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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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結局増える仲間

 ジンとの別れ際、俺はなんとなく振り返った。


「おい、ジン。今夜、野宿とかしてないだろうな?」


「ご冗談を。私は僧侶だぞ? 夜露に濡れたら風邪を引いてしまう」


「……ならいいけどよ。なんか不安なんだよな、お前」


「失敬な!」


 苦笑しながら手を振るジンを見送り、俺は帰路についた。


 ……そしてその夜。


「ただいまー……って、あれ?」


 玄関の前に、さっき別れたはずの金髪の僧侶が正座していた。


「……やぁ、ユキヒロ。ちょっとだけ……助けてくれないか?」


「何やってんだお前!?」


「いや、実は……泊まろうと思ったカプセルホテルが、“身分証明書が必要です”って言ってきて……」


「当たり前だろこの世界じゃ! ってか、あの住所の紙は!?」


「吹き飛んだ!」


「何があったんだよ!」


 とりあえずジンを部屋に上げると、広がキッチンから顔を出した。


「おかえりー。あら……また増えてない?」


「ごめん広……また仲間が来た」


「……ま、まぁ。イケメンだから許す!」


「基準そこかよ!」


 そんなこんなで、俺の部屋は再び、元・異世界メンバーで賑やかになった。



 次の日の朝。


 アリサがエプロン姿でキッチンに立ち、広がソファに座って書類をチェックし、ジンがラグの上で座禅を組んでいるという、なんとも言えない朝が始まった。


「……おいジン。なんで真顔で気を練ってるんだ」


「いや、こうしていると魔力の巡りがよくなって――」


「こっちの世界、魔力の概念ないからな?」


「なんと!? では、この“浄化の息吹”も意味が――」


「それただの深呼吸な」


 そして、アリサが配膳を終えると、全員で朝食。


「いただきます」


「感謝の儀式――いただきます」


「普通に食え」


 静かで、ちょっと騒がしい、俺たちの現実世界の朝。


 ……だが、その穏やかさは、長くは続かなかった。


 ジンが突然、持っていたスプーンを止めて、窓の外を睨んだ。


「……なあユキヒロ」


「ん?」


「外……おかしくないか?」


「は?」


 全員が窓の外を見る。


 そこには、歪んだ空気のようなものが、わずかに波打っていた。


 それはまるで――ゲートが、再びこの世界に“干渉”しているかのような。


「まさか……」


 俺は、スプーンを置き、立ち上がった。


「まだ、終わってなかったか……」


 アリサとジンが顔を見合わせる。


「……準備は、できてます」


「ふふ、また“世界の理”に逆らう冒険だな?」


 広だけが、呆れたように俺を見て言った。


「……ねぇ。今日こそ、普通の朝ごはんで終わるって言ったよね?」


「すまん、広。俺、もうちょっとだけ――勇者、やってくるわ」


 そう言って、俺たちは再び、現実と異世界が交わる“裂け目”へと、歩き出した。

 

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