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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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迫り来る脅威―それは魔王級

「お前、何のために俺を襲う? 何が目的だ」


 鋼と鋼がぶつかり合い、耳を裂くような甲高い金属音が響く。互いの刃は火花を散らし、激しく軋みながら拮抗する。俺は額に汗を浮かべつつ、目の前の敵を射抜くように睨みつけて問いを投げた。

 だが、返ってきたのは嘲笑だった。男は口角をゆっくりと吊り上げ、不敵な笑みを深める。


「んなもん、教えるわけないでしょ」


 銀の髪が月光のように揺れ、その瞬間、押し込むような力で俺の短剣が弾き飛ばされた。

 ――コイツッ! なんて膂力だ……!

 後退りしながらも、俺は虚空に指を伸ばし、もう一本の短剣を引き抜く。闇を裂くように現れた刃を握り直し、再び構えた。そこから先は嵐のような斬り合い。火花が夜空に散弾のように飛び交い、その眩い光景に、周囲の一般人の誰かが呟いた。


「映画の撮影……か?」


 スマホを構えながら戦いを撮影する声。そんな余裕があるはずもないのに。

「逃げろ! 死ぬぞ!」

 俺は必死に怒鳴るが、群衆は呆気に取られたように立ち尽くしている。無防備な視線がこちらに突き刺さる。

 ――ならば仕方ない!


 迫る刃を辛うじて躱し、俺は銀髪の男の体を掴み、そのまま怪力で空へ投げ飛ばした。筋肉が悲鳴を上げるほどに力を込め、地を割る脚力で追撃。空中で距離を詰めた刹那、視界が閃光に裂け、X字の激痛が胸元を走った。


「は……?」


 気づけば背後。銀髪の男が影のように立ち、耳元に冷たい吐息を落とす。


「――世界を救った勇者が、この程度ね」


 皮膚を突き破るような死の予感が背筋を這い上がる。喉が渇き、心臓が鼓動を早めた。

 ――でも、俺はただの勇者じゃない。魔王を討ち、世界を救った勇者だ。こんな所で倒れてたまるか!


 刃が背を貫こうとした、その瞬間。虚空が裂け、禍々しい光が迸った。目の前に口を開くのは、俺ですら見たことのないほど邪悪なオーラを放つゲート。銀髪の男の動きがピタリと止まる。

 ――チャンスだ!

 俺は反射的に蹴りを放ち、銀髪の男の体を地面へ叩き落とした。


「肝心な時に限って……ゲートかよ!」


 虚空から魔石を取り出そうとした刹那、赤紫色の輝きが爆ぜる。眩しすぎる光が視界を焼き、ゲートから這い出たのは禍々しい巨大な手。続いて闘牛を思わせる恐怖の顔、そして街を覆わんばかりの巨躯――。

 大気を震わせる魔力に呼応し、周囲のビルの窓ガラスが一斉に砕け散った。


 ……コイツ。あの魔神よりも、はるかに格上だ。


「なんだよ、あれ……」


 銀髪の男でさえ表情を変えずに呟く。その背後で市民たちはようやく我に返り、悲鳴とともに逃げ惑い始めた。遅すぎる。だが今は結界を張るしかない。

 俺は魔石を握り潰し、飛散した紅の欠片を大気へ解き放つ。瞬間、世界が裏返るように街全体が別空間へと転移し、一般人たちは外界へ押し出された。

 パラレルワールドの生成が完了したのを確認すると、俺は虚空からエルドリスを抜き放つ。


 咆哮が轟き渡る。魔物の咆哮は雷鳴の如く空気を震わせ、ビルの残骸を崩落させた。


「……仕方ない、すぐ終わらせる。伏魔天命――伏魔雷光!」


 ――


[スキル]伏魔雷光

 自身に宿る魔力をスピードと攻撃力だけに振り分け、全生物を圧倒するほどの強化を施す。

 強化される時間は30分その間に受けるダメージはなかったことにされる。

 そして、その効果は仲間にも付与できる。


 ――

 


 スキル発動と共に、俺の体を奔る魔力が一気に収束する。世界そのものが刹那、静止したかのように錯覚するほどの圧力。体内に満ちた力は暴風のように溢れ、血管を焼き尽くす。


 魔物は吠えながら斧を生成し、街を薙ぎ払う軌道で振り下ろす。大地と建物が無慈悲に粉砕される。

 俺は前傾姿勢で呼吸を整え、雷鳴と共に跳んだ。


「行くぞ!」


 一瞬で間合いを詰め、稲妻の速さでエルドリスを横薙ぎに振り抜く。硬質な肉を裂く手応え、返す刃でさらに深く刻む。容赦はない。だが――。


 違和感。

 魔物の瞳が爛々と輝き、俺と同等の速度で動き始める。背後に回り込む巨影。咄嗟にエルドリスを盾に掲げた瞬間、斧の衝撃が直撃した。


「――ッ!?」


 凄絶な一撃が全身を貫き、俺の体はビル群を穿ち、遠くの建物の壁に叩きつけられる。骨が軋み、肺が潰れるような衝撃。

 ――なんだコイツ……さっきまでとは別物……まさか!?


 視線の先、魔物は俺へ迫るのではなく、結界へと斧を叩きつけていた。


「アイツ……外に出ようとしてるのか!」


 鈍い轟音と共に、パラレルワールドがひび割れていく。外界に出られれば街は滅ぶ。俺は必死に立ち上がり、背後を取って斬り込むが――間に合わない。結界は粉々に砕け散り、ガラス片のように虚空へ散った。


「クソが!」


 俺の刃は奴の背を刻むが、手応えは虚しい。次の瞬間、斧が俺に振り下ろされる――。


「アイシクル・ブリザード!」


 聞き覚えのある声が大気を震わせ、瞬時に魔物の半身が氷像と化した。白銀の氷結が巨体を拘束し、冷気が街を覆う。


「この魔法……まさか!」


 視線の先、群衆の中に立つ影。その体からは膨大な魔力が放たれている。


「遅くなりました。私も援護させていただきます」


「セシルス!!」


 そこに立っていたのは、かつて魔王を共に討ち果たした仲間――勇者パーティの司令塔、セシルスだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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