10 ゴブリンキングとオリハルコン
「あれはゴブリンキングだ!」
「規格外の大きさであります!」
「こいつはボスだから、今まで戦ってきた雑魚ゴブリンとは別格の強さだぞ!」
「ハチの巣にしてやるであります!」
ががががががっ!
朝霧がアサルトライフルを撃ったが、ゴブリンキングには効かなかった。弾が当たったところをポリポリと掻いただけだ。
「自分のアサルトライフルがきかないであります! しからばこれはどうだ! 手りゅう弾攻撃!」
手りゅう弾のピンを抜き、ゴブリンキングに向かって投げつけた。ゴブリンキングの足元で激しい爆発が起きる。土煙が舞い上がり、視界が遮られた。
「やったでありますか……?」
しかし、砂煙が収まると、そこには無傷のゴブリンキングの姿があった。
「ひええええええ! 手りゅう弾を食らってもまるで蛙の面に無図のごとく全然効いてないであります! これはもう自分にはお手上げであります!」
「大丈夫だ。僕に任せろ!」
僕は剣を振った。ゴブリンキングは縦に真っ二つになって死んだ。
「す、すごいであります! 近代兵器をものともしないやつを、たった一撃で倒すなんて! 自分はナイトさんを尊敬するであります!」
「僕は異世界で魔王を倒したぐらいだからな。はっはっは」
胸を張って、笑った。
「あれ? ゴブリンキングの死体が消滅して、宝箱が現れたでありますよ!」
「ボスを倒すと、何らかのアイテムがドロップされることが多いんだ。何が入っているかな?」
僕は宝箱を開けた。その中に入っていたのは青灰色の金属の塊だった。
「これはなんでありますか? 鉄でありますか?」
「いや、これはオリハルコンだ。異世界にしかないはずの金属だぞ。ダンジョンやモンスターの出現と言い、このオリハルコンと言い、いったいこの世界で何が起こっているんだ?」
「このオリハルコンは何に使う金属でありますか?」
「加工して武器や防具を作るんだ。この僕の剣もオリハルコンでできている。だが、オリハルコンを加工できるのはドワーフの鍛冶屋だけなんだ」
オリハルコンを持ってコンビニに戻った。
「カレン、ダンジョンを攻略したぞ。これであの穴からモンスターが出て来ることはもない」
「助かったわ、ありがとう。これ、報酬の30万ね。店長から預かったの」
「サンキュー」
カレンから封筒に入ったお金を受け取り、お礼を言った。
コンビニの店内には、帽子を深くかぶった男がまだ立ち読みをしていたのだが、その人物に見覚えがあることに気が付いた。
「おい、お前!」と僕は声をかけた。
男は顔をあげて僕を見た。長身で瘦せていて眼の下に濃いくまがある。間違いない。ビルのモンスターを倒したときに、5階にいた怪しい配管工だ。
「なんであるか? 吾輩に何か用であるか?」
虫歯だらけの口で男はそう言った。
「お前はビルの5階にいた配管工だろ? あの時、怪しいと思って追いかけてら消えてたんだ」
「何のことかさっぱりわからないのである。きっと他人の空似なのである」
「そんなわけないだろ。確かにお前だ! 怪しすぎるぞ。お前は何者だ?! モンスターの出現と何か関係があるのか?」
「し、知らないのである! 吾輩はモンスターの出現と全然関係ないのである!」
怪しいの男は僕を突き飛ばしてコンビニから走り出て行った。
「あっ、待て!」
「ナイトさん、あいつは何者でありますか?」
「何者かはわからんが、とにかく怪しいやつなんだ! 捕まえるぞ!」
「了解であります!」
しかし急いでコンビニから走り出ると、怪しい男の姿は「煙のように消えてしまった。
「消えたであります!」
「逃げられたか! あいつ、絶対に怪しいぞ!」