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旋律の中での再会

突然、流れる旋律に、ライブ会場に向かおうとしていた人達は、足を止めた。

そこには、バイオリンを片手に現れた青年が、少し、小高い花壇の端に立っていた。

「今日のライブは、もう、始まっているの?」

誰もが、今日のライブの一環だと思っていた。

「誰?」

バイオリンを弾き続ける青年は、目深に帽子を被り、マスクをしていて様子は、わからない。

「アシスタント?」

その正体を確かめようと、誰もが、スマホを向けるが、いまいち、よく、わからない。

美しい旋律だけが、流れていく。

「パパ・・・あれは?」

蒼の取り違えたバイオリンを探していた萌は、ライブ会場の前で、人だかりを見つけた。

「顔は、よく見えないけど」

榊は、人だかりの中央で、バイオリンを引く青年に目を止めた。

「あぁ・・・そうだ」

この姿を、何度も、遠い昔に見てきた。

憧れていたあの人。

不遇のバイオリニスト。

どうして、今まで、気が付かなかったのだろう。

彼は、あの四条の忘形見なのだろうか。

そして、先ほどまで、一緒にいた少年は。

「萌。どうして、僕は、今まで、気が付かなかったんだろう?」

榊は、自分が、何を言っているのか、わからなかった。

今まで、海は、自分のレストランで、バイオリンを弾いてた。

が、全く、気が付かなかった。

今、海が弾いているバイオリンの音色。

この音色が、榊の記憶を、呼び戻していた。

「このバイオリンこそが、蒼の取り違えたバイオリンで、この姿は・・・」

萌は、榊が、泣き出しそうになっている事に気がついた。

周りを忘れ、飛び出して行きそうだ。

「パパ?」

榊を引き止めようとした時、その音色は、止まった。

振り向くと、そのバイオリンを弾く青年の前に、一人の女性が現れていたのだ。

白杖を持ち、髪をアッシュグレイに染めた美しい女性だった。

「あれは・・・?」

澪だ。

最近は、見る事は無くなっていたけど、海の側にいた盲目の女性。

そう、あそこで、バイオリンを弾いていたのは、海なのだ。

海は、澪を見下ろしていた。

バイオリンを持つ手を下ろすと、小高い花壇から、下に降り立っていた。

「パパ。やっぱり、あれは、海なんだね」

そう言い、榊を見ようとしたが、一瞬、彼がどこにいるのか、わからなかった。

見失った?

「うぅ・・」

足元から、上がる声に気づく。

「パパ?」

足元にうずくまる榊。

「どうしたの?パパ?」

榊は、苦しそうに胸を押さえていた。


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