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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
空中戦
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空中戦 4

1958年 ドイツ第三帝国 バイエルン州 ミュンヘン


 ミュウンヘンの中央にあるマクシミリアヌウムについたヴィルヘルム・クーベ一行は、パウル・ギースラーと面会するために向かっていた。

 「しかし、君の考えているプランについて、本当に内務大臣殿が受け入れてくれると思うかね」

 用意された車の中にてクーベが全国指導員に尋ねた。

 彼女は、マウンツハイムにて作成した報告資料を取り出すと、クーベに見せながら説明した。

 「我が国において、愛煙家の人口は4割を超えるほどおります。そのうち、軍や準軍事組織に所属する者たちは、35%ほどになります。この数は、既存の愛煙家のみであり、潜在的数字になるとさらに多くなるものになるでしょう」

 全国指導員は、しっかりとした資料を基に作成したのであろう。彼女が作成したこれは、クーベの目を引くものであった。

 「君が進めるプランの説得力は分かった。しかし、長年に渡って進められていたプロジェクトを、一閣僚である彼が受け入れるだろうか」

 「失礼を承知で申し上げますが、総統閣下が置いて行った負の遺産は、これにあると思います。総統命令と呼ばれる強権によって、主要閣僚かこまごました中間管理職程度にしかならない状況となってしまっていました。しかし、閣下なき今では、これを変えようとする野心家は、絶対いると思っており。その一人が、ギースラー内務大臣だと思っています」

 彼女の政治を見る目が、確かなものであることを確認したクーベは、安堵した表情を浮かべていた。

 「ところでクーベ閣下。ギースラー内務大臣のもとには、どのような人物が集まっているのですか?」

 全国指導員の横に座っている大尉が、クーベに問うてくる。

 「現在、ギースラーのもとに集まっているのは、私を含めた反ヒムラー派の親衛隊員。先の大戦で『戦車伯爵』の異名をとったオットー・カリウス中将と、彼の指導を受けた者たち。後は、政治家の連中だが、内務大臣以上の人物はいないよ」

 クーベの口からカリウスの名前が挙がった途端に、大尉の顔が渋くなっていた。

 「どうしたの大尉?車酔い」

 「いや。問題ないよ」

 しばらくすると、クーベ達が乗る車両がマクシミリアヌウムに到着した。

 その門前には、軍事担当であるカリウスがクーベたちの到着を待っていた。

 「お待ちしておりましたよ。ヴィルヘルム親衛隊大将閣下」

 「おやおや。戦車伯爵様自らお出迎えとは、うれしい限りですよ」

 カリウスの招きを受けたクーベらは、しっかりとした敬礼を行って見せた。

 「本日は、ギースラー内務大臣にお話ししたいことがありましたので。あぁ、後ろにいるのはチェコにて身を置いている者たちです」

 「お久しぶりですカリウス閣下。キエフ攻防戦依頼ですね」

 クーベの後ろにいた大尉が、不安そうなでカリウスに声をかける。

 カリウスは、しばらく声をかけた人物の顔を見つめると、何かを思い出したかのように近づいていく。

 「君は、『地獄の冬』で私の指揮下にいた生意気な中隊長か!」

 「おや。軍事担当菅殿は、彼のことを知っていらしたのですか」

 クーベがカリウスに聞くと、彼は少し笑みを浮かべてから答える。

 「この男は、たった一中隊で数倍の共産主義者を抑えてくれたんだが、その際にな・・・・」

 「何があったのですか?」

くすくす笑うカリウスに全国指導員が問うてくる。

 「この男は、戦場にあった水路にハマってしまい、一日凍える羽目になったんだ。あの時が、まだ暑い時期でよかったな」

 「・・・・」

 懐かしい事を思い出したカリウスは、思い出し笑いをしばらくしていたが、言われていた本人は、何も言い返せないままであった。

 「すまん、すまん。だが、あの時の活躍は、私も知っているよ。かなりの勇猛さを示していたから、報告書にも名前と部隊名を記したくらいだからな」 

 「我ながら、お恥ずかしい限りです」

 「すまない、クーベ大将殿。ギースラー内務大臣に御用でしたな」

 カリウスは、三人を外にまたしてから、中に入って報告を上げてくる。

 しばらくすると、カリウスが戻ってきて中に入るように促してくれた事で、クーベたち一行が奥にある執務室に入っていく。

 「わしに何か伝えたいことがあるそうだが、親衛隊大将?一体どのような要件かな」

 ギースラーは、入ってきたクーベへと単刀直入に問うてくる。

 「はい。今後のドイツを左右する話であります」

 「ドイツを左右する話?」

 ギースラーがそう言って、クーベの後ろにいる二人を目にやる。

 「後ろにいる二人は、それに関わる者達なのかね?」

 「ええ。彼らは、その者の下についている者たちであります」

 ギースラーは、クーベが紹介した二人を見てから、しばらく考え込んでいる。

 「そちらの彼女は、見たところ全国指導員のようだが、儂に紹介したいいう者たちとは、この者たちのことかね?」

 「ええ。彼女は、とある要人の元で働いているものでしてね。彼女は、大臣のお力になるマニュフェストを持っております。これを手土産としてお力を貸していただければと思っておりまして」

 クーベの力の入った申し入れにギースラーは、少し考えてきた後に全国指導員の方に近づいてくる。

 「君が持っているマニュフェストについて、是非とも聞きたい。教えてくれないか?」

 「よろしいですけれど。その前に、一つお願いしていただきたいことがございまする」

 「君たちの主への協力であろう。クーベ親衛大将が推すものであれば、ヒムラーが関わっていないか、嫌っているものだろう。それならば、今の段階で支持するに決まっているだろう」

 ギースラーは、そう言って自身の机を力いっぱいたたく。

 「ヒムラーなんぞに、今後のドイツを任せるわけにはいかん。それを止めるためなら、悪魔とでも手を組もうではないか!」

 「でしたら、わが主であるルセフ・ヒトラーに協力してくれるんですね」

 全国指導員が、前に出てギースラーに握手を求めると、彼の顔が少し驚いた顔をする。

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