Chapter1 †The fate begins to move† タイムリミット
少年と牧師の二人は教会に向かって歩いていた。
先ほどの店と教会は言うほど遠くもなかったが、日が沈むのは早い、彼らが店を出てしばらくしたら、辺りは薄暗くなっていた。
ノアとクルーネ牧師はしばらくなにも喋らず黙々と歩いていたが、別に仲が悪いなどと言うわけではないが、ノアからしてみれば話すことなどなにもないのだ。
そんな一方的な沈黙を破ったのはクルーネ牧師だった。
「ノア、自分の身は自分で守るんだぞ」
「え・・・」
あまりに唐突すぎるクルーネ牧師の言葉にノアは反応できなかった。
ノアはクルーネ牧師の顔を横目で覗き見るが、彼は人の良い笑顔でにこにこ笑っているのだけだ・・・
ノアは牧師から目を離し少々目線をあげ牧師の言葉の意味を考えてみる。
「・・・矛盾ですよ」
「何処がだ?」
ノアは右手を軽く握り、口元に当て、クルーネ牧師を見る。
「先程貴方は俺に、危険なことには足を突っ込むな、と仰いましたよね?」
「あぁ」
「しかし、自分の身を守れ、は俺が危険を犯すといっている様なものでしょ?」
ノアとクルーネ牧師はしばらくお互いを見ていたが、クルーネ牧師が先に視線をはずした。
「少し違うな」
「・・・?」
ノアはクルーネ牧師を見たまま眉間に少しシワを寄せる。
「身を守れというのは危険なことに巻き込まれてからの手段だ」
「・・・だから、俺に危険が起きると言いたいのでしょう?」
「・・・」
「やはり矛盾ですよ、足を突っ込むな、と言うのならば俺が危険なことに巻き込まれる可能性を否定すべきです」
言い終わるとノアはまた前を向き歩く。
またしても沈黙、しかし今度は一方的な沈黙ではなかった。
ノアはクルーネ牧師の次の言葉を待つ。
「たまには矛盾も悪くないぞ?」
そう言うと彼はまたニッと笑う。
しかし、ノアは自分が待っていた答えとは違うものがかえってきた気がして少し不満そうな顔をした。
「仮にも神の言葉を聞く身でしょ?」
「ははっ、それもそうだな」
クルーネ牧師はわざとらしく声をたてて笑った。
ノアはさっき来た道と同じ道を歩いている。
レンガの通りがところどこ街灯に照らされているせいか、来たときとは違う道を通っている錯覚に堕ちる。店を出てからどれだけ歩いただろうか、通り沿いに大きな建物が見えてくる。
目的地のアルマ修道院だ。
高い壁に囲まれ、正面には立派な門があり、ミサの時間以外この門は大抵閉じている。
それ以外に用があるものは、門の隣にあるベルがついた小さな扉から出入りする。
門の方は当然のこと、いつもならこの小さな扉にも鍵が掛かっているはずだ。
しかし、今日は違っていた、小さな扉の方が開けっぱなしなだけなら、放浪牧師を迎えるため・・・と説明がつくのだが。
「何かあったんですかね?」
「・・・」
見上げる高さもの立派な門が大きく開いたままだった。
しかも門の前に誰かいるわけでもなく、人気もない。
「・・・ノア、私はシスターたちのところへ行ってくる」
そう言うと、クルーネ牧師は開きぱなしにされている門の中へ消えていく、きっとマザーアーリエスの部屋へ行ったのだろう。
マザーアーリエスはシスターたちをまとめている女性だ。
この教会の奥にはシスターたちが寝泊まりしている建物がある、マザーアーリエスの部屋もそこだ。
ノアはその場に一人取り残される。
「・・・さて」
ノアは開いたままになっている門を見上げる。
ゴンッ・・・リンゴォォォォン―――――
教会のほうから大きな鐘の音が聞こえる。
教会の鐘のねだろうが、なんだか音が変だ。
「・・・」
ノアは門の奥を見つめる、門の向こう側、大きな庭が広がっていてここからでは教会の鐘を確認することはできない。
音は確かに聞こえたが、こんな時間に鐘がなるはずが無い。
何時も見ているの教会のはずなのだが、なんだか礼拝堂までの距離がいつもより遠い気がした。
(なんだか妙な気分だ)
ノアは視界が少々ゆがんで見えた・・・くらくらする。
(とにかく鐘つき堂にいってみるか・・・)
ノアはそのまま門をくぐりぬけ鐘突き塔へと向かう。
交差する足音が
誘う時をつれて
今叫んだとしても
すべて鐘の音に
飲み込まれても・・・・
・・・ちょっと分かりにくい内容になってしまったかもしれない・・・
さて、やっとファンタジー(?)らしい展開に持ち込めそう^^
今後ともご支援よろしくおねがいします♪
著者 イブノア