親友への疑惑
寧大の連絡が突然、途絶えた。
それは、澪からの連絡で知った。
「仕事のお断りの連絡を入れてたんだけど、何の返事もないの」
お断りの返事でも、何かしら応答は、ある筈だ。
「僕との連絡もない」
シーイの件で、行き違いがあり、関係が拗れたのかと思って、あえて連絡はしなかった。
その間、勿論、YouTubeで、彼と共演する事はなかった。
彼のギターとのセットで、売れていると思ったから。
「シーイの件で、トラブルに巻き込まれたかも」
澪が言う。
「僕の知らないところで、大きくなっているんだな」
少し、寂しく思う。
シーイは、僕だ。だけど、もう、シーイというブランドが一人歩きしている。
「どうして、そう思うの?」
「うちの企画室の高岡が、言っていたの。シーイを狙っている企業が多いって。その窓口が、寧大なんだけど。彼、評判悪いわよ」
「評判?」
僕の胸が、チクリとした。
「知らない?」
澪は、言うべきか悩んでいる様だった。
「言ってくれないか?彼の事は、信じているから」
「噂なのよ」
澪は、前置きした。
「借金を抱えているって・・・・聞いてて。」
初めて聞く話だった。
いつも、お洒落で、情報に敏感で。僕を先導していた彼。
ギターの腕もいいし、才能あふれている彼が、どうしてなのか、わからなかった。
菓子屋の養子で、やっと、大学を出してもらった僕から見たら、何もかも、恵まれていた筈なのに。
「お金の為だったのかも」
「だとしても・・・」
結果、シーイの人気が出てしまった事で、欲が出てしまっただけで、最初は、そんな考えは、なかった筈だ。
「海・・・」
澪は、僕の名前を呼ぶ。
「才能やお金のある人を、羨む人はいるのよ。それを前に、誤った判断をする人は、たくさんいる」
寧大が、そんな奴な訳ない。
「耳に入れない方が良かった見たいね」
意気消沈した声だった。
「とにかく、寧大に連絡をとってみるよ」
僕は、携帯を切った。
確かに、ラインも何も、通じない。
「海。少し、店も手伝えよ」
父親に、階下から怒鳴られ、しばらく、店の手伝いをする事にした。
「全く、音楽で、食べて行こうとする奴を俺は、信用しないからな」
父親役の僕の母の兄は、本当の僕の父親を憎んでいる様だった。
「しっかり、働くんだ。海」
いつもの口癖だ。
大事な妹を取られ、捨てられた恨みが、僕に向く。
寧大の事が、気になりながら、ご機嫌伺いの様に、夜遅くまで、働き、連絡がついたのは、翌日の朝だった。
「やっと・・・帰って来れた」
憔悴し切った寧大の声が、携帯の向こうから聞こえた。




