大事な友と別れ、僕は、一人、歩いて行く
突然、寧大に告げられた別れは、僕にとって、自由への幕開けだった。
借金を返すまで、と言う寧大の我儘に振り回され、最終的に寧大の独断で、僕らは、終わった。
「俺は、これからも歌って行く」
寧大は、歌で、身を立てて行くと約束した。
「まだ、残っているんだろう」
僕は、寧大の金遣いの荒さを指摘した。
「わかっているよ。これから、俺は、自分の歌いたい歌を作っていく。海みたいな、感傷的な詩は、書かないんだ」
「感傷的で、悪かったな」
寧大は、悪戯っぽく笑った。
「これからは、バイオリンで、やって行くんだろう?」
「そのつもり」
僕は、短く答えた。プロで、やって行くのは、バイオリン以外、考えられない。
歌を謳って居たのは、寧大に合わせただけなんだよ。
だって、寧大の弾くギターと、僕のバイオリンは、合わないだろう。
僕は、心の中で、呟いた。
そんな事、寧大には、言えない。
あれ・・・僕は、どうして、寧大と友達をやっていたんだろう。
全く、タイプの違う僕ら。
大学で、花子と3人で、絡み合っていた日が懐かしい。
「これから、どうするんだ?」
「榊さんと一緒に、やっていこうと思う」
間に、長女の萌さんが入ってくれていた。
「ミニコンサートから、始めようと思う」
「わかっていると、思うけど。海。YouTubeにあげろよ。いろんな曲にチャレンジできるだろう?」
「そうだね。街角に突入するんじゃなくて、チャレンジシリーずやってみるよ」
「もうさ・・・」
寧大は言った。
「逢わない方がいいよな。俺達。」
「そう思うのか?」
僕は、驚いた。
今まで、何度も喧嘩をして、シーイは、別行動で、やろうと言ったり、戻ったりしていた。
「う・・ん。俺の気持ちが揺れるから」
寧大は、笑った。
それ以上に、僕に、言える言葉は、あるのか。
寧大の気持ちは、わかるけど、僕は、それ以上ではない。
兄のようでもあったが、我儘な弟の様でもあった。
「じゃ・・・俺。収録があるから・・・榊さんによろしくな」
「ん・・・頑張れよ」
手を振ろうと、掌を向けると、寧大は、それも見ずに背中を向けた。
何度も、通ったスタジオの廊下。
背中に、ギターを背負って、肩を揺らしながら、歩いて行く。
「じゃあな・・・寧大」
もう、逢うことが、ないかもしれない
僕も、見送る事もせず、エレベーターのスイッチを押した。
これから、榊さんに逢う。
僕に、大事な話があるそうだ・・・。
僕は、自分の分身のような少年に逢う事になる。




