Chapter1 †The fate begins to move† 羽の行方
美しい一羽のかごの鳥。
外に向かって必死に叫んでる。
何で鳴いてるのかなんて解るわけもなく・・・
ある人が訊けば「出して」と鳴いてる。
ある人が訊けば「餌をくれ」と鳴いてる。
その鳥にも負けない高い声。
賑やかな子供の声、無邪気な子供の声・・・
子供は退屈が嫌い。
いつも新しい玩具捜して回ってる。
そんな双子の目に留まる、一羽の哀れなかごの鳥。
兄はかごの扉を開けて・・・潰れてしまうのではないかと思うほど強く握りしめる。
隣にいる妹の手には、きれいな装飾のついた園芸バサミ。
(僕ら知ってるよ、鳥さんがナく理由)
(私達知ってるわ、鳥さんのナキ声を止める方法)
ゆっくりとした動きで少年は手を開く。
鳥は手の中から逃げ出そうと必死にもがいてる。
でも少年の指はしっかりと鳥の羽を押さえてる・・・
(希望があるから叫ぶんだ)
(希望があるから嘆くのよ)
ジョキ・・・ジキ・・・
さすが、固い茎を切るハサミだけあって切れ味は抜群だった。
ハラハラと哀れな鳥の羽が地面に落ちる。
「ピッ・・・ピヒ・・・」
哀れな鳥の鳴き声はどんどん小さくなっていく。
少女が器用に上羽ねだけを切り落とすから、鳥が死ぬことはない。
ただ・・・・・・
「・・・」
鳥の鳴き声はもうしない、でも死んだ訳じゃない。
(羽があるから、自分の状況を変えようとして叫ぶんだ)
(私達は鳥さんのナク理由を消してあげたのよ)
少年の手の中には見るも無惨な鳥の姿。
美しかった羽は切り取られ、飛ぶこと等到底できない・・・
少年は無惨な鳥を両手で握ると、自分の手ごと鳥かごに突っ込んで両手を広げる。
無惨な鳥は飛ぶことができず少年の手から下に落ちる。
「・・・」
さっきまで鳴いていた鳥はもう鳴かない。
ただただ、動かず横たわっている。
(良かったね鳥さん、もう叫ばずにすむよ?)
(良かったね鳥さん、もうナカずにすむのよ?)
(僕(私)たちがナク理由を無くしてたげたから・・・)
そっくりな双子の兄妹、兄は少々長い金髪を後ろで束ねている、目
は不可思議なオッドアイで漆黒の右目に、金色の左。
その少年のとなりに立っているのは少年と同じ金髪が肩まで延び、同じオッドアイでこちらは金色の
右目に、漆黒の左目。
「ねぇ、アイボリー、僕らは鳥さんの不満をなくしてあげたんだからいい子だよ
ね?」
「うん、私達は鳥さんがナカナクテもいいようにしてあげたからいい子よエボリ
ー」
二人は顔を見合わせてくすくすと笑う。
哀れな鳥を横目に楽しそうに笑う。
「・・・エボリー様・・・アイボリー様・・・」
楽しそうに笑っている二人に、今にも消えてしまいそうな声が投げかけられる。
屋敷のメイドだ、彼女は恐る恐るといった様子で二人に声を掛ける。
かわいそうなぐらいに、メイドの顔色は青く声が震えている。
彼女の目線の先にあるのは二人の姿とともに、かごの鳥だった。
「・・・なに?」
「・・・どうしたの?」
メイドが自分たちを恐れてている事は二人にも分かる。
分かっていていつもどおり振舞うのだ。
「お嬢様が・・・お呼びです・・・」
メイドはなんとか鳥かごから目線をはずそうとしている。
彼女が二人を怖がるのも無理のないこととだった。
昔二人の遊びに文句を言ったメイドがいた、そのメイドはもう屋敷にはいない。
詳しく言えばこの世にはいない。
「お嬢様が・・・」
「お嬢様ね・・・」
二人は確認するよう呟く・・・「お嬢様」
彼らの愛すべき主人。
愛すべき人。
忠誠を誓った御方。
「分かったよ」
「分かったわ」
二人はメイドに視線を集中させる。
「・・・っ」
メイドは蛇ににらまれたかえるのように固まっている。
声も出せずに口をパクパクさせている。
「この鳥さん・・・変えといてね?」
(壊れた玩具は要らないよ)
「羽のきれいな子にしてちょうだい?」
(その方が壊しがいがあるの)
二人は飛びっきりの笑顔を浮かべてメイドに注文する。
メイドは真っ青になっている顔に引きつった笑みを作り、必死に鳥かごから目をそらしていた。
「分かりました」
メイドは二人に向かって軽く頭を下げる。
頭を下げ、彼らが去っていくまで必死に耐える。
目をあわせてはならない、声を出してはいけない、息をしてはならない。
「行こうかアイボリー」
「行きましょうエボニー」
そういって二人は手をつなぎ歩き出す。
お辞儀をしているメイドの方へ・・・
(かわいそうだねアイボリー)
(本当ねエボニー)
二人は笑っていた、哀れなメイドを横目に・・・
((さぁ、行こう、お嬢様がお呼びだ))
今以上の幸せを知っているから
今以上のものを望む
今が一番の幸せだと分かれば
望むものなんて何も無いはずでしょ?
エボニー&アイボリーちゃん登場です^^
初登場でかなり印象に残っていれば嬉しいです♪
双子キャラというのは私のお気に入りなので、書いてて楽しい♪
著者 イブノア