Chapter2 †be a hypocrite† 答えは何処?
目の前で起こっていることはとても単純なことだと思う。
だが理解できなかった。
目の前の炎の意味が、燃えている焔の意味が。
修道院の中に居たはずの人々の姿は群れの中にも見えはしない、それがより一層自分の中の不安を煽る。
何処かに避難しているのではないか?怪我を負って病院に運ばれたのではないか?
怪我を負っていても生きているのならまだましだ、自分の中ではそれ以上に最悪な考えが渦巻く。
何処かで生きている、その思考回路をもうひとつの考えが侵食していく。
だからこそその考えを止めるための証拠を手に入れるために傍に居た男の肩をつかみ質問を投げかける。
「誰か修道院から運ばれてきませんでしたか!!修道院の人は何処に――」
「ちょっと待て!ちょっとは落ち着け坊主!」
肩を掴まれ質問を投げかけられた男は驚きはしたものの、すぐに切羽詰ったノアを見て落ち着かせようとする。
その言葉を聞いて少しは落ち着いたノアは男の肩から手を離し俯く。
「俺の知る限りじゃ誰も中からは運ばれてきてねーな。お前ここの関係者かなんか―――」
男はノアの求めていた答え以外にも他に何か喋っていた。
だがノアの頭にそんな言葉は届きはしなかった。
中から出てきていないのなら教会の中の人々は何処へ行った?クルーネ牧師は?マザーアーリエスは?他のシスターは?―――修道院に居た皆は?
男から聞いた言葉は救いにはならず、考えを絶望へ近づけるものにしかならなかった。
周りの音から遮断されて他の世界に居る感覚、いっそのことこの出来事自体が嘘でいてくれたら良いのに。
すべての音が聞こえない世界でアシュレイの声だけが聞こえた気がした、耳からではなくいつものように頭へと・・・。
まあまあの距離がある中、周りが騒がしい中、そのアシュレイの声が頭の中に響いてくる。
何の音も聞こえないこの世界中で、アシュレイの悲痛の鳴くような声が頭に響く。
それによってノアは顔を上げると人の群れを掻き分けてアシュレイの下へ向かった。
背後では男の声が聞こえた気がするがどうでもよかった。
さっきは無我夢中で進んでいたせいかあまり気づかなかったが人だかりは以外にも大きかった。
ようやく人だかりを抜けアシュレイの下へと向かった。
「アシュレイ!!」
ひざを突きうなだれるように俯いたアシュレイの傍へよるとノアもかがんで彼女の様子を伺った。
さっきの声に反応して顔を上げたが、その目元は赤く染まり先ほどまで泣いていたことを表している。
≪ノア・・・修道院・・・は?≫
「・・まだ・・・分からない」
何拍かおいたノアの答えにアシュレイは瞳を歪める。
確実な答えはなかった、まだそう思っていたかった。
黒にちかいとしても、黒にちかい灰色ならばまだ白があると信じての言葉。
だが今の状況をどうするか・・・。
今までの帰る場所が燃えて頼る人間も見当たらない、そうなるとどうするか・・・。
三人組のところに一度帰るか・・・、それとも少しの間でも過ごす場世を探すか・・・。
最終的にたどり着いた考えはあの三人の所へ戻ることだ。
寝泊りするところはどうにか探すことができるだろう、そう思って今はあの男に真相を問いただしたかった。
「アシュレイ、一度あの三人の所へ戻ろう・・・。あの男が真相を知っているかもしれない」
考えがまとまったノアはアシュレイへと考えを告げるように次の行動を告げる。
アシュレイの顔は一瞬歪んだが声も出さずに頷き立った。
俺たちはさっき歩いてきた道を逆にたどり、あの三人と一人の男が居るところへと向かった。
あの男が修道院の人々の行方を知らなくても真相は知っているだろう。
真相だけでも知っておくべきだ。
たとえそれが灰色を黒に染めたとしても、黒が白を消してしまっても・・・知らなければならないと思ったから。
真実を・・・真実の中になにがあるのか。
真実が希望とは限らない
それは誰でも知っている
嘘が絶望とは限らない
それも常識
ならば 嘘は希望? 真実は絶望?
嘘と真の違い それは何?