表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/173

追いかけるのは、父の背中

「君を見ていると、昔、知り合った人を思い出してね」

高速道路を運転しながら、榊さんは言った。

オーケストラの審査員として、同席していたが、わざと、僕を落したと彼は、後から言った。

「集団の中に埋もれる気か?」

榊さんは、僕の個性を表現した方がいいと言った。

あまり、よく知らない人に、僕の事を話すのは、どうかと思ったが、YouTubeであったゴタゴタの事を話してみた。

「え?君だったの。」

シーイの事は、知っているようだった。

「君自身が、楽器のようだね」

少し、笑った。

僕に父親がいたら、それよか、少し年上なんだろうか。

彼は、よく笑う。

「食べる事が好きなんだけどね」

音楽の聴けるレストランを目指していると言う。

「もう一人、声を掛けている人がいるんだよ」

「バイオリニストですか?」

「いや・・・バイオリニストは、君だ。ピアニストを考えていてね」

「ピアニストなら、今までも、たくさん、いましたよね」

「う・・ん。僕が、求めているのは、枠にはまらないタイプ」

「はまらないタイプ?」

「普通の事を、普通に弾ける子は、いらないんだ。少し、型破りな子がいい。君みたいな」

「僕?ですか」

「歌も歌えるなら、ピアノに合わせて、歌ってもらうのも、いいな。」

榊さんは、発想が止まらないらしく、色々、夢を語って聞かせてくれた。

高速道路の途中のサービスエリアでも、話し出したら、止まらない。

「屋外のレストランだよ。外だからな。周りの自然に、音が吸収される。負けない自信あるか?」

「負けないって・・」

「楽しみだ」

そう言って、榊さんは、アイスコーヒーを一気に、流し込む。

「機会があったら、シーイとしての、声を聞かせてくれ」

「いえいえ、お恥ずかし限りです」

僕は、手を振った。

「ふとさ・・・」

榊さんは、僕の顔を見て、言葉を濁した。

「君を見ていると、誰かを思い出すんだよね」

「僕?」

「うんうん・・・いいんだ。気にしないでくれ。日本人だったか、怪しいんだけどね。滞在していた海外だから・・韓国人か、中国人か、覚えていないし」

「思い出せませんか?」

「どうだったかな・・・何回か、会って話しただけで、あまり、覚えていないんだ」

「そうですか」

僕に似ている人が、僕の家族の誰かとは、限らない。似ている人は、大勢いる。もしかしてと、思ったが、期待する事は、やめた。

「もう少しで、僕のレストランに着くよ」

そこは、関東から、近いキャンプ場だった。ペットブームに乗って、犬連れのお客をターゲットにした、キャンプ場やコテージがたくさんある。そこには、アウトドアブランドのショップもたくさんある。

榊さんの乗った車は、その後、すぐ、キャンプ場に入って行った。受付を済ませると、その隣のカフェで、僕らの到着を待っている人達がいた。

「こんにちは」

一際、目を引いたのは、サラサラの長い髪を背中に垂らした紅ドレスの女性だった。

キャンプ場に、そぐわない姿は、いかにも、ピアニストと言った感じだった。

「彼女が?」

「そうだよ。こんな所に、普通、ドレスで来るか?って、感じだけどね」

女性は、僕と榊さんを交互に見ると、少し、眉間に皺を寄せて言った。

「また、そんな意地悪を言う・・」

そして、最後に付け足した。

「パパは、意地悪よね」

榊さんの娘さんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ