一番大事な君にできる事は、離れる事
意外だった。
絶対、秘密は、守ろうと言ったのは、寧大だったのに。
シーイの正体を、簡単にバラしたのは、彼だった。
「自分でも、わからない」
すぐに、連絡をしたのは、花子にだった。
「海を誰にも、渡したくない」
「だからって、なんて事するの?」
花子は、責めた。
好奇心に満ちた人の目に晒せれたら、誰より、繊細な海の心が壊れてしまうと思った。
「だって、あいつ。俺の手の届かない所に行きそうで・・」
寧大は、動揺していた。
「だからって・・・。」
花子は、言葉を失った。
が、寧大の次の言葉で、納得した。
「シーイとデビューしたら、俺の借金を返してくれるって、言ってくれた人がいて」
「え?寧大。それで、海を裏切るの?」
「そういう訳でないけど。それなら、海の側に居れると思って」
「あなたは、いつでも、自己本位なのね。周りの気持ちを考えていない」
「君も、そんな目で、俺を見ていたの?」
「そうね。いつも、あなたに振り回されてばかりで・・・ねぇ。寧大。それを、間接的に知ったら、海は、どう思う?今まで、兄弟の様に一緒に居た、あなたに裏切られたと知ったら」
「そうだよね」
「直接、逢って、伝えなさい」
「直接?」
台風が接近し、あちこちで、災害が起きている。
花子の目は、有無を言わせなかった。
「直接なのか?」
「寧大。あなたは、自分の気持ちの伝え方を間違えている」
確かに。自分は、気持ちの伝え方を間違えている。
海の事が、誰より、大事なのに。
目の前で、スタッフと打ち合わせをする海の横顔を見ていた。
「可能であれば・・」
突然、現れたオーナーの娘がピアニストと聞いて、話が盛り上がっていた。
海のバイオリンが聴きたいと、皆の顔が輝いている。
「最近、弾いてないんだ」
断りながらも、海の顔は嬉しそうだ。
こうやって、海は、人を惹きつける。
自分は、その輪に入れない。
いつもなら、ジェラシーを感じてしまうのだが、寧大は、黙って、萌とのやりとりを見ていた。
「私も、お願いしたいわ」
萌は、海の才能を父親である榊から、聞いていた。
「カフェに、あるピアノで、合わせてくれない?」
「それはいい!」
スタッフは、飛び跳ねた。
「バイオリンができるなんて・・・これは、盛り上がりますよ」
海は、きっと、この番組の中で、バイオリンの才能を披露し、また、多くの人を惹きつけるんだろうな。
寧大は、寂しく思った。
「海の事が大事なら、離れなさい」
花子が、そう言った。
「閉じ込めては、ダメよ。寧大。2人で、居る時のあなた達は、とても、素敵だった。私も、無理に間に入っていたの。でも、もう、私達、卒業よ」
「そう・・・か」
海の住む世界が違ったのか。
そろそろ、海を自由にしようか。




