望まない栄誉
「この度は、本当に申し訳ありません」
寧大が、緊張しているのがわかった。
声が震えている。
目の前に座っていのが、あの音夢。
寧大が誘拐したとされる高校生で、シーイの声を持つ少女・・・の。
父親。
剣崎 努。
黒い噂のある人。
バックには、強面の人達が、控えているという。
なんて、人と繋がったんだい。君は。
寧大は、この音夢の父親に借金を肩代わりしてもらったと言う。
「さて、どうやって、返済できるって約束したのか、思い出せるかい?」
彼は、俳優でもあり、プロヂューサーでもある。
今まで、ガールズグループをデビューさせたと聞いている。
自分の娘には、同じ道を歩かせるのは、反対で、静かに暮らせたがったが、寧大のつまらないお遊びの為、家出をしていた。
当の本人は、強面の父親の隣で、アイスコーヒーの氷で、遊んでいた。
「寧大。いつも、言っていたでしょ。でっかい夢があるって。これはチャンスだと思うけど」
「借金を返してもらう手立てだよ。音夢。とんでもない男に関わって・・」
剣崎も、寧大の資質は、見抜いていたらしい。
「まぁ・・・君だけでは、お金を貸す価値は、なかったんだけどね」
「私の声が、似ているって、どんな人か、興味があったの」
音夢は、小動物にも似た黒目がちの目で、僕を見つめた。
「寧大が好きな訳ね・・」
ぼそっと溢した一言に、寧大の顔色が変わった。
「好きって・・・友達としてって事で」
「何も言ってないわよ」
音夢の方が一枚、上手らしい。
「いろいろ、君の歌は、聞かせてもらった。娘の勧めもあってね」
海を見つめる剣崎の目が怖かった。
「確かに、雰囲気はあるね。ちょっと、他の子とは、違うかな」
値踏みするように海を上から下まで、見下ろしていく。
「うちで、デビューしてみないか?ただし、借金もあるし、うちも、損する訳にはいかない。給料制。売り上げは、こちらで、返済が済むまで、全納。どう?」
「同意できなければ?」
海は、聞いた。
「君の借金ではないから、同意できないのは、仕方がない。寧大に働いてもらうだけだ」
音夢が、笑う。
「寧大。あったかい国で、電話かける仕事、できる?」
どんな仕事をさせられるか、わからない。
「海だけでなく、俺も一緒にデビューですよね」
勝手に寧大が、確認する。
「借金、帳消しで、デビューできるなんて、美味しい話だよ」
剣崎が、笑う。
海が、同意しなければ、寧大は、どこかに連れ攫われるかもしれない。
「少し、時間ください」
デビューは、不本意だ。
海が、目指すのは、そこではない。
歌ではない。
目指しているのは。




