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敵わない相手

寧大の提案は、結局、通らなかった。

澪が仕切るサロンなのだから、彼女の考えが通るのが、当たり前で。

澪は、シーイ。海の声を使いたかった。

だから、丁寧に断りの連絡を入れていた。

まさか、寧大が、後に釈放されるとはいえ、捕まってしまうとは。

「今回は、どうしてもシーイの声を使いたいから」

似ているだけでは、ダメで。

最初の企画通り、シーイの声でいく。

「それで、いいんだよね」

高岡が、何度も、確認する。

「澪ちゃんが、決めたシーイって子の声が聞きたいわ」

父の妹の叔母は、いつも、横から口を挟む。

「兄さんが、澪ちゃんの任せたサロンですもの。澪ちゃんが決めなければね」

と言いながら、澪のサロンを手に入れようと虎視眈々と居る。

「叔母様の姪さんですもの大丈夫です」

「目が見えないのに、負担かと思って」

さりげなく庇う、高岡を蹴散らす叔母。

「こんな素敵な高岡くんがいるんだから、サロンは、誰かに任せて、結婚しちゃったら?」

「叔母様、澪は、まだ、やりたい事があるんです」

高岡に呼び捨てにされ、ムッとする澪。

「高岡君、シーイと契約したいから、どこに連絡すればいいのか、確認して」

高岡も、叔母も、2人共、面倒である。

どちらかと言うと、まだ、マシな方の、高岡を動かす。

「澪ちゃん。大変な時は、いつでも、私に言ってね」

そう言う叔母が、一番、怪しい。

澪が居なければ、この会社を相続できるのは、この叔母である。

「その時には、お願いします」

澪は、適当に返事をした。

あの日・・・。

本当だったら、行く予定でなかったあの道。

叔母に頼まれた指輪を取りに行って、その店の前で、事故にあった。

「証拠があるのか?」

父親は、怒った。

仮にも、自分の妹である。

「私が、指輪を撮りに行かせたばかりに」

あの時、叔母は、自分を責めて泣いた。

澪は、右腕を怪我しただけだった。

そっと、右腕に触れる。

指先には、彼の手が触れる。

坂道を止まりきれなかった大型車が飛び込んできた。

「あの日から・・・」

時間が止まっている。

彼が、後ろから、自分を抱きしめる。

「澪・・・」

今でも、声が聞こえる。

目が耳が唇が、彼を覚えている。

「凪・・・」

忘れないよ。そう約束した。

けど・・・。

その思いは、シーイの声を聞いた時に、消え去っていった。

今までの、記憶を変えてしまうような優しい風が、澪の視界を奪っていった。

鮮やかな若葉色が、流れていく。

「シーイと契約して、このサロンの基盤にするわ」

澪は、決心した。

シーイと作り上げる自分の世界。

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