盲目の経営者は、夢を見る
澪の仕事は、順調だった。
後輩達と始めたサロン。
ハンドを使ったマッサージは、澪も参加できて、元々、持っていたアロマのインストラクターの経験を活かす事ができた。
海の思いつきで、参加したモデルも、自分の予想以上に好評だった。
何より、女性誌にも取り上げられ、会社に障害者枠で、何名か、同じ視覚障害者の社員を迎える事ができた。
「こんな事は、考えた事なかった」
澪の周りは、華やいだ。
スッタフの声が、澪の視界の中で、様々な花となって開き、たくさんのブーケを見ている様だった。
その中で、やはり、海の事が気になっていた。
突然、歌の世界に入ると言って、いなくなった。
寧大の借金を返すまでの約束だと聞いた。
シーイの声色が変わっていくのを感じていた。
これは、間違っている。
彼のいる世界ではない。
自分に彼を救う力はない。
だけど、父親は、そこそこの財界人でもあり、サロンのお客にも、力のある客は、何人もいた。
何となく、切り出し、助けてもらう事はできないものか。
あの時、一瞬、寧大の存在を知った。
シーイを、喰ってしまう印象を受けた。
彼の側に置いては、置けない。
「社長・・・また、雑誌のインタビューが来ていますけど」
「う・・ん。ごめん、少し考えたい事あるんだけど」
「少し、待って貰いますか?」
新しい可能性が開けるたびに、次から次へと、新しい仕事が飛び込んで来る。
あれから、ノンストップで、毎日を過ごしている。
社長と呼ばれるまで、澪の会社は、成長してきていた。
「今行くと、伝えて」
シーイを元の世界に戻したい。
そう、考えを巡らせていた。
自分だって、悩む事はある。
海の様子が、いつもと違う。
自分の物にしたくて、シーイの正体をバラした。
動けなくする為に。
それがきっかけで、自分の借金の返済の為、巻き込んだ。
今度は、海の私生活を汚す事に加担する事になりそうだった。
「どうしようもない奴だね」
打ち明けた音夢に、罵られた。
「そもそも、借金は、あんたの賭け事が原因じゃない?シーイまで、巻き込むなんて」
寧大は、音夢との関係を清算できないでいた。
「あんたの大事な友達の代わりに、あたしと付き合っているんだもんね」
歳は、離れているが、音夢は、寧大を子供の様に扱った。
「あの人は、あなたの違うよ」
「どう言う意味?」
「この世界は、合わない。死んじゃうよ。気が付かないの?」
「死んじゃう?」
寧大は、ハッとした。
ここまで、自分は、不幸だと思ってきていた。自分の気持ち、理解してもらえない自分の思いだけをぶつけたきた。
「勝手な人」
音夢の言葉が突き刺さった。




