反撃のターン
「インビシブル・ボルト!」
俺はそう言って、聖書に集約された黒い稲妻を白い稲妻の槍に変え、幾千もの槍を魔獣へとぶつけた。
夜となった世界を白く輝かせるほどに眩しい槍は、魔獣の体を無数に突き刺す。
これで死ぬとは思っていないが、少しは手応えがあるといい……。
ビリビリと小さな稲妻が聖書の中を走っている。
俺はその中で、魔獣が立っていた土煙を凝視する。
「――来るか!」
ゼロに等しかった魔力が、一気に強大なものへと変わるのを俺は感じ取った。
そして黒い土煙を払い出てきたのは、わずかに傷を負った魔獣だった。
「あの攻撃を軽傷で済ませるのかよ!」
俺は咄嗟にエルドリスを虚空から取り出し、防御体勢で構えた。
その瞬間、突進してきた魔獣に体ごと空高く突き上げられる。
「今まで戦ってきた魔獣の中でも、三本指に入るくらいには手強いな」
宙を舞う俺を追うように、魔獣は空高く飛び上がる。
俺は剣を構えてカウンターを狙った。
魔獣は攻撃力もスピードもとてつもなく高い――だが、カウンターには弱い。
俺はエルドリスを片手に構え、反撃のタイミングを待つ。
魔獣の荒々しいオーラと巨体が俺に迫る。
「――今だ!」
体ギリギリまで差し迫った瞬間、俺は勢いよく空気を蹴った。
――瞬間、俺の速さは稲妻の如く。魔獣が口を開けると同時に剣を振り下ろした。
魔獣の体が縦真っ二つに切り裂かれるのを確認し、そのまま地面に着地する。
「これで終わったな」
ホッと息をつき、魔獣の魔石を回収しようと振り向いた――その瞬間だった。
とてつもない殺気が俺を襲う。
魔界の騎士やさっきの魔獣……いや、魔王すら凌ぐほどの凄まじい魔力が迫ってきていた。
俺が剣を構えた瞬間――そいつは目の前に立っていた。
「オマエか……お、お前が我を倒したのだな?」
人間の言葉を喋っているのは、人型の屈強な肉体に、殺気とけたたましい魔力を纏った化け物だった。
俺は本能的に距離を取る。
「お前……まさか」
魔力量が一気に膨れ上がっている。だが、この魔力の流れ……さっきの魔獣か?
「神化か……」
あの世界でも見ることがなかった魔神の姿。頬を冷や汗がツーッと伝う。
ジンから聞いたことがある……魔獣はごく稀に、進化を超えた生命体になることがあると。
そして、それを皆『神化』と呼んでいる、と……。
「なんでよりによって……」
この魔力量からして魔王級なのは間違いない。逃げるか?――いや、それはNOだ。
窮地に立たされた感覚なのに、思わず口角が上がってしまう。
「お前を殺す」
――その時、気づいた時には魔神はすでに俺の間合いに入り込み、人型となった魔神の蹴りが目前に迫っていた。
すぐさま両腕をクロスさせる。
次の瞬間、重く速い衝撃が走り、俺は建物の壁に叩き込まれていた。
「速ぇ上に攻撃も重い……魔王級超えてんじゃねぇのか?」
壁から体を離し、俺は虚空からエルドリスと短剣を取り出し構える。
「やるな、今の攻撃を耐えるとは……やりごたえがありそうだ」
「こっちも本気になれる相手が出てきてくれて嬉しいよ」
一触即発の雰囲気の中、砂煙が俺と魔神の間に流れ込んだ瞬間、同時に地面を蹴り上げる。
俺の重い攻撃と魔神の攻撃が激突した。
その余波で地面が割れ、周囲の建物は跡形もなく消え去る。
「パワーもスピードも……俺より少し上か」
魔神の拳を短剣とエルドリスで防ぎ、力を込めて思い切り突き飛ばす。
――一瞬の隙をついて、魔神との間合いを取った。
「やるな」
魔神がそう言った瞬間、俺は持っていた短剣を投げ飛ばす。
それを囮に、反対方向から斬り込んだ。
「この程度で隙をついたと思い上がるなよ――人間」
魔神は投げた短剣を弾き、同時に振り下ろした剣を素手で掴んだ。
――そして、荒々しい魔力を纏い、俺の体を足蹴りで吹き飛ばす。
重い一撃に、俺はエルドリスを取り落としてしまった。
勢いよく吹き飛ばされたが、なんとか体勢を整え、次の攻撃に備える。
「遅い、お前は弱い」
「――ッ!?」
再び目で追えない速さで、魔神が目の前に現れる。
仕方ない……ここは!
「フィジカルブースト!」
唱えた瞬間、体に力が湧き上がる。
俺はそれを足と胴体に分散させ、拳を叩き込んでくる魔神へ拳をぶつけた。
拳と拳が激突し、凄まじい風と余波が生まれる。
俺の手の甲が裂け、そこから血が滲み出た。
「貴様は強い――だが、我よりは弱い!」
「そうだな……でもそれは真っ向から戦ったらの話だ。勇者が卑怯な戦法を使わないと思うなよ!」
俺は残った片手を虚空に突っ込み、短剣を取り出して魔神の腕を切り落とす。
一瞬の隙が生まれ、思い切り魔神を蹴り飛ばす。
急いでエルドリスを拾い、吹き飛ぶ魔神に接近。喉元に刃を突き立てようとした。
だが、魔神は体を捻り、回し蹴りを繰り出す。
――しかし俺はそれを感じ取り、虚空から短剣を取り出して魔神の足に突き刺した。
予想外の攻撃に魔神は隙を見せる。俺は喉元を刺そうとした――瞬間、魔神が甲高い雄叫びを上げた。
爆音の余波で俺の体は吹き飛ぶ。
「なんて奴だ……音で体を吹き飛ばすなんて聞いたことねぇぞ」
耳を押さえながら立ち上がると、すでに魔神の姿は消えていた。
――だが、空から凄まじい魔力が迫ってくるのを感じる。
視線を上げれば、魔神が巨大な魔力弾を溜めている姿があった。
「これを受けたら……重症どころか死ぬな」
足を動かそうとするが、右足はすでに使い物にならないほどボロボロだった。
「面白い……そっちがその気なら使ってやるよ。スキルを解放するしかないな!」
俺はこの時、初めてこの世界でスキルを解放した。
スキル――それは選ばれし者にしか与えられない、魔法とは別の力。
「――スキル解放だ!」
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