27 魔法使いエマの魔法の授業
僕たちが森の中にある魔法使いの集落へ行くと、小学三年生ぐらいの幼女が涙目で走ってきて僕に抱きついた。
「会いたかったのじゃナイト!」
「やあエマ、元気だったか?」
「元気だったかじゃないのじゃ。わらわを置いて日本とやらに帰ったからさみしかったのじゃ!」
「お、お兄ちゃんこの子は?」
「ああ、この子が魔法使いエマだ」
「わらわは大魔法使いエマなのじゃ!」と幼女は両手を腰に当てて胸を張る。三角帽子に黒のローブといういでたち。長い黒髪をツインテールにした美少女である。
「かわいい!」
僕は日本で魔王キヨハルが世界征服をもくろんでいる話をした。
「……ということでエマの力を借りたいんだ」
「任せろなのじゃ。キヨハルなんてわらわがやっつけてあげるのじゃ」
「ありがとう、頼もしいぜ」
エマの頭をポンポンすると、彼女は赤面して身をくねくねとくねり、照れた。
「あと、僕の妹のユキに魔法を教えてやってくれないか? たぶん素質はあると思うんだ」
「ナイトの妹ということはわらわの妹なのじゃ。魔法を教えてやるのじゃ」
「よろしくお願いします先生」
「早速やるのじゃ」
エマはほうきをユキに渡した。
「ほうき? 掃除でもするの?」
「違うのじゃ。このほうきを使って空を飛ぶのじゃ。まず先生であるわらわがお手本を見せてやるのじゃ」
エマはほうきにまたがった。ユキも真似をする。
「そして。こう唱えるのじゃ。アイキャンフライ!」
するとエマのほうきがゆっくりと浮上した。……と思ったら、急に叫びだした。
「痛い! 痛い! 痛いのじゃあああああああ!」
ほうきから押して股間を押させ、のたうちまわる。
「先生、大丈夫?」
「ほうきの柄がおまたに食い込んで痛かったのじゃ! わらわとしたことが、クッションを挟むのを忘れていたのじゃ!」
「あははは、相変わらずおっちょこちょいだなあ」と僕は笑った。
「空を飛ぶのはやめなのじゃ! 次は火炎魔法を教えるのじゃ」
「火炎魔法? それは戦闘に直接役立つね。よろしくお願いします先生」
「まずこうやって構えるのじゃ」
「こう?」
「違うのじゃ。もっと腰を落として、こうなのじゃ」
「こう、かな?」
「そんな感じでいいのじゃ。そして、こう唱えるのじゃ。ファイア!」
するとエマの手から火の玉が出た。
「すごい! 私もやってみるね。ファイア!」
ユキがエマの真似をして唱えると、驚くべきことに、エマよりも巨大な火の玉が出て、家を一軒、消し炭にした。
「わああああああ! わらわの家が消し炭になってしまったのじゃ!」
「ご、ごごご、ごめんなさい! こんなに勢いよく出るとは思ってなかったから」
「まあいいのじゃ。それよりもすごい魔力なのじゃ。わらわを超えるほどなのじゃ。さすがナイトの妹なのじゃ」
僕たちはエマも含めた5人で、今度は王都へ向かった。
「お兄ちゃん、王都には誰がいるの?」
「王都には僕と一緒に魔王を倒した仲間の聖女がいるんだ。