シーイと海、二人の間で
僕と寧大。
デビューが決まって、YouTubeで名前が広がっていただけあって、そこそこ、売れていった。
名前も、そのまま、僕と寧大で、Seei。
そのままだった。
特に新鮮な感じもしないで、僕は、言われるままに歌い、笑い。心の中に、歩おかり空いた穴を埋められずにいた
生活が変わったか?って。
それは、変わった。
実家と言うべきなのか、菓子屋は、お客が増えて忙しくなった。
「いつも、配達に来てくれていた子が、シーイだったのね」
言われる事が増えたらしい。
僕の兄、同然に育った義兄も、市役所の仕事に、特に大きな支障がないと言ってくれたのが、救いだった。
それでも、みんなに、迷惑をかけると思って、家を出る事にした。
愛犬との散歩も遠のいて、何の為に生きているのか、わからなくなっていった。
「海には、合わない」
花子が、言った。
「寧大は、派手な生き方が好き。歌を好きというより、注目を浴びて輝いていたい人。海は、違う。純粋さだけを求めていく。このままだと、海は、壊れる」
携帯の向こうで、花子が言う。
「寧大に全て、任せて、元の世界に戻ったら」
「元の世界?」
「海のバイオリンが好きだった。歌は、あなたの一部でしかない」
バイオリンを弾く。
その事すら、遠ざかっていた。
「顔色、悪いぞ」
寧大が、僕の顔を見て、言う。
「最近、食事も、まともにしていない気がする」
「毎日、遅いからな」
「トーク番組なんかは、寧大、一人で、出てくれない」
僕の喋りより、寧大の方が、周りを盛り上げられる。
「俺達、二人で、誘われているのに?」
「うん・・・体調悪くて、ごめんな」
歌のない番組は、寧大、一人で、十分だ。
誰もいない家に帰り、味気のない食事をする。
冷めた弁当を車の中で、食べる。
寧大は、光り輝きながら、自分の居場所を見つけていった。
一方、僕は。
歌詞を書く事もできなくなり、曲を作る事も出来なくなっていった。
疲弊しているのか。
澪は、どうしているのか。
澪に今の僕の精神状態を悟られるのが、怖くて、連絡しない日が続いていた。
彼女に僕の事で、心配をかけたくない。
そう思いながら、澪の噂を探っていた。
盲目のモデル。
澪の登場は、モデル界にとって、新鮮だった。
勿論、最初は、自分の会社のバックアップがあっての事だったが、次第に力をつけていった。
僕は、澪が眩しい。




