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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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最後の切り札

「こっから全力で行かせてもらう」


 魔神は魔力の塊を凝縮させている。

 その巨大な魔力の収束を目の前にしても、俺は逃げることも、慌てることもしない……ただ、その光景に笑っていた。



伏魔天命ふくまてんめい

概要

その場にあるあらゆる魔力を自身に集約し、その力で身体を強化する。

そして“全ての魔力”とは、相手が纏っている魔力も含まれる。


スキル解放の感覚は単純。鍵を掛けられた鎖を外すように、緩めるだけでいい。



「これで粉微塵になって消え去れぇ! 人間ッ!」


 魔神は下卑た笑い声を上げながら、俺に向けて巨大な魔力の塊を振り下ろした。


「伏魔天命」


 俺がそう呟いた瞬間、この場に散らばる魔力が俺の体へと集約されていく。

 その対象は、結界を形成していたパラレルワールドの魔力、そして膨れ上がった魔神自身の魔力すらも――。

 一秒後、俺の頭上にあったはずの巨大な魔力の塊は、跡形もなく消滅していた。


「なんだとッ!?」


 俺は集めた魔力を全てエルドリスを握る右手に込める。

 ――エルドリス。俺が名付けたその勇者の剣は、持ち主の魔力量によって切れ味も耐久も攻撃力も変化する。

 この一帯の魔力を取り込んだ今の俺にとって、この剣に敵うものは存在しない。


「調子に乗るなよ! 魔力が尽きたなら、拳で貴様を殺すのみ!」


 魔力がなくとも凄まじい速さで迫る魔神。――だが、それは俺とエルドリスには好都合だった。

 振り下ろされた拳――しかし、それが俺の目の前で止まる。

 すでに俺の剣は奴の心臓たる魔石を貫いていたからだ。


「ば、馬鹿……な……」


 そう言い残すと、魔神は塵となって消滅した。

 崩れ落ちた肉体から、ひとつの魔石が転がり落ちる。

 気がつけば結界は消え、俺は人々の行き交う道の真ん中で、魔石を握りしめていた。


「これで……ひと段落ついたかな」


 それを拾い上げた俺は、ふと夜空を見上げた。星が綺麗に輝いていた。



〈アリサ視点〉


 私がジンとアイラと共に転移魔法の魔法陣を潜ろうとしたその時――。

 どこからか轟音が響いた。


 とっさにジンとアイラを見ると、アイラは臨戦態勢に入り、ジンは右腕から血を流していた。

 私は咄嗟にジンへ駆け寄る前に、防御魔法を展開する。


「あーあ、頭に命中しなかったか……」


 闇の中から男の声が響いた。

 アイラは血相を変えて辺りを見渡す。


「誰だ!」


 声のした闇の中から、銀髪の男が一人現れる。


「へぇー、あの人の言う通り、この世界に魔法なんて本当にあるんだ……」


 男の手には“拳銃”と呼ばれるもの。この世界ではドラマでしか見たことがない代物だ。

 さらにその背には、よく磨かれた刀が背負われていた。


「今からお前らを殺すけど、恨まないでね? これ、命令だからさ」


 気だるげな声を吐いた男は、魔法による身体強化すら使わず、凄まじい速さでジンの背後に回り込む。

 黒く光る刃がジンの首筋に迫った。


「ジン!」


「調子に乗るな」


 ジンを助けたのは――剣を抜き放ったアイラだった。

 刀身と刀身がぶつかり合い、火花が散る。


「――嘘っ……! なんでアイラの剣の攻撃を、この世界の刀が受け止められるの!?」


 私は知っている。この世界の物は、あの世界に比べて耐久性が数段劣ることを。

 あの世界の武器は魔物の素材や純度100%の鉱石を使い、強度を高めている。

 なのに今、この男はアイラの攻撃を受け止めている――。


 それでもアイラは焦らなかった。


「剣術に自信がある顔をしているな? だが、私には勝てん」


 刀身に魔力を込め、人の速さを超える剣速で男の刀を弾き返す。

 そして隙を突き、男の胴を斬り払おうとする――が、男は左手の拳銃を撃った。


「私を舐めるな」


 アイラは放たれた銃弾を真っ二つに斬り、すぐに男の背後を取る。


「マジかよ……やっぱり化け物だな、異世界人って」


 刃が男の首に迫る――その瞬間、男は懐から何かを取り出した。


「アイラ! コイツ何か持ってる! 避けて!」


「――チッ」


「バレたか」


 直後、男のいた場所が爆発に包まれた。

 アイラは間一髪で回避し、私の隣へと着地する。

 土煙が晴れた頃には、男の姿はどこにもなかった。


「何だったんだ、今の……」


 驚くアイラを横目に、私はジンへ駆け寄り、回復魔法を施す。


「急いで魔法陣を通る――ッ!」


 アイラの足が止まる。私も隣に立ち、目を疑った。


「う、嘘……」


 異世界への転移魔法陣は破壊され、黒く焦げて使い物にならなくなっていた。


「さっきの奴といい……どうやらこの世界は、私たちをあの世界に返すつもりはないらしいな」


 アイラの言葉とともに、私の脳裏に浮かんだのは――さっき戦った銀髪の男と、ユキヒロの姿だった。


「……最悪」



〈別視点〉


「あーあ、無理無理。あんな化け物と真っ向勝負とか……リーダー、無茶振りやめてもらえます?」


 崩れたビルの中で、俺はリーダーに愚痴をこぼす。

 暗がりから現れたリーダーは、綺麗な金髪に整った顔立ち。白いアンダーシャツがよく似合っていた。


「仕方ないだろ。お得意様が“好条件”っていうセールを持ちかけてきたんだから」


「リーダー、セール好きですもんね」


「当たり前だろ。スーパーのお惣菜セールなんて最高じゃないか」


「……ですよね。それで? 仲間たちには伝えてあるんですか? ――“別世界からの侵略者”のこと」


「あぁ、言ってあるさ。だからこそ、我々“掃除屋”の出番なんだよ」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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