭い切っ先が、月光を反射してきらりと光った。


 ――仕方ない。

 こうなれば、俺も少し本腰を入れるしかない。


 深く息を吸い込み、体内の魔力を解放する。

 全身に力が漲る感覚。8年間、異世界で研ぎ澄ませてきた力が、今、蘇る。


「――ッ!」


 俺は男の懐に踏み込み、拳を叩き込んだ。

 ゴッ、という鈍い音とともに、男の体が風船のように吹き飛ぶ。


 ――そして、すかさず追撃。

 宙を舞う男の体を、サッカーボールのように高く蹴り上げる。


 その間にも、男はずっと不敵な笑みを浮かべていた。

 ――何だ、その笑顔は。


 嫌な予感が背筋を駆け上る。

 だが、止まらない。


 俺は跳躍し、宙で無防備になった男の腹部に向けて、渾身の蹴りを叩き込む。


 ドガァッ!


 男の体が地面に激突し、土煙が舞い上がった。

 着地した俺の足元で、リーダーの男が倒れている。


 ――だが。


「ケケケ……僕はね、人が見据えた希望、感じた希望を壊すのが好きでね」


 男は笑っていた。

 血を吐きながら、それでも――笑っていた。


「今、君は僕をもうすぐ倒せることにホッとしているんだろ? 安心しているんだろ?」


「何言ってる……今際の際だぞ、お前」


「フッフッフ、それはどうかな?」


 ――何だ、この男。

 さっきから、何か企んでいる。


 俺が警戒しながら距離を取ろうとした、その瞬間。

 リーダーの男が、ニヤついた笑みを浮かべたまま――俺の足首を掴んだ。


「君の力を……コピーさせてもらうよ」


「――ッ!?」


 次の刹那。

 俺の体は、まるで砲弾のように吹き飛ばされた。


 視界が回転する。

 背中に激痛が走る。


 ガシャァン!


 喫茶店の壁を突き破り、店内に叩きつけられた俺の体。

 ガラスの破片が降り注ぎ、頬を切り裂く。


「ユキヒロ!?」


 広の悲鳴が聞こえた。

 ジンたちの驚愕の視線が、一斉に俺に集中する。

 アリサの顔が、恐怖で蒼白になっていた。


 ――何が起こった?

 コピー……まさか。


「素晴らしい力を持ってるじゃないか、ユキヒロくん! こんなに強大な魔力、初めて味わったよ!」


 壊れた壁の向こうで、男が哄笑している。

 その体から、先ほどとは比べ物にならない魔力が溢れ出していた。


 ――俺と、同じ魔力。


「コピー……そういう事かよ」


 俺は血を拭い、立ち上がる。


「どういう原理でそのスキルを身につけたのかは知らんが……俺の力をコピーしたってことは、大体わかった」


 過去に同じようなスキルを持った魔物と戦ったことがある。

 その魔物は、ジンやアリサの魔法やスキルをコピーして、ストックとしていつでも扱えた。


 つまり――もし奴がそれと同じスキルを使えるなら。

 俺のスキルも、コピーされた。


「じゃあ、試してみようか――伏魔天ッ!」


 男が俺の必殺スキルの名を叫んだ瞬間。

 男の口から、大量の血が噴き出した。


「ゴホッ……ゲホッ! な、何だ……これ……!」


「俺のスキルを使おうとしたな?」


 俺は冷たく笑った。


「残念だったな。俺のスキルは、俺だけが扱えるユニークスキルだ。そんな簡単に他人が扱えてたまるかよ」


「ユニーク……スキル……だと……?」


 男が膝をつく。

 だが、その目は――まだ諦めていない。


 ――なら。


「本当はな、少しだけ痛めつけて警察に突き出すつもりだった」


 俺はエルドリスを構え直す。

 仲間たちが、俺を見て息を呑んでいるのがわかった。


 広の不安そうな顔。

 アリサの震える瞳。

 セシルスの警戒した表情。

 ジンの困惑した視線。


 そんな状況の中で――俺は、笑っていた。


「でももうそれもやめだ。テメェを半殺しにして、再起不能にしてやるよ」


 もういい。

 勇者の肩書きなんて、捨ててやる。

 もう疲れた。周りの世間の目を気にして生きるのが。


 俺は俺のためだけに――いや、違う。

 この仲間たちを守る。ただそれだけのために。

 それを邪魔する奴らは、どんなヤツだろうと容赦しねぇ。


「第2ラウンドと行こうじゃねえか――覚悟しろよ」


 俺の体から、紅い魔力が溢れ出す。

 街に勇者の力が解き放たれた。

 

めっちゃ久しぶりの投稿で申し訳ないです。

ストック自体はあったのですが、投稿する時間が無くて投稿できてませんでした。

次の投稿は早め更新する予定ですのでよろしくお願いします!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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