めんどくさい女神どっかいけ!
交番でジンと再会し、久しぶりに“元パーティ”が揃った翌朝。
あいかわらず我が家には、空気読まない魔法使い(アリサ)と、自由人の僧侶、そして元・幼なじみ(広)が所狭しと溢れていた。
俺は食パンをくわえながら、いつものように窓から外を眺めていた。
平和な朝。
そのはずだった。
「……ん?」
空気が揺れた。――“魔力”の気配。
「アリサ!」
「来てる!」
アリサが即座に立ち上がる。
ジンも椅子から転げ落ちつつも、気配を探知する。
玄関のチャイムが鳴ったかと思うと、ドアが爆風のように開いた。
「ばばーん☆ 女神ちゃん、推☆参!」
「出たなクソ女神!!!」
俺は思わずその言葉を発していた。
「はぁ!? 第一声がそれ!? 神様に向かってその態度何様!? 勇者様か!!!」
「その通りだ!!!」
「ぐぬぬぬぬぬ!」
現れたのは、金髪ツインテで悪趣味ファッションの、あの胡散臭い女神。
「……何の用だよ。今度はどんな災厄を落としてくれんだ?」
「いや~、ちょっとしたミスっていうかぁ~……派遣先間違えたかも~?」
「どういうことだよ!!!」
その瞬間――。
バキバキバキッ!!
窓の外に、ゲートが現れた。
現代の空に、亀裂のように黒い裂け目が広がっていく。
そしてそこから姿を現したのは――全身を甲冑で覆った、身の丈三メートルはある魔界騎士。
「“超級騎士種”……!? よりによって、それが来るのかよ!」
「ユキヒロ、あれ……やばいよ」
アリサの声が震えていた。
確かに。やばい。街が滅ぶレベルだ。
「広! 隠れてろ!」
「わ、わかった……でもあとで絶対説明だからね!! 保険の書類も回収しておく!」
勇者、僧侶、炎の魔女が玄関を飛び出す。
「こっちはもう隠してられねぇな……」
俺はポケットから“魔力石”を取り出し、空中に投げる。
「展開――《空間展開式・封魔結界》!!」
空気が光を帯び、周囲が異空間のように変わる。
これで、街への被害は抑えられる……かもしれん。
騎士は静かに、だが確実にこちらへと歩み寄ってきていた。
「ユキヒロ。任せて」
アリサが一歩、前へ出る。
「“炎の魔女”の本気、見せてあげる」
杖を持った右手を天へ、左手を前方に掲げ、詠唱を開始。
「焔よ、紅蓮に踊れ……灼き尽くすはこの身の意志。《フレア・デストラクション》!」
轟音とともに、紅蓮の柱が地面から立ち上がった。
炎が周囲の空気を焼き尽くし、魔界騎士を包み込む。
だが――。
「っ、まだ動いてる!?」
紅蓮の中から、巨体が歩み出る。
焦げ跡が付いているのに、ピンピンしてやがる……!
「クソっ、アリサ! 一旦引け!」
「うんっ!」
俺は短剣を虚空から抜いた。
そして――【跳ぶ】。
全身の筋肉に力を込め、空気を蹴る。
風圧を超える速度で、俺は巨体の胸元へと跳躍。
「――とっとと異世界に帰れ!」
渾身の一撃。回し蹴りが、魔界騎士の顔面に炸裂する。
ドガァァン!!!
その巨体が、数十メートル先のビルへと吹っ飛んだ。
衝撃でビルのガラスが砕け、騎士は建物の上階にめり込む。
「……ふぅ。身体、鈍ってねぇな」
だが、まだ終わりじゃない。
あいつはきっと、まだ動ける。
俺は虚空にある剣に手をかけた。短剣では足りない。
「やるしかねぇか――」
勇者の剣・エルドリス(自分で名付けた)の鞘に、指をかけたその時。
――風を切る音。
屋上から、誰かが落ちてきた。
だが、それは“落下”ではなく、“降臨”だった。
優雅に、軽やかに、銀の髪が宙を舞う。
そして。
「遅れてごめんなさい。まったく、ジンが迷子になるせいで……ユキヒロを危険な目に遭わせるなんて」
ビルの屋上から舞い降りたのは――アイラ。
剣士にして、俺たちの仲間。絶世の美女。銀の剣姫。
「アイラ……お前、もしかして――!」
「ええ、こっちの世界に来たの。貴方を、迎えに」
そう言って、彼女は美しい剣を抜いた。
「“紅蓮の魔女”も、“癒しの僧侶”も、揃っているなら――」
その瞳が鋭くなる。
「“勇者パーティ”、再結成ね。……ユキヒロ。共に、戦いましょう」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。
応援が次回更新の励みになります!




