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18 キヨハル登場

 国会の前までくると、そこにはたくさんの報道陣が詰めかけていた。スーツ姿の神代刑事の姿もあった。キリリとした顔の美人である。黒髪ボブで真面目そうな感じだ。


「神代刑事」


「ナイトくん。来てくれたのね」


「仕事だからね。それで、状況は?」


「国会の議事堂の中にモンスターが現れて建物を占拠しているの。中には総理をはじめ大臣たちが閉じ込められているわ。あなたに力で大臣たちを無事に救出して欲しい」


「了解。僕に任せて。ユキ、朝霧、行くぞ」


「ちょっと待ってお兄ちゃん」


「なんだユキ?」


「国会の前の報道陣に囲まれてる人、あれって俳優のキヨハルじゃない?」


「確かにそうでります。記者たちに向って何かしゃべっているであります」


 近づいてみると、報道陣に囲まれているのは確かに俳優の木村清春、通称キヨハルだった。


「父の木村宗太郎は、息子である俺の手で必ず救い出して見せます! この勇者キヨハルが!」


 そう熱く語るキヨハルはファンタジーの勇者みたいなコスプレをし、腰に剣を差していた。


「なんだありゃ? あんなコスプレみたいな恰好でモンスターと戦うつもりか?」と僕はつぶやいた。


「生で見ると案外小さいんだね、キヨハルって。プロフィールでは182㎝って書いてあったけど……」とユキが言った。


 キヨハルは報道陣に見守られながら国会の建物に入って行った。


「おっと、僕たちも行こう。仕事だからな」


 僕たちも国会の建物に入って行った。


 すると、入り口付近のところで、僕たちよりも先にはいいて行ったはずのキヨハルが座り込んでいた。


「ん? キヨハルが座り込んで何かしてるぞ? なにをしてるんだ?」


「あれって、もしかして薬物をやってるんじゃない?」


「映画とかで見たことがあるであります。あれはコカインであります」


「芸能人が麻薬中毒か。まあ、よくある話だわな」


 キヨハルは座り込んで、手の甲に載せた白い粉を片方の鼻の穴から吸い込んだ。そしてぶるりと体を痙攣させ。「きくぜ」とつぶやいた。


「おい、麻薬は体に良くないぞ」と僕はキヨハルに声をかけた。


「なんだお前たちは? 俺のファンか? サインなら断る。俺は今忙しいからな」と傲慢な態度。


「あれ? なんかテレビで見るのと全然印象が違う」とユキが言った。


「テレビに出るてるときは好青年を演じてるだけだったでありますね」


「なんだか幻滅しちゃったな。結構好きだったのに……」


「現実なんてそんなもんさ」と僕はユキを慰めた。


 キヨハルは立ち上がってよろよろと建物の奥へ歩いていく。


「おい、この中にはモンスターがいるんだぞ。危ないぞ」と僕は声をかけた。


「モンスター? そんなものこのキヨハル様が蹴散らしてやるさ。そしておやじを救出し、俺の人気がさらに上がるっていう筋書きだ」


 キヨハルは父親である木村総理を助けるのが目的ではなく、それによって自分の人気をあげることを目的としているのだ。


 さっさと先へ行ってしまうキヨハル。


「どうするでありますか? ナイトさん」


「放っておけばいいさ。僕たちは僕たちの仕事をするだけだ。建物内にいるモンスターをみつけて退治するんだ」


「あっお兄ちゃん、キヨハルがモンスターに遭遇したみたいだよ」


 ユキが指さした方を見ると、廊下の先でキヨハルがモンスターと対峙していた。相手はこん棒を持ったゴブリンだ。


「ゴブリンと戦うみたいだな。お手並み拝見とするか」


 僕たちが近づいていくと、キヨハルは剣を抜いていった。


「お前たち、手を出すなよ。こいつは俺の獲物だ」


「わかった。手は出さないよ。存分にやってくれ」と僕は言った。


 子供ほどの背丈の人型モンスター・ゴブリンがこん棒を振り上げてキヨハルに襲い掛かった。


「ふん、雑魚が。俺は人気俳優であり総理大臣の息子である木村清春だあああああああ! 頭が高いぃいいいいいい!」


「ぎゃぎゃぎゃ!」


 ごちんッ!


「ぎゃあああ!」


「あっ、キヨハルがやられたであります!」


「見せかけだけだったな」


 キヨハルはゴブリンにボコボコにされた。


「ごめん、すまん……勘弁してくれ……後生だ」


 うずくまるキヨハルに殴る蹴るの暴行をしたゴブリンは、それに飽きるとどこかに行ってしまった。


「大丈夫か?」と僕は声をかける。


 むくりと起き上がったキヨハルは叫んだ。


「お前たち、なぜ見ているだけで助けないんだ。僕の顔にあざができらたどうするんだ。映画やドラマの撮影があるんだぞ!」


「手を出すなって言ったのはそっちじゃないか」


「そうであります」


「うるさい! それは言葉のあやだ。困っている人がいたら助けなさいと習わなかったのか?!」


 ぶつくさと文句を言うキヨハル。


「私、こんな人をかっこいいと思ってたなんて……」と手で顔を覆うユキ。


 僕たちはキヨハルと行動を共にすることにして、先へ進んだ。


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