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ベランダで飼ってる小鳥

 ベランダで侯爵令嬢フレアは、遠く空を眺めながら戦争に行った婚約者の王太子に思いを馳せていた。

 最近寒くなってきたけれど、ベランダに出るととても温かい。


 -


 そんな彼女の記憶に浮かぶのは……



「最近お父様が大変苦労して手に入れてくれた小鳥が元気で、ネズミを一杯食べますの」

「ふぅん……」


 王宮のお茶会で、フレアと王太子は戦争に行く前のつかの間の交流の場を持っていた。

 でも、王太子はいつものようにそっけないように見える態度で、それなのにフレアはそれを気にせずに、自分の飼っている小鳥の事を話している。


「お友達は小鳥はベランダで飼ってはいけないというのですけれど、私の小鳥はむしろベランダで飼って念入りに日光に当てなければいけないのですわ」

「うん、鳥が……?」


 紅茶の方を見ていた王太子がわずかに首を傾げる。

 何か王太子の知っている鳥とは違ってかすかな違和感を感じた。


「それに羽をいっぱい落としてくれてありがたいですし」

「鳥が羽をいっぱい?」


 王太子が首を傾げる様子をみて、フレアは何が分からないのか分からないというように反対側に首を傾げてにっこりと微笑んだ。


「それで、最近、全然羽を落とさなくなって。そろそろかな? と思いましたがめでたく一度燃え尽きましたわ。ですから、期待していてください。安心していってらっしゃいませ」

「フレア、君はその……?」


 王太子が完全に鳥の奇妙な話に心が奪われたところで、


「恐れながら、お時間でございます」


 と侍従の声がかかった。


 王太子は婚約者との遠征する前の最後のお茶会を、完全に頭の中を疑問符で埋め尽くしながら終わった。

 そして、今更ながらに反省した。

 いくらこれから行く戦争に気を取られていたとはいえ、


『ちゃんと婚約者の話は聞こう』


 と。


 -


 フレアはベランダで、傍らの蘇った小鳥を見た。

 フェニックスは蘇った直後が一番生命力に溢れている。

 生命力の源である羽もいっぱい落とすのだ。


「さあ、元気に飛んでちょうだい。殿下の事は信じているけれど、あなたが行けばもっと早く帰ってきてくれるはずよ。殿下にはもうちゃんと話は通してあるから」

「クエエエエ!!!」


 フレアの言葉に、侯爵家のベランダで丁寧に飼われていたフェニックス(メス)は元気に鳴き声を上げた。


「頑張って羽をいっぱい落とすのよ」


 鮮やかな炎の尾を引いて、フェニックスは空へ舞い上がった。

 その姿にフレアは満足げに微笑む。

読んで下さってありがとうございました。

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また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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