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異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!  作者: 沢田美


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異世界帰りの勇者VS紅きドラゴン

「来るぞ」


「……そうっぽいね」


 ドラゴンが空を裂くように翼を広げ、その圧倒的な存在感とともに巨大な火球を吐き出してきた。咆哮のような風圧が周囲の空気を震わせる。


 火球は灼熱を帯びながらこちらに迫り、周囲の色彩を焼き尽くすような光で包んでいく。俺はすかさず後方のアリサへと視線を送った。


「アリサ、支援頼む」


「分かってる! ——って、それよりその目前の火球、どうにかしなさいよっ!」


「それもそうだな」


 皮肉を込めたような軽口を返しつつ、俺は虚空に手を伸ばし、アイテムボックスから短剣を引き抜く。


 ——瞬間。


 空気を裂いて投げた短剣は、火球の中心に突き刺さり、灼熱の核を貫く。その勢いは衝撃波となり、火球は空中で爆散。燃え盛る破片が流星のように散っていく。


 爆煙の向こうから、ドラゴンが突撃してくる。その金属のような鱗が夕焼けに照らされ、獣というよりも戦闘兵器に見えた。


「面白い」


 俺は笑みを浮かべ、両足に魔力を集中させた。大地を蹴り、重力を無視するかのような跳躍で空へ舞い上がる。


 同時に、ドラゴンが口元に炎を溜め、俺を焼き払おうと顎を大きく開いた。


「そう来るか——アリサ!」


 空中で声を張ると、すぐさま下方から返事が飛んだ。


「分かってる! ——フライング・ウィンド!」


 風魔法の力が空間を裂き、俺の体は風に乗って軌道を変える。ドラゴンの狙いは逸れ、放たれた灼熱のブレスは俺のいた空間を焼き尽くしただけに終わる。


 だが——終わりじゃない。


 ドラゴンはすぐさま長大な尻尾をしならせ、空中にいる俺に向けて鞭のように叩きつけてきた。


 迫る一撃を紙一重で避け、俺はドラゴンの胴体に飛び移る。剣を突き立て、がっちりとしがみついた。


 怒りと痛みの咆哮を上げ、ドラゴンは激しく空をのたうち回る。俺を振り落とそうと、あえて炎が湧き立つ溶岩のエリアへと向かって加速する。


「コイツ……俺ごと焼くつもりか!」


 地表でマグマが沸き立ち、灼熱の地獄が目前に迫る。だが俺は、それでも剣を離さない——。

 

 ※

 

「——ユキヒロッ!!?」


 マグマに呑まれる寸前、ユキヒロの姿が灼熱の中へと消えた。


 一瞬の静寂が訪れる。


 熱波が渦巻く空間に、ただ、ドラゴンの雄叫びだけが響いていた。


「そんな……うそ……!」


 私は声を押し殺した。視界が揺れて、涙が熱気と混ざって頬を伝う。


 だけど——。


「ユキヒロが……あんなんで死ぬはずない!」


 震える手で杖を構え、足元に魔法陣を展開する。込めるのは、これまでで最大の魔力。炎の属性を超越し、限界を超えて暴れる魔素を無理やり制御する。


「だって、あの人は……あの人は、魔王を倒して世界を救った勇者なんだから!」


 赤、青、緑——次々に変化する光が杖の先端に凝縮され、最終的に紫の光球へと収束する。


 私は叫ぶ。


「——《フレア・レイン・ファントム》!!」


 紫の巨大火球が扇状に広がり、咆哮するドラゴンへと襲いかかった。


 灼熱の空間に、さらに高熱の炎が降り注ぐ。ドラゴンの全身が紫炎に包まれ、断末魔のような鳴き声を上げた。


 やがて、炎が収まる。


 そこに残っていたのは、鱗が所々剥がれ、焦げ付き、巨体の一部が欠損したドラゴンだった。


「やった……の……?」


 一歩、二歩と足が前に出た。勝利の安堵が胸を満たしかけた——その時。


 ジュウ、と嫌な音が響く。


 ドラゴンの裂けた体が、炎のような光に包まれて……再生し始めた。


「そ、そんな……再生!? 嘘でしょ……っ」


 私は膝を折った。魔力も、気力も、ほとんど尽きかけている。


 ドラゴンは再び頭を持ち上げ、口元に膨大な魔力を集め始めた。真っ赤に光る口腔が、今まさにブレスを放たんとしている。


 もはや、避けられない。


「ごめん……ユキヒロ……」


 意識が白く染まったその刹那——


「相変わらず、あきらめ癖が治らないなお前は」


「……えっ?」


 聞き慣れた、優しくて、少し呆れたような声。


 次の瞬間、ドラゴンのブレスが放たれる。大地を焼き、天を裂くそれは、まさに死を告げる光だった。


 ——だが。


 その灼熱の奔流が、突然、音もなく消し飛んだ。


 一閃。


 まるで世界を裂いたかのような斬撃が、炎の奔流ごと空間を断ち切ったのだ。


 立っていた。


 私の前に、背中を向けて。


 全身に傷を負いながらも、確かな足取りで立つユキヒロの姿が——あった。


「ば、バカっ……心配したんだから……!」


「悪かったな。ちょっと、焼かれてきた」


 そう言って、彼はいつものように口元をゆるく歪めて笑い、虚空から剣を引き抜く。


 魔王を打ち倒したあのときと、まったく同じ構え。


「——ここからは、俺の反撃だ」


 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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