金髪美少女!初めての書店に遊びに来る!
二日目のバイトは、昨日よりも慣れた足取りで書店の扉をくぐった。
朝の静けさと本の香りが迎えてくれるのが、なんだか心地いい。
「おはよう、ユキヒロくん。昨日の評判、良かったよ」
倉本さんがコーヒーを片手に微笑む。
「ありがとうございます。……あ、これ差し入れです。駅前のパン屋で買ってきました」
「気が利くねえ。じゃあ、今日はレジも挑戦してみようか」
「はいっ、任せてください!」
異世界で“交易ギルド”の帳簿を手伝ってた俺を、なめてもらっちゃ困る。
多少の操作ミスはあっても、金銭のやり取りくらいは慣れてる。……たぶん。
※
午前中はひたすらレジ補助と問い合わせ対応。
俺が少しでも戸惑えば、すぐに倉本さんが後ろからフォローしてくれる。
「こういうときは、検索端末で“シリーズ名”から引くと早いよ」
「なるほど……あ、てことは“学園黙示録LOVE:Re”も同じ検索法で──」
「お、ラノベ強いね? やっぱり異世界帰還者?」
「……実は、ちょっと前まで似たような世界にいたことがあるんです」
「また謎発言きたなあ……面白いよ君」
そんな掛け合いも、少しずつ楽しくなってきていた。
※
昼下がり。ふと、入口の自動ドアが開く音がして、
そこに現れたのは、見慣れた金髪の少女——アリサだった。
「ユキヒロー! 来ちゃった♪」
「……えっ、なんで……?」
「だって様子が気になって……それに本屋さんって楽しそうだし! すごい数の“魔導書”……じゃなくて、“雑誌”? あと“おとなのふぁっしょん”て何!?」
「ちょ、待てアリサ。声がでかい……!」
店内にいたお客さんの何人かが、ちらちらとこちらを見ている。
そしてアリサは、まるで異世界の遺跡に迷い込んだような興奮を抑えきれない様子で、あちこちの棚を覗き始めた。
「あ、これが『少女漫画』ってやつね……ふむふむ、ヒロインが溺れたり階段から落ちたりするのが流行なの?」
「違う違う違う! それジャンルの偏りだから!」
止める間もなく、アリサは書店を探索し始めた。
そして——
「キャーッ!」
店の奥で、何かが崩れる音とともに悲鳴が上がった。
※
現場に駆けつけると、アリサが倒れた本棚の下でしゃがみ込んでいた。
上段の本がバランスを崩して、アリサの方に倒れかけたらしい。
あぁ、マジか……!
「フロート・グリッド」
俺は誰にも聞こえないように呟き、魔力を指先に集中させる。
空気中に見えない浮遊結界を展開し、本の落下速度を緩めた。
結果、アリサの頭の上を、本がふわっと滑るように落ちていく。
「だ、大丈夫か……!」
「うんっ! ちょっとびっくりしただけ!」
本人はけろりとしているけど、俺は冷や汗が止まらなかった。
つい、スキルを反射的に使ってしまった……でも、あれは本当に危なかったから、しょうがない。
倉本さんが駆けつけてきた。
「大丈夫? 彼女、怪我してない?」
「はい、奇跡的に……」
俺が曖昧に笑うと、倉本さんはアリサの方をちらりと見て、やれやれという顔で肩をすくめた。
「……ユキヒロくん、君の周りって賑やかだねぇ」
「……すみません、ほんとに」
「でも……なんか、羨ましいな」
そう言って笑った倉本さんの言葉は、不思議と心に残った。
※
帰り道。アリサと二人で並んで歩く。
「ごめんね、ユキヒロ。迷惑、かけちゃった?」
「……まぁ、正直ちょっとはな。でも……」
「でも?」
「……本、守れてよかったよ。異世界でも現実でも、“知識”ってやつは俺の宝だからさ」
アリサがふっと微笑む。
「私も、本屋さん、好きかも。あのね……“守るべきもの”って、こっちの世界にもちゃんとあるんだって、わかった気がするの」
※
家に帰ると、広が腕を組んで待っていた。
「お帰り。さて、アリサ。話は聞いたわよ?」
「ひゃっ……!? な、なんの話でしょう?」
「“魔導書”だの“おとなのふぁっしょん”だの……しっかり報告が来たのよ。今度から外出する時は、私に一言相談してからにして」
「は、はいっ! ごめんなさい……」
広の小言を受けるアリサを見て、俺は苦笑するしかなかった。
……にぎやかだな、俺の生活。
でも、きっとこれが——俺の“スローライフ”なんだ。
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