Chapter2 †be a hypocrite† 目的地はお決まりですか?
《教えてほしいの、知っていることなら何でも良いから》
五人はそれぞれ向かい合っていた、お互いに信用しているわけではなく、いまだ警戒している。
どうやら、今すぐ戦う意思はないように見える。
「知っていることって、どうして貴方の声が聞こえるか、ということですね?」
真ん中に立っている少年だ、見た目は少年と取れたが、口調と声はあからさまに女のものだった。
「アンってば、せっかく男装してるのに、口調があれじゃーね」
「バレバレよね」
両サイドの子供はお互いに顔を見合わせて「ねー」と相槌を打ち合っている。
今まで目がなれていなかったせいと、焦っていたせいでぼやけていた二人の焦点が合い始めた。
両サイドの子供は兄妹だろうか、容姿が似ていた。
その間に立っている少年・・・基男装しているらしい少女は話の流れから言って「アン」だろう。
「アンさんですよね・・・どうしてこんなところに居たんですか」
ノアは、相手がどのような人間か分からないので身長に言葉を選んでいた。
さっき逃げていた男に銃を向けていたことから考えると、男の仲間ではないと思われるが、完全に信用するにはまだ情報が少なすぎる。
ノアの言葉を聞きアンは「まぁ」と声を上げ、手を口元に当てた。
その動作はあまりにも自然に優雅で、作っているわけではないようだ。
「どうして私の名前を知っているのですか?」
アンは大きく目を見開き、本当に驚いた、といわんばかりにノアとアシュレイを交互に見る。
しかし、それ以外の四人はぽかんと口を開けてしまう。
周りの反応を見たアンはさらに困ったと首をかしげた。
「アンってば、本当に気づいてないみたいだねアイボリー・・・」
「そうね、本当に気づいてないみたいねエボニー・・・」
両サイドの子供、片方の男の子が「エボニー」、女のこの方が「アイボリー」だろう。
双子は分かりやすく語尾にお互いの名前を呼んでいた。
エボニーとアイボリーは半分あきれた、という表情で間に立っているアンを見上げる。
アンは未だに首をかしげてうなっている。
「さっきそこの二人が名前を出していたので、そうではないかと思ったのですが・・・」
彼女の反応からして間違いではなさそうだが。
そこでやっとアンは気づいたようで「あー」と細かくうなずき、両サイドの二人を見た。
「何をやっているのです、エボニー、アイボリー、名前を教えてどうするのですか」
アンは不満そうに腕を組み眉をひそめたが、二人はそんなことまったく気にしていない様子だった。
エボニーは人差し指を立てながら、アイボリーは腕を後ろで組みながらアンの顔を覗き込んだ。
「女だってばれた時点でアウトだよアン」
「それに、私達だってもう名前がばれちゃってるわ」
エボニーとアイボリーは二人で話を完結させてしまう。
二人の会話を聞いてアンは暫く中を仰いだ後もう一度ゆっくりと首をかしげた。
「それなら、名前を教えていないのはそこの子だけですね」
ノアは自分のことを言われているのだと気づくと、丁寧に頭を下げた。
「俺はノアです」
ノアの挨拶は短いものであったが、今はこれで十分だった。
アンも満足したようにうなづいた。
「それで、どうして声が聞こえるか、という話でしたよね」
アンと言う少女は少々抜けているところがあるものの、話はしっかり聞いていたようだ。
ノアとアシュレイは改めてアンに視線を集中させた。
彼女が何を口にするのか、二人は緊張していた。
「・・・残念ながら、わかりません」
アンの返事はあまりにもあっけないものだった。
初めてノア以外にアシュレイの声を聞き取れる人間に会えたのだから、何らかのヒントは得られると二人は期待していたのだろう。
「僕達だって始めてだよね、頭の中に声が聞こえるなんて」
「えぇ、耳をふさいでも聞こえるのは貴方の声だけ」
「でも、神のお告げは頭の中に聞こえるって言うよ、アイボリー」
「じゃあ、アシュレイは女神なのかしらね、エボニー」
エボニーとアイボリーは周りのことなどお構いなしに二人で会話に盛り上がる。
暫く立ち尽くしていたノアとアシュレイは息をもの「ハッ」と顔を見合わせた。
「修道院っ」《修道院っ!》
鐘突き塔の地下での爆発を彼らは自分自身の目で見た。
あの上は自分達の住んでいる修道院が建っている。
修道院は無事なのだろうか、先ほどの大きな爆発音が何なのかも気になる。
「修道院がどうかしました」
アンは不思議そうに首をかしげている、二人を見ている。
ノアとアシュレイは顔を見合わせ気を失っている男を見た・・・どうやらまだおきそうに無い。
《ごめんなさいアン、私達行かなきゃいけないところがあるの》
アシュレイはアンのまっすぐと見つめ意思を伝える。
「待って、この男は貴方達が追っていたんじゃないの?」
アンは転がっている男に眼をやる。
「急いでるんだ・・・」
男のことも気になったが、それよりの修道院の存在が心配だった。
ノアの表情には不安と焦りが浮かんでいた、なんだか嫌な予感がしてくる。
その表情を見てアンはコクンとうなずいて見せた。
「行きなってさ」
「行っていいわよ」
エボニーとアイボリーは軽く手を振って送り出している。
ノアとアシュレイは二人とも同じ方に駆け出した・・・
急いで、走って
急いで、走って
急いで、走って
死に急ぐ