25 ママの過去が明らかになる
車で走っている。東京から千葉県に向かっているのだ。車内にいるのは、僕の家族プラス朝霧の五人だ。僕は後部座席で折れた剣を握り締めている。
「この剣は、魔王を倒した剣なのに……」
「お兄ちゃん、元気出しなよ」
「そうよ、ナイト。男がこれぐらいのことで落ち込んでたらカッコ悪いわよ。ねえ、パパ?」と助手席のママが運転席のパパを見る。
「あ、ああ、そうだな。元気出せナイト。……ところで、話は変わるが、ママはなんで魔法ができるんだ? 俺はそんな話は聞いてないぞ」
「そうだよ。魔法が使えるなんて超かっこいいじゃん! なんで内緒にしてたの?」
パパとユキがママに詰め寄る。
「まぐれよ、まぐれ。ほほほほ……」
「ほほほほじゃないよママ! そんなんでごまかされるわけないじゃん!」
「それは、あのう……ごにょごにょ……」とママは言いよどむ。
「僕には何となく見当がつくぞ」と僕は言った。
ママがなぜ魔法を使えるのか? それについてずっと考えていたのだ。そして一つの結論が出た。僕はそれを口に出す。
「おそらく、ママは、この世界の人間じゃないんだ」
「え? この世界の人間じゃないって、それはどういうこと……?!」
「おそらく、ママは異世界人なんだ!」
「えええ! そうだったの!」
「驚愕であります!」
「そうなのかママ! 俺には東京出身と言ってたじゃないか!」とパパが叫ぶ。
「ばれちゃったみたいね。てへっ」とママは片目をつぶり舌を出した。
ママは自分の過去を話した。実はママは先代の勇者であり、ふらっと遊びにきた日本でパパと恋に落ちて結婚したのだ。
「だから僕が異世界に召喚され、ユキが回復魔法を使えたというわけか」
「よういうこと」
ニコリとママは笑う。
「そう言うことは結婚する前にちゃんと言ってほしかったぞ」とパパは苦言を呈した。
僕たちは無事千葉県の親戚の家に到着したのだが、そのころ東京はとんでもないことになっていた。モンスターたちが暴れまわり、ほぼ壊滅状態になっていたのだ。
まさに東京大パニックである。
モンスターたちを操っているのはキヨハルだ。メフィストによって強大な力を手に入れたキヨハルが魔王となって、世界征服をもくろんでいるのだ。
「お兄ちゃん、これからどうするの?」とユキが言った。
「どうするもこうするも、僕は負けたんだ。打つ手がない」
「しかし、このままだとキヨハルが世界を征服してしまうであります」と朝霧。
「世界を救えるのはお兄ちゃんだけだよ」
「うーむ、確かにあんな奴に支配された世界なんてやだな。だが僕の剣はへし折られたし、向こうはモンスターの大軍を引き連れている。戦力の差があまりにも大きすぎる……」
「もう一度異世界に行くのよ」とママが言った。
「異世界に? なにをしに?」
「決まってるじゃない。魔王キヨハルを倒す方法をみつけるためよ」
「行こう、お兄ちゃん! 異世界に!」
「うん、わかった!」
「行くであります!」
僕はキヨハルを倒す方法を探すために異世界に行くことにした。