シンデレラの靴探し
シーイの偽物が出る。
寧大が、素っ頓狂な声をあげた。
YouTubeに、上げられたのは、僕の偽物。
女装しているから、素顔は、わからず、偽物とは言えない。
そのシーイが、楽曲を提供すると言った騒ぎになった。
「えぇ!ちょっと待ってよ」
寧大は、怒っていた。
歌詞は、僕の作った歌詞。曲。もちろん、編曲も、寧大。
つまり、勝手に他人に、僕らの作った曲を、くれると言うことになる。
「ぬぬぬぬ・・・」
寧大は、真っ赤になって怒っていた。いたずらだ。なりすまし。
「まぁまぁ。」
僕にとっては、遊びだけど、寧大にとっては、死活問題だ。
「こうなったらさ」
寧大は、とんでもない事を言う。
「バイオリンは、誰が、弾いたのかは、わかりにくいけど、歌声なら、すぐ、わかるだろう?」
顔出しにしろと言う事だ。
「いやいやいや・・・・」
僕は、入団テストが迫っている。どちらを取るかって、究極の選択だよ。
僕が、歌で食べていける確率は、限りなく低い。
「だって、悔しくないか?シーイの歌が盗まれるんだ」
「それは、歌詞で。シーイの声ではない」
本当に、僕の声が聞きたい人は、信じる訳ない。
「自信があるんだな」
てな訳はない。他の事で、頭がいっぱいなだけ。
「歌なら、また、作ればいいさ」
僕は、寧大が、カンカンになっているので、その日のアップは、延期する事にした。
歌なら、また、作れる。
新しい感情が、僕の言葉を繋げていく。
「澪。話がある」
澪が、父親に呼び出されたのは、夕方。YouTubeで、シーイの偽物の突撃ライブを聞いている時だった。
「音が違う」
視覚障害者は、耳が、常人より以上に発達している。いつも、聞いているシーイの演奏が、全く、異なっている事に気がついていた。
「弾き方を変えた?」
音の色が、全く違う。シーイのバイオリンの音色にも、色彩を感じていたのだが、今回のは、全く、無色だった。
「偽者の話がありますが・・・」
YouTubeの中で、シーイと名乗る人物が言っている。
「僕らは、全く、違いますんで」
って。こちらが、偽者じゃん。
澪は、気分が悪くなった。
あの声を生で、聞いてみたい。
気落ちしたまま、父親の前に立った。
「澪は、今年で、幾つになる?」
「私の年?」
父親が、こんな話をするのは、決まって結婚の話だ。
「あんな不幸な事があったから、お前には、幸せになってほしい。が、この会社を他の人間に任せたくはないんだ。わかってくれるか?」
だから、何ですか?父親の言いたい事は、わかっていた。
「私の片腕の高岡君との結婚を考えてほしい」
言うと思った。
澪は、大袈裟にため息をついた。
「彼を忘れる事が、無理なのは、お父さん。わかっているでしょう?」
澪が、嫌がるのは、父親にもわかっていた。だが、
「いい加減、彼を忘れて、幸せになってほしい」
「高岡さんとは、幸せになれない」
「だったら、誰となら、幸せになれるんだ?」
「それは・・・」
彼が生き返らない限り、それは、無理。
彼以上の人は、存在しない。
「一緒にいれば、城も湧いてくる。高岡君なら、いいと思う」
「それは、無理」
澪は、アポロンに駆け寄ると、夜の公園へと飛び出して行った。




