華麗なる血の歪み
澪の叔母、つまり父親の妹、佐和子は、幾つもの事業を行う夫を持つ。元々、澪の父親g、会社を継いだ時に、妹と折半で、事業を分けたのだが、叔母の会社は、うまく、経営できていなかった。2人の子供は、海外におり、共に、大学生であった。子供の為に、会社をなんとかして、建て直したい所だろうが、うまく、行っていなかったようだ。
視覚障害者となった、澪には、サポートする者が必要である。会社を自分の妹に渡したくなかった父親、善次郎は、高岡を片腕として、育て上げ、そのまま、婿として迎え入れる考えだった。
「生理的に無理」
母親の鞠子に訴える。
「素敵な人」
企画室や広報部の女子は、口を揃えて言うが、視覚以外、鋭い感覚を持つ澪には、受け入れ難い異性になっていた。
「昔、一目見た時に、素敵な人って言ったじゃない?」
それは、新入社員で、入ってきたばかりの高岡を澪が、見た時の話だった。まだ、高校生の澪から、見た大人の高岡は、周りの学生より、はるかに素敵な人に見えた。
「私も、世間知らずだったから」
素敵と思った自分を恥じた。
自分の記憶の中にいるのは、ただ、一人。
その彼の声にも似た人が現れてしまった。
シーイ?
その姿は、もしかしたら、彼とは、全く違うかもしれない。
でも、彼の声とシーイの声の色が、自分の中で、重なって。
「どんな顔で、どんな瞳で、自分を見つめるのか、知りたい」
そう思っている。
高岡と結婚するなんて、ありえない。
「なんとか、断れないかな?」
澪は母親に言った。
「会社を義妹に渡すって事?」
母親の声が怒っていた。
「私は、会社を継ぐなんて、できないよ」
「それはわかっているけど・・」
結婚の話で、家族の中が、ギクシャクしてしまう。
目が見えないからこそ、寄り添いたい人がいるのだ。
彼が生きていたら、違ったのだろうか。
今、自分の側にいるのは、シーイでも、彼でもない。
高岡だ。
「疲れていない?」
高岡は、馴れ馴れしく、澪の肩に手を置いた。
「この後の事を、いろいろみんなで、考えようと思って、お酒の席を設けたんだ」
「私、あんまり、飲まないわよ」
そう答える澪の隣で、アポロンは、軽く唸る。
「なんか、僕、嫌われている?」
「そんな事ないと思いますけど」
澪は、笑って、否定したが、
「動物は、わかるんですね」
と、一言、嫌味を言ってみた。
「皆を労うなら、いいと思いますけど」
自分は、あくまで、参加しない。
「じゃ・・・待っているよ」
誤解した高岡は、上機嫌で、アポロンの頭を撫でると、足早に去っていった。
「みんなは、参加してもね」
自分は、早めに戻ろう。でも、誰が、泊まりでなんて、決めたのかしら。
納得できないまま、自分の部屋に戻るのだった。




