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47魔法を解く

 ライフ・グリンベルは友人を助ける為に、石化回復ポーションを必要とした。

 店で買うとすれば、お金を払うのはライフになるだろう。


 リリー・フロマージュは友人の献身のお陰で命を取り留めた。

 もちろん命の価格としては大金50枚など安いものと言えるが。


 ローランド・サンロッドに関しては。

 まぁ余り汁で生き返った訳だが、これも命を助けられているのには違いない。


 三者三様、明後日の方向へ視線を漂わせて、矯太郎を見ようとしない。

「その反応は......このまま黙ってうやむやにしようかと考えていた反応だな?」


 そうは問屋が下ろすはずがない。

 メイが管理している金は、矯太郎が学生時代に遊ぶことなく、コツコツ稼いだ金だ。


 勉学とは別に矯太郎は自分の為の実験を繰り返していた。

 主に、美少女が合法的に掛けてくれるメガネの再現のためではあったのだが。

 やはり研究というものにはそれなりの金がかかるもので。

 家庭教師や、ちょっとした機構の修理等ではあったが、とにかく寝る間も惜しんで働いたお金である。


「誰に何割負担させればよいのか」

 腕組みをする矯太郎から感じる威圧感に、更なる冷や汗を隠しきれない三人。

 そこにメイの救いの言葉が投げかけられた。


「しかし、ライフ様は治療院を再建すべく目下奮闘中であり、いわばマイナスの状態です。リリー様とローランド様に関しても、騙され身ぐるみをはがされている状態なのですよ、今すぐにとはいきませんね」


 現状をしっかり説明されると、矯太郎も唸るしかない。

「むぅぅ、請求しにくいじゃないか!」

 頭を悩ます問題だ。


「ただし、ライフ様に関してはコカトリス討伐の報奨金より、折半したものからお支払いでかなり補填が効くのでは無いでしょうか?」

 メイの言葉に、それだ! とばかりに指を鳴らす矯太郎。


 だとしても残りの二人は、今は払う金もない。

二人は平民の出であることから、親をもってしても簡単に用意出来る金額では無さそうだ

 無くした武器をそろえるにも金が要るだろう。

 仕事を探すにして、スタートダッシュで(つまず)いた人間をクランという組織は受け入れてくれるのだろうか?

 彼らのモチベーションは復讐心に支えられている所が大きいだろうが、そこに借金を背負わせて水を差す事で、彼らの心を折る事もしたくはない。


 矯太郎は逡巡(しゅんじゅん)した後に、個人的な願望を叶える為に頭を切り替えた。

 未だに目を合わせない魔法使いの方に向かって話しかけてみたのだ。


「リリー殿……君の借金を帳消しにする代わりに、俺の研究を手伝ってくれないか?」



──この世界でライフに治癒師の知識を与えた際に、矯太郎は魔法という力についていまいち理解が出来なかった。

 それでも学園に行きさえすれば、知らぬ者へいちから教える機関なのだから何とかなるだろうという淡い期待は見事に外れる。

 学園に行っても理解が及ばないのは同じで、素養のあるものが決まった呪文を唱えると勝手に発動するといった、いたってシンプルなものだった。

 発動しない魔法に関しては、そのレベルに達していないとされており、矯太郎はただただ「素養無し」のレッテルを貼られるだけであった。


 しかし、科学者としての目線から見ても。

 何故発動するのかという疑問に対して、誰もがいちように「そういうもの」としてしか認識していないのがどうにも気がかりだったのだ。


 そこを紐解くのが科学者としての責務!

「今までなし崩しにされていた魔法という概念の研究を俺はやりたい」


 その熱意を込めて、リリー・フロマージュに打診してみたのだが。

 当のリリーは顔を真っ赤にして俯いている。

 そこにジト目をしたメイが割り込んで、矯太郎から彼女を守るように立ちふさがった。


「つまり借金のカタに、リリー様を肉奴隷にするつもりなのですね」

 当然の様に有らぬ疑いをかけられている様子だ。


「誤解だぞメイ、俺は純粋な気持ちでだな……」

「純粋に弄びたいというのですか」

「性欲などではない! 知的好奇心を満たすために……」

「へっへっへ、お前のここはどうなっているのか、しっかり観察してやるぜ、ですか?」

「違う! 俺は魔法について研究したいんだ!」

「魔法を使う性行為とは……マニアックですね」

「ええい、話にならん!!どうしてすぐそういう方に持っていこうとするのだ!」


 向こうに居た時分に、昼ドラ等を見せたのが良く無かったのかもしれないと、今更な反省をする矯太郎ではあったが。

 メイ越しにもう一度目的をリリーに伝える事にしたようだ。


「俺は研究者だ。みながウヤムヤに利用している魔法の力というものを研究すれば、今まで使えなかった者の助けになるかもしれない。それに仕組みが分かれば、効果的な使用法や、もっと強大な魔法を作ることも出来るかもしれない。その研究をするのに、君の力が必要だから頼んでいるんだ」


 矯太郎という人間はへそは曲がっていても、好奇心には真っ直ぐな人間なのだ。

 熱量というものが、一般の人間よりも遥かに高い。

 それは主にメガネへと向けられているようには思うが、その残り火でさえ、人の心を揺り動かすような大きな力になる程に。

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