Chapter1 †The fate begins to move† 雨の泣く音
雨が降る灰色の空
嫌な思い出があるわけでも無いが気分が沈むのは雨のムード効果なんだろうか。
ただ教会に規則的に列べられた椅子に座りながら色彩なステンドグラスを眺める。
外を見なくとも空は灰の色だろう。
聞こえるは雨の音、それのみしか音は届かない。
孤独を形にしたような空間、なのだろうか?
これが孤独であろうが無かろうが自分自身にとってどちらでもいいことが浮かぶ。
鮮やかなステンドグラスが曇りを見せる、光を湛えて輝く事すら出来ない。
雨はこんなにも暗い事を想像させる、それは人によって嬉々なものにも変わるだろうが。
俺にとっての雨とはただの日にちでしかない。
この修道院に捨てられてから何日・・・いや何年経っただろう?
年が分からないわけではない、ただ考えるのが面倒なだけだ。
ただ何もやる事がなく前に浮かぶステンドグラスを眺める。
「あの~、ノアさん?」
礼拝堂の開けられた扉から来たと思われる修道女の格好をした女性がこちらに歩いてきて止まり、俺の名前を呼んだ。
俺は振り返り、そのシスターの方を見る・・・・・・と、彼女の顔にある苦笑から嫌な事しか想像できなかった。
頭の中には嫌な予感というものしかなく微かに眉間に皺がよった。
「何ですか?」
一応の確認のような感覚で話の用件を聞いてみる。
彼女もその事が分かっているのか、苦笑を顔に湛えたまま予想の言葉を口にした。
「牧師様を知りませんか?」
嫌な予感が的中した。
あからさまに嫌な顔をしてしまったのか、シスターの同情の目線が注がれた気がした。
そしてその事を僕に聞きに来るという事は・・・・・・探しに行って来てくれ、と受け取っていいのだろう。
この修道院の牧師は優しいと言われれば確かに優しい、自分自身を受け入れてくれたのもあの人である事は確かだ、そう、確かなのだが・・・その心優しい牧師様は・・・本当にこれで牧師と言っても良いのだろうかと思えるくらいに・・・・・・放浪癖がきついのだ。
「分かりました・・・探してきます」
椅子から立ち上がり扉へと向かう、その途中ですみませんと申し訳なさそうに頭を下げてくるシスター。
だが彼女が謝る意味は無いのだろう、何時もの事だから分かるが彼女達もくまなく捜したのだろう、だが何時も僕が捜すはめになる、そりゃー修道院内以外にも街中に居たりもするのだから彼女達が捜せる確率も少ないだろう。
だからこそ暇な時に時々街に行くノアの方が居場所が分かる確率は高い。
と言うより毎回捜しに行っているせいでなんとな~く居場所は分かるようになってしまった。
だから最近はこうやって捜してきてほしいと頼まれる事が前より多くなっている、それも悲しい事実だと感じる。
そして外へと足を踏み出す
泣いている
それでも悲鳴は聞こえない
耳に届くのは水が地を打つ音
やはり外は雨に陰った空が灰を作り出していた