14 プールの河童、廊下の馬
河童のモンスターはプールに逃げ込んで水の中に飛び込んだ。
「河童が水の中に逃げたぞ!」
「水中で戦うしかないであります!」
「服のままでは水に入れないから水着を調達しよう!」
僕は瞬間移動で二人分の水着を調達した。
「これを着るんだ」
「了解であります!」
僕と朝霧は水着に着替えた。
「お、お前……!」
水着姿の朝霧を見て僕は驚いた。いままで服を着ていたから気づかなかったのだが、かなりスタイルのいい体だったのだ。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。理想的な体つきだ。ちなみに僕たちが身に着けているのはスクール水着だ。
「水の中に入って戦うであります」
「ちょっと待て、いきなり入ったら心臓発作を起こすかもしれない。きちんと準備体操をするんだ」
「確かにそうであります。準備体操をするであります」
僕たちは準備体操をした。その光景を水の中から河童が見ている。
跳躍の体操をすると、朝霧の胸がよく揺れた。僕は主w図鼻血が出そうになった。
「準備体操が終わったであります。これで河童のモンスターと戦えるであります」
しかし、僕たちがプールに入る前にすでに決着はついていた。プールの真ん中で河童はうつぶせになって浮かんでいたのだ。顔のあたりから大量の血が出ている。
「あれ? まだ戦ってないのに河童がもう死んでるであります! 不思議であります!」
僕には河童の死因がとても理解できた。準備体操をしている朝霧の姿に文字通り悩殺されて鼻血で出血多量になって死んだのだ。
「とにかく、河童は倒せた。これで5人のモンスターのうちの3人を倒したことになる」
「残りはふたりであります」
僕たちは服に着替えて校舎に入って行った。
すると、廊下に姿を現したのは頭がふたつある馬のモンスターだった。
「あっ! 馬のモンスターがいるであります!」
廊下の床には人間の死体が散らばっている。
「この死体を殺したのはこの馬のモンスターに違いないぞ!」
ひひーん、ひひーん!
「こっちに突っ込んでくるであります!」
「ひとまず逃げろ!」
僕たちは廊下を走って逃げた。双頭の馬のモンスターは僕たちを追ってくる。
「ど、どど、どうするでありますか?」
「僕にいいアイデアが思いついたぞ! これを持ってあそこの分かれ道を左に行くんだ。僕は右に進む」
「こ、これはニンジンでありますか? いったいどこから……?」
「とにかく、僕の作戦が成功したらこれであいつを倒せるはずだ!」
僕はアイテムボックスから出したニンジンの1本を朝霧に渡し、もう一本を自分がもった状態で走った。
ニンジンを目にして馬は走る速度を上げた。ニンジンは馬の大好物。それはモンスターの馬であっても同じなのだ。
僕たちは走って分かれ道に差し掛かった。
「ここで別れるぞ!」
「わかったであります!」
僕は右へ、朝霧は左へ進んだ。
すると、馬の双頭の右の頭は僕を追って右に進もうとし、左の頭は朝霧を追って左に進もうとした。その結果、馬の体は真ん中からべりべりと裂けて、死んだ。
「よし、勝ったぞ!」
「緻密な作戦による勝利であります」
「これで残るモンスターはあと一人だけだぞ!」
僕たちは校舎の中を進んだ。すると、どこからかピアノの音色が聞こえてきた。
「あれ? この旋律は……ショパンであります」
「こんな時にピアノを弾いてるなんて変だな。よし、音楽室に行ってみよう」
僕たちは音楽室へ向かった。