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この恋は絶対に実らせるんだ!!

作者: 伊織

私はその時分かってしまった。あぁ、この子は恋をしたんだなって。


今日は高校の入学式である。私は必死に勉強をして、親友の幼馴染と同じ高校へ進学することができた。

私、足立若菜あだち わかなの親友で幼馴染の一色美穂いっしき みほは才色兼備であり、私の推しだ。ずっと近くで美穂を見ていたけれど、推すしかない。あんな人間他に見たことがない。

推しの姿はできればずっと見ていたいもの。だから、私は死に物狂いで勉強した。合格した時は夢かと思ったけど、隣で美穂が抱きついてきてこれは夢じゃないと確信した。あの時の美穂の顔すごく可愛かったな。ちなみに、美穂もたくさん勉強していた。もともと頭もいいけど、努力をしてさらに上を目指すなんて、本当私の推し最強すぎ。


入学式も無事に終わり、私たちは振り分けられたクラスの教室へと入った。私と美穂は同じクラスだった。全てのものに感謝をした。

クラスの雰囲気はいい感じ、美穂に注目が集まっているのもなんとなく分かる。まぁ、当然よね。だけど、クラスの中でもう1人注目を集めている人がいた。イケメンの男の子。確かにイケメンだけど、美穂には敵わない。やっぱり私に推しが1番である。

オリエンテーションが始まり、定番の自己紹介タイムだ。特に問題もなく進み、美穂とは違う、もう1人の注目の的の出番になっていた。美穂の自己紹介はちゃんと聞いた。録音もしようと思ったけど、ギリギリのとこで耐えた。

北村颯瀬きやむら はやせです。趣味は、サッカーです。やるのも観るのも好きです。1年間よろしくお願いします。」

パチパチと拍手が聞こえる。1つだけ異常に大きい拍手も聞こえるが、そこを気にしている場合ではなかった。なんと注目の的の北村くんが美穂の方を見ているのだ。北村くん絶対美穂に惚れたわ。あっ、美穂に微笑んだ!その微笑みを向けられた美穂の方をぱっと見ると微笑み返していた。

…えっ、嘘!まじか!あの鈍感に加え、恋愛に興味がない美穂が微笑み返しているだと…これは…祭りじゃ〜!!これからは、美穂から恋愛相談受けたり、頬を赤めたりする美穂が見られる!ここにきて新しい一面を見られるなんて、推しはとどまることを知らないなぁ。

よし、それでは私は全力で推しの恋を応援します。これは決定事項である。これからどうしようかな〜。まずは、北村くんに確実に惚れてもらうことだ。今は一目惚れという感じだ。これじゃあ、少し不安だよな…いっときの感情だと、すぐに冷めちゃうかもだし。…プレゼンだ!美穂のことプレゼンテーションしよう!そうすれば、北村くんがより美穂に惚れて、恋心が確実なものになる。そうだ!北村くんから告白させれば、この勝負は勝ち。美穂から告白されて断る人はいないと思うけど、より確率は高めたいし!うん。目標は決まったし、これから頑張るぞ!推しのために!!



俺、山内勝喜やまうち かつきは今とても頭を悩ませている。高校での新しい生活が始まって、早1ヶ月。みんな高校での生活に慣れ、だいたいのクラスでの一緒にいる人たちが決まって平穏な学校生活をしている。しかし、俺は冒頭で言ったように、大変頭を悩ませている。その種は俺の一緒にいる友人たちである。

俺と颯瀬は幼馴染で、仲がいい親友だ。だから、同じクラスになれたときは、ありとあらゆるものに感謝を捧げた。そして、これからの学校生活は安泰と思っていた。しかし、ここに女子2人が加わった。足立若菜と一色美穂だ。2人とも性格は良く、嫌悪感を抱いているわけではない。仲だって別にいい。だけど、問題は昼休みだ。いつもこの4人で昼飯を食べていて、普通に会話も弾む。

「なぁ、昨日のドラマ見た?」

「料理バトルの?」

「あっ、私も見てるよ。面白いよね。美味しそうだし。」

「分かる〜。でも、美穂の料理も美味しよね。」

「そうなのか?」

「えっ、いや。どうだろう…若菜はなんでも美味しって言うから…」

「颯瀬も料理するよな!」

「あぁ、まぁな。」

「颯瀬の料理もうまいぞ!」

「へー。なるほどね。」

こんな具合に、はじめはよくあるドラマの話だった。だけど、最後には親友を褒める話へと変わっている。いつでも最後には俺と足立が親友を褒めあって終わる。

どうしてそんなことになっているのかは、俺は気づいている。それは、高校生初日の自己紹介で起こった。颯瀬が一色に一目惚れをしていて、たぶん一色も颯瀬に惚れている。だからこんなことになっている。

そりゃ、惚れるよなぁ。颯瀬はイケメンだし、運動神経抜群だし。あいつの良いところは無限に出てくるが、どんどん語彙力がなくなってすごいしか言えなくなるからここで止めておく。当然、俺は颯瀬のことが推しといっても過言でない。親友のことが推しというのは変かもしれないが、仕方がない。あいつが魅力的すぎるのが悪い。それと俺と似ているやつは案外近くにもいた。それは足立だ。この特性は、足立が俺と颯瀬に一色と話しかけてきた時に分かった。自己紹介での出来事は足立も分かったのだろう。ここで足立と俺の勝負が始まった。足立は一色のいいところをたくさん言って颯瀬から告白させようとしている。だがしかし、俺は颯瀬のいいところも知ってもらいたいし、一色が颯瀬にベタ惚れになってほしい。だって、恋愛は惚れた方が負けっていうだろ。



あり得ないほど大変だった期末テストも終わり、夏休みが近づいてきた。親友及び推しの恋を応援する2人は気合いが入りまくっていた。

夏休みとは、いつもの学校生活では違う一面がみることができる特別な期間。そんな期間に手を抜くことはできない。

4人でいつもの帰り道を歩きながらも、若菜と勝喜はメラメラと気合いに満ち溢れていた。

今年の夏は、勝負の夏。この夏休みの間でさらに美穂と北村くんの距離を縮めないと…山内くんは、考えてることは同じだけど、ちょっと違いがあるんだよなぁ。ここで山内くんに先手を取られたらいけない。協力しつつも、こちらが優勢になるようにしないと。定番の夏祭りとかプールとかのイベントを入れつつ頑張りたい…ついでに、私も美穂の浴衣や楽しむ姿を見たい、いや絶対に見る。

一方、勝喜も若菜と似たような思考を巡らしていた。

絶対に今年の夏は油断できない。颯瀬と一色の距離を縮めつつ、颯瀬のいいところをより伝えなければ…足立のやつは、いい仕事をするんだけど、やっぱり俺とは作戦が違うよなぁ。ここで、手を抜くと足立に先をいかれてしまう。頑張らないと。まずは、定番のことをして…そういえば、文化祭の準備とかも夏休み中あるよな。ここを利用しない手はないだろう。考えることは沢山あるが、颯瀬との高校初の夏休みかー。楽しみすぎる…

そういったことを考えながら若菜と勝喜は、そろって難しい顔をしたり、ニヤけたりしていた。

そんな挙動不審の親友たちをみて、美穂と颯瀬はなんだか楽しそうだなぁとのほほんとした雰囲気で2人で会話をしていた。

「なんだか2人とも楽しそうね。」

「ん?そうだな。期末テストも終わったし。夏休みが楽しみなんだろうな。」

「ふふ、そうね。若菜はいつも夏休みとかになると一緒に遊んでくれるし。」

「ところでさぁ、俺たち付き合っているのいつ言う?」

「えっ?うーん。もうちょっと後でもいいじゃない?」

「なんで?」

「だって、あの2人遠慮して一緒に遊んでくれなくなりそう。遠くから見守ります!みたいな。」

「あー、確かに。ありえる。勝喜との高校生初の夏休みだしなぁ。一緒に楽しみたい。」

「でしょ!だから、まだ秘密。」

後方でこんなやり取りをしているなんて、知る由もなく、前方の2人は夏休みの作戦について頭を悩ませるのであった。

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