おやくそく
男は何もかもが嫌になり自殺を決意し実行した。
だが、自殺を何度試みても失敗する。
首吊りを行った時は1度目は紐が切れ2度目は枝が折れた。
飛び降りを試みた時は1度目は電線に引っかかり、2度目はビルの屋上から飛び降りた直後に、落下地点に産業廃棄物のゴミを満載したダンプカーが停車して足の骨を折るだけに終わる。
練炭自殺を試みた時は、崖下に止めた車のフロントガラスが落石によって破損して失敗。
農薬を飲もうと試みた時は、自殺防止の為につけられている臭いを嗅いだ途端に嘔吐して飲めなかった。
入水自殺を試みたら野生の海豚に助けられる。
海豚に助けられて海岸に辿り着き、砂浜に横たわった男の目に夜空に輝く満天の星が映った。
キラキラと輝く星を眺めていたら自殺する事が馬鹿らしくなり砂浜に横たわったまま流れ星に願う。
「自殺する気が無くなりました。
これからも、自殺を試みるような弱い心に戻らないようにしてください。
お願いします」
願いを唱えたあと立ち上がり海に背を向け街の方へ歩き出す。
と、その時。
ドッガァーン!
男が願いを唱えた流れ星が、否、隕石が砂浜に落下した音が海辺に響き渡る。
隕石は男に直撃してその身体を木端微塵に砕いた。
これが世にいう「おやくそく」と言うものである。